三面川支流の釣り


昨年みんなと行った川、今年は二人で行って大物を・・と期待は膨らむ。


9月4日(金)夜11時、野村さんが迎えにきた車で新潟に向かう。昨年みんなで釣りに
行った三面川支流の甘木沢へ釣りに行くためだ。天気は上々、快適に走る車の中では、昨
年長南さんが釣った尺岩魚の話で盛り上がっていた。車は順調に走り、3時には村上に着
いて道の駅朝日で仮眠をとる。                          
朝5時半、顔を洗って歯をみがき、眠気をとばして甘木沢へと向かう。二人の記憶を頼り
に車は奥へ奥へと走り、何とか覚えのある道に入り一安心する。さあ、あとは一番奥まで
行って魚を釣るだけだ。しかし、何となく気になる薄い轍の跡。先行者がいるかいないか
で天国と地獄の差がある。昔の集落跡を過ぎて、最後の橋を渡った時だった。     

朝のやまなみが霧でかすむ幻想的な風景。 林道の終点に「塩の道」の看板が。

なんと悪い予感が当たった。そこには一台の軽が止まっていた。ナンバーは地元の車。 
「さあ、どうする」「とにかく一番奥まで行ってみようよ」とさらに車を走らせる。草が
わだちを隠すような深い道を慎重に走る。塩の道の看板前、車はない。さあ、着替えよう
、先の車は山仕事かもしねないし・・などと希望を口にしながら着替えて、勇んでヒルの
いる道を歩く。堰堤の上まで急がないとヒルに食いつかれるぞ、などと軽口を叩きながら
歩いていたら、何と道の奥に車が一台止まっていた。息を止められたような衝撃に落ち込
む。熊谷ナンバーの明らかに釣りとわかる仕様の車。「これはダメだ・・」「どう考えて
も先行者が3人から4人・・」しばらく呆然としていたがヒルのいる場所でのんびりもし
ていられない。「帰ろうか・・」とつぶやいて道を戻る。足取りは重い。「なんてこった
い、一年ぶりに満を持して来たのに・・」「ねえ・・」               

着替えをした時点では期待に胸がふくらんでいた。 下流に降って釣り始めた。

あろうことか二人ともBプランを考えていなかった。別の知らない川に行くよりはと、こ
の川の下流に入る。上手くいけば登っていない大物に会えるかもしれないじゃないか・・
藪を下って川に降りると流れはいい感じ。やっと気を取り直して仕掛けをセットして竿を
振る。渕尻で魚影を確認し、毛鉤を打ち込む。反応があるのだが、何だか変だ。よく見た
ら、魚影はなんと「ウ」!・・・急速にやる気を失っていく自分。ウがいるんじゃ、岩魚
はどうだろか・・もう全部登っているかもしれない。悪い想像ばかりが広がる。    

釣れないなあと言いながらも竿を振り続ける。 絶叫とともに野村さんが釣った岩魚。


笑顔の野村さん。 私も釣った。小さいけど岩魚。


小さいけどにっこり。 また釣った。今度も岩魚。

そんなマイナス感情を吹き飛ばす絶叫が響いた。先行する野村さんが藪の横から大きな岩
魚を釣り上げた。「おお、岩魚だあ、いい型じゃん」写真を撮って俄然やる気になる。ま
ったく我ながら調子がいいもんだ。慎重に釣っていたら待望の岩魚が釣れた。やはり藪に
隠れているようだ。ウと混生とは困ったもんだが、確実に岩魚がいるのだから釣ればいい
のだ。その後は順調とは言えないもののぽつぽつと釣れたが型が小さい。野村さんが大き
なのを手元で落とした。私はウを釣ったり、スレで釣ったりと散々な内容。そのうち野村
さんも当たりが遠くなり、橋まで来たところで脱渓した。              

あろうことか「ウ」が毛鉤に・・・ 今度は岩魚だ。


藪をこぐ場面も多かった。 だんだん大きくなる岩魚ににっこり


小さいが岩魚。 スレでかかった岩魚。


いい型の岩魚が釣れた。 小さい岩魚も釣れた。


にっこり笑顔のkuroo。 「ウ」が釣れてしまい苦笑い。

車に戻る途中、クルミを拾ってビニール袋いっぱいにする。昨年同様、これを畑に埋めて
冬に食べるのだ。車に戻り、別の川に移動する。別の川といっても知らない川なので、来
る途中にあった隣の川に向かう。山を越えて橋のたもとに車を止めて川をのぞいたら、何
と巨大な魚の影がゆらりと動いた。思わず二人で頭を引っ込め、顔を見合わせる。口に指
を当てて、車に戻り、そそくさと身支度をする。「尺はあるね」「うん、でかい」そっと
下流へ歩き、川に降りる。気を静めるためにそこで昼食にする。はやる気持ちを抑え、お
にぎりを頬ばるのももどかしい。味など分かりはしない。野村さんも同じようだ。   

