西木の川は渇水していた


年に一度の西木での釣り。今回は渇水でどうなることかと思ったが…


 毎年、森林ボランティアで秋田県の仙北市に行く。作業の前日に釣りをするのが恒例に
なっていて、年に一度の楽しみになっている。木曜日の朝家を出て、田沢湖を通り過ぎ、
西木には昼過ぎに着いた。例年より三時間ほど遅い到着だ。             
 途中の田沢湖も河川もどこも渇水がひどい。この状態では釣れないな…などと思いなが
ら、いつもの川に入る。車を停めると農作業中のおばあちゃんが話しかけてきた。近所の
民宿のおばあちゃんで、ここで会うといつもしばらく話し込む。明日の交流会のことや、
紙風船祭の事をいろいろ話す。聞けば、ここ一ヶ月くらいまともに雨が降っていないそう
だ。こりゃ、ダメだな…と思いながらも、せっかく来たのだから竿だけでも出そうと釣り
支度をする。                                  
 気温はもう三十度近い暑さで、カンカン照り。釣れない条件が揃いすぎてる。おばあち
ゃんの「がんばってな」の声に手を振って、入渓する。               

行くときに必ず通る田沢湖。その素晴らしい景色が秋田の入り口。 8時間かけ、いつもの川に到着し、いつもの木の下に車を停める。

 思った以上に水は少なかった。いつもの三分の一か四分の一くらいの水量だ。河原は歩
きやすいが流れが心細いくらいで、これでは釣れないだろうな…と弱気になる。    
 いつもは水量が多くて釣りにならない大きな淵が、なんと手頃な釣り場になっている。
定位している岩魚が今日は何故か逃げない。毛鉤を落とすと下からふわ〜っと上がって来
てパクリとくわえた。竿を合わさるとバシャバシャと大きな手応え。なんと、この淵で初
めて岩魚が釣れた。                               
 気を良くして、木の影から淵の中央に毛鉤を振る。何度目かに突然下から大きな影が矢
のように突進して派手な水しぶきを上げた。これも手応え充分。淵を何度か突進するのを
いなして抜き上げる。良型の岩魚だった。                     

水量が少ないためか、いつもは釣れない淵で岩魚が釣れた。 なぜか同じ場所で岩魚が釣れた。


普段は満々と水をたたえた淵で手も足も出ない場所なのだか。 三匹目。こんないい型の岩魚が飛び上がってきた。

 俄然気分を良くして上流に向かうが、川が荒れている。昨年の豪雨は記憶に新しいとこ
ろだ。仙北市では土石流に巻き込まれて何人もの人が亡くなった。当然、川にはその痕跡
が生々しい。両岸から杉やヒノキが川に倒れ込み、歩くのも難儀な状態。それでも釣り師
は上流を目指す。ポイントポイントで竿を振るがなかなか釣れない。         
 何ということのない小さな淵で岩魚が出た。きれいな岩魚だ。日影の淵でまた岩魚が釣
れた。不思議な事にここまで岩魚ばかりだ。この川はどちらかというとヤマメの川なのだ
が、今日は岩魚しか出ていない。川が荒れたことと関係があるのだろうか。      

とにかく川が荒れていた。両岸がえぐれて岩がゴロゴロ。 それでも岩魚が釣れる。魚はけなげに生きている。

 深い緑が強い日射しをさえぎって周辺は涼しい。快適な釣りだ。日射しある場所では、
まったく魚の気配はない。ポイントが絞られているので効率的な釣りになる。大きな桂の
木が並んだポイント。ここはいつもならヤマメが確実に釣れるポイントなのだが、今回は
ただの平瀬になっていて、魚の気配がなかった。水量の違いで川はまったく違う川になる
ことを改めて思い出した。                            
 それでも小さなポイントで岩魚が釣れるのだから、まあ良しとする。        

両岸から木が倒れかかり、歩くのにも難儀な川。 それでも岩魚が釣れる。ありがたいこと。


桂の木が並んだポイント。ここはヤマメが釣れる場所だったのだが。 なぜか岩魚が釣れてきた。

 桂の巨木が見えて来た。ここ一帯がもっとも魚の気配が濃い場所なので、慎重に進む。
ポイントが小さいので毛鉤の振り込みも慎重に行う。                
 狙ったポイントで岩魚が釣れた。そして、その上の淵。ここは絶対出る…、と毛鉤の水
気を切り、ドライシェイクをたっぷりつけて、慎重に毛鉤を流れに乗せる。      
 横から黒い影が飛び出して毛鉤にアタック。合わせると水中に竿先を引き込む。   
「デカイ!」と腰を落とすが、水量が少ないので、抵抗もさほどではなく、岩魚はすぐに
寄ってきた。本日一番の岩魚が釣れた。この一匹で満足。              
 狙って釣るのがだいご味なので、こういう釣りが出来れば大満足だ。        

この小さな淵は絶対に出るポイント。慎重に攻める。 今日一番の岩魚が釣れた、狙って釣るのは嬉しい。

 砂防堰堤が見えてきた。いつもなら中間地点なのだが、今日は入渓時間が遅かったのと
宿舎で飲み会が六時から設定されていたので、どうしようかと考えた。        
 堰堤の下の溜まりは魚の気配がない。ふと、砂地を見たら何かの足跡がある。鹿の足跡
じゃないな…ふいに「熊?」と思いついたら、もう上流に向かう気持ちは消えた。   
 そのまま急斜面を登って脱渓し、いつもの林道に出た。              

桂の巨木が見えて来れば、中間地点の砂防堰堤は近い。 熊の足跡を見てしまい、そのまま脱渓した。外は暑いこと。

 林を出たら、暑い暑い。大汗をかいて車に戻る。途中に、いつも犬が吠える家があった
のだが、今回なくなっていた。吠える犬に手を振りながら歩いていた事を思い出すと、少
しさみしい。いろいろな事情があるのだろうが、家がなくなるのはさみしい。     
 車に戻ると、おばあちゃんの姿はなかった。今日の畑仕事は無事に終わったようだ。 

とりあえず満足の釣りが出来たので自分をパチリ。 さて、靴を洗って、宿舎に向かおう。




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