岩手:早春の釣り


GW明けの平日、岩手に釣りに行った。



ゴールデンウィーク明けの平日2日間、かねてから予定していた岩手の釣りに行った。
昨年、釣りが出来ずに帰ってきた川があり、何とかその川で釣りがしてみたかったので
、仲間に情報を提供してもらい万全を期して出かけた。ところがその日東北地方は強風
注意報が発令されるという荒れ模様の天気だった。北西の風が4m〜8mというから、
とても釣りにはなりそうもない・・高速道路で聞く天気予報はどれもこれも悪い情報ば
かりで、すっかり意気消沈しての岩手入りとなった。               

目指す川の上流から下流へと車を走らせる。木々の若葉がつまんだティッシュを横にし
たような形で風にちぎれまいと耐えている。いやはや、とんでもない大風である。矢作
町の交番で聞いた矢作温泉「鈴木旅館」に一夜の宿泊を予約して、気仙川に沿って上流
へと車を走らせる。住田町の釣具屋さんで2日間の釣り券を買う。こちらではヤマメ・
イワナ釣りは「雑魚券」と言う。それにしても1日800円は安い。        

矢作温泉、鈴木旅館。田んぼの真ん中に立っている。 鈴木旅館の玄関。造りはなかなか立派です。1泊を予約した。

仲間の情報を信じて上流の川に向かう。この風ではどこでも楽な釣りは出来ないだろう
が、向きや場所によって釣りになる川があるかもしれない。幸い目的の川は風が下から
の吹き上げになっていたので助かった。何とか釣りになるかもしれない。車を広い路肩
に止め、身支度をして腹ごしらえをする。車の外に出ると風が強いので、車の中でコン
ビニのサンドイッチを食べた。食べ終わって車の外に出たら、いきなり帽子を飛ばされ
そうになった。あわてて片手で押さえ、深くかぶり直した。            

風を避けて気仙川上流の小渓流へ行ってみた。 護岸の垂れ桜が満開だった。岩手は今、春なんだなあと実感。

身支度して川に立ち、テンカラ竿を振る。毛鉤は勢いよく前に飛んで行き、風に浮かん
川に落ちない。フワフワ中に浮いている状態だ。風が弱くなるのを待って振る。風に巻
かれると狙ったところにはまったく届かない。とんでもなく横に飛んだり、ひどいとき
は毛鉤が顔面に向かって飛んでくることもある。川に棲んでいる魚との勝負というより