何だか気持ちの落ち着かない昼食。 やっと釣れたけどルアーサイズ。

休憩を終えていよいよ午後の釣り開始。心がはやる。すぐ上のポイントで魚が毛鉤に反応
したが、釣れなかった。いよいよ問題の淵。じゃんけんして勝った私が先に攻める。ボウ
アンドロウで慎重に毛鉤をキャスト。その瞬間まったく別の場所から黒い影が走った。そ
の後何の反応もなかった。ずいぶんすれて敏感な岩魚だ。野村さんも毛鉤を振るが何の反
応もなかった。まあ、魚が居ることは分かったので先へと進む。           
上流から車が一台走ってきた。本命の沢奥に止めてあった熊谷ナンバーの車だ。この時間
で降りてきたということは、先行したのは地元ナンバーの車の人だったということか。追
いかけたけど釣れなかったという事だろう。ご苦労様でした。            

緑の天井が高く竿は振りやすいのだが、流れがフラットでポイントらしいポイントが無い
川だった。結局この川では私がルアーみたいな可愛い岩魚を一匹釣っただけに終わってし
まった。野村さんの落ち込みが大きい。                      
車にもどり、そのまま村上市内の瀬波温泉に向かう。青空が広がり、陽射しも強い。すっ
かり夏に逆戻りだ。こういううだるような天気には渓流釣り師がめっきり弱い。どこに行
っても釣れるような気がしないし、着替えるのもおっくうになる。コンビニに入り、冷た
い飲み物とアイスを買う。山から降りたらアイスはいつも変わらない。        

午後は釣れなかった野村さん。 瀬波温泉の観光案内所にて宿をさがす。

瀬波温泉の観光案内所に着いた。初めての場所だから、案内所で宿を探す。同じような人
がたくさん居て、どんどん宿が埋まっていく。海沿いで安い宿ということで探してもらい
、瀬波観光ホテルに予約が取れた。さっそく宿に向かう。3階建ての古いホテルだが、全
室部屋は海沿いだ。手続きをして3階の部屋に入ると、目の前は日本海が広がっている。
素晴らしい眺めに見とれながらも、すぐに温泉に向かう。天気が良いので日本海に沈む夕
日が見られそうだ。温泉もオーシャンビューで素晴らしい温泉だった。        

瀬波観光ホテル、全室オーシャンビュー。 夕日が楽しみだ。


特等席で夕日鑑賞、野村さん。 さあ夕日ショーの始まり始まり。

夕方ホテルの庭で缶ビールを飲みながら夕日を眺めた。何というか、素晴らしい体験だっ
た。日本海に夕日が沈む光景を見たのは初めてで、これほど見事なものだとは知らなかっ
た。ホテルのロケーションもあるのだろうが、足湯に浸かりながらビールを飲みつつ夕日
を眺めるなどというのは、なかなか経験出来るものではない。夕食の内容はまあ、あんな
ものとして、とにかくこの夕日には感動した。岩魚は小さく少なかったけど、夕日の素晴
らしさでおつりが来る旅になった。往復運転してくれた野村さんに感謝。       

夕日が沈む。 最後の夕日が雲の間から差し込む。


あかね色に染まる西の空。 夕飯で飲んだ〆張りが旨かった。

旅のうたつれづれに9首を                            

★夜駆けして朝一番に入りしも 先行二台 本命おわる               

★浅き渓 緑のひかり浴びながら 毛鉤ふりこみ岩魚釣る友             

★釣り上げし岩魚は川に放ちたり 胡桃拾いてお土産とする             

★日本海 沈む夕陽に眺め入る 淡く見えるは粟島のかげ              

★黄金色、橙(だいだい)色から茜色 夕空彩る色の饗宴              

★夕映えを特等席で眺め居る 足湯に浸かり麦酒飲みつつ              

★夕焼けの茜が残る夜の海 ぽつりぽつりと漁り火ともる              

★漁り火を眺めつ夕餉の箸すすみ のどを潤す〆張り(しめはり)うまし       

★快晴に何もしないでただ帰る 村上まで来て釣れない二人             


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