パラダイスを求めて山形へ


釣りの遠征に拍車がかかって、今回は山形です。



思い切って山形へ行くことにした。過去の記憶では、この時期の山形は素晴らしい渓流
釣り環境になっているはずだ。数ある渓流のなかで選んだのは最上川水系のある渓流だ
た。2時半に起き、3時に家を出発。車は東北道を北へ北へとひた走る。6時間かかっ
て到着したその渓流入り口には無情にも宮城ナンバーの先行車が停まっていた。車を確
認すると、見るからに釣りと分かる。世の中甘くないのである。さて、どうするか・・

本命の川が先行者で入れず、転進した下流の風景。 フライで釣ったヤマメ。これは2尾目。

一旦下流に入り時間を過ごしてから入渓しようと決め、車を下流に走らせる。この川の
下流も釣りポイントとして一級と言われているのだが、まだ一度も入った事が無かった
のだ。車を川の傍らに停め、身支度をして入渓する。幅広い川なのでフライロッドをセ
ットした。芦原の中を川が流れているのでキャスティングがままならない。所々開けた
場所でロッドを振る事しかできない。そんな中で22センチの丸々したヤマメを頭に3
尾のヤマメを釣ることが出来た。車に戻って昼の休憩をし、お握りを食べ、先ほどの本
命渓流の入り口に再度向かった。                        

ところが、先ほどの車にプラスしてなんと5台の車が停まっていた。山菜取りの車なの
かもしれないが、この車の人達も川を歩くわけで・・・この川での釣りはあきらめるし
か無かった。現実は甘くないのだ。さて、どうするか・・             

途中で入った小渓流。魚の気配は無かった。 このバックウオーターの終点まで歩く。暑かった。

通行止めの道があり、この先に別の渓流があるのだが、釣れる場所に着くまで1時間は
歩かなければならない。さすがにこの道には山菜取りの車も停まっていないので、思い
切って歩くことにした。30分歩いた所に小渓流があったので入ってみたが、魚の気配
は無かった。徐々に足取りが重くなるが、とにかく歩くしかない。やっと渓流の入り口
に着いたときには汗びっしょりになっていた。                  

パラダイスの始まりはこのイワナだった。 次々とイワナが釣れた。

ここは細い川なのでテンカラを振る。淵にライズを発見して慎重にキャストしたが、一
振りで毛鉤を見切られ、ライズは無くなってしまった。でも、魚がいる事が分かってひ
と安心して上流へと向かった。緩やかな瀬尻でバシャっと反応があり、15センチ程の
イワナが釣れた。そして、ここからがパラダイスだった。渕という渕で必ずアタックが
あり、ちょっと水量の多い瀬でも必ず魚が出た。すべてイワナで、いったい何匹釣った
だろうか・・釣っては放し、釣っては放しを繰り返した。こんな場所があったのだ。 

上に木が被さるがテンカラは十分に振れる。 所々に雪渓が顔を見せ始めた。

ところが、22センチを頭に15尾のイワナを釣ったところで、パラダイスは唐突に終
わりを告げた。渓流を覆う巨大な雪渓が現れたのだ。もちろん高巻きして上流に向かっ
たが、水温が下がった為か、当たりは無くなった。ほんの1キロ程のパラダイスだった
事になる。充分満足して登山道を歩いていると、巨大な桂やミズナラやサワグルミが林
立した空間に気づいた。川では魚しか頭に無いのだが、周辺の自然がこれほど豊かだと
気づくのも魚が釣れた故かもしれない。とても気分の良い山歩きだった。      

こんなサイズのイワナが釣れ続ける。 パラダイスはこの雪渓までだった。

1時間歩いて車に戻ったら何と後輪の一つがパンクしてペチャンコになっていた。さす
がに慌てて荷台の荷物を下ろし、スペアタイヤに取り替えて、近くのGSに向かった。そ
れにしても暗くなる前で良かった。GSで調べてもらったら、鋭い木の枝が刺さってパン
クしていた。傷口が大きく、修理材では補修出来ず、新しいタイヤを買う羽目になって
しまった。いやはや、林道で枯れ枝を踏むことは良くある事だが、まさか木の枝でパン
クするとは思わなかった。予定よりもだいぶ遅れて今夜の宿泊地「瀬見温泉」への到着
になってしまったが、宿では元気なおばちゃんが陽気に出迎えてくれた。      

ガソリンスタンドでタイヤを交換する。 宿の夕食。お腹一杯ですぐに就寝。

ゆったりと温泉に浸かり、歩き疲れた足を揉む。思わぬアクシデント続きで、忙しい1
日だったが充実した釣りが出来たので満足だ。夕食は部屋でビールを飲みながら食べた
。食べきれないほど沢山の料理が出された。明日の朝は早く出発したいので、朝食をお
握りにしてもらい、会計は早々に済ませた。食事が済んだら早々に寝てしまった。  

翌日、朝4時に起床。今日入る予定の川は有名な川なので、朝一番に入らないと狙った
ポイントに入渓出来ない。急いで身支度をしてお握りの袋をつかんで車に乗り込む。ま
だ薄暗いが、川に着く頃には明るくなっているはずだ。途中のコンビニで釣り券を買い
、川の上流に車を走らせる。昨日一番乗りを逃して悔しい思いをしたので、今日は何と
しても狙った川に入りたかったのだ。                      

入り口の橋には車が停まっていなかった。良かった・・一番のりだ。これで午前中の釣
り場は独占できる。温かい缶コーヒーを飲み、橋の上から川の流れを眺める。やっとこ
の川に来ることが出来た。遠い昔、この橋の下でテントを張ってキャンプした事があっ
た。シトシト雨が降る日で、夜半に増水した水がテントを洗い、魚篭を流された事があ
った。その時は餌釣りだったのだが、二日間入れ食い状態で、本当に何匹釣ったか数え
られなかった。今はそんなに釣れるはずはないのだが、この川の名前を聞く度にその事
を思い出していた。                              

ゆっくり身支度をして入渓する。広い川なのでフライロッドをセットした。河原が広い
のでキャスティングは楽だ。水量が多く、速い流れに、毛鉤を浮かばせるが魚の反応は
無い。まあ、早朝にドライというのも無理がありそうで、キャストの練習をしているよ
うな気分だった。川が浅くなり、瀬が続くところで、魚が追ってきた。25センチオー
バーのヤマメだった。毛鉤を追ってきたが直前でUターン・・見切られたか?心臓がド
キドキしている。あんなヤマメを釣ってみたいものだ。              

テンカラに変えた途端、ヤマメが釣れた。 堂々とした川。大きなヤマメが棲む川だ。

その後毛鉤にアタックがあるのだが、乗らない状態が4回続いた。どうやら速い流れで
毛鉤にドラグがかかり、魚が銜え損ねているようなのだ。思わず「ヘタクソ〜!」と叫
ぶが、ヘタクソなのはこちらなので、仕方がない。そこで、思い切ってテンカラに変更
した。追い風に乗せてレベルラインを振っていたらすぐにヤマメが釣れた。銀ピカの白
いヤマメだ。やはりテンカラの方が合わせやすい。その後次々にヤマメを釣り、夢中に
なって遡行した。途中滑って沈をしたが、デジカメが無事だったので良かった。予定の
堰堤までに20センチを頭に5尾のヤマメを釣ることが出来た。楽しかった。    

銀ピカのヤマメ。この川のヤマメはじつにきれいだ。 宿で作ってもらった朝ご飯。釣れた後なので美味しい。


なかなか良いヤマメが釣れました。 堰堤前で最後のポーズ。

車に戻ってタイヤを確認する。良かったパンクしていない。これで家まで帰ることが出
来る。今夜はワールドカップ最終予選の北朝鮮戦があるので、6時までには家に帰らな
ければならないのだ。二日間の釣りは型に不満はあるものの充実したものだった。山形
の豊かさを実感して6時間の帰路についた。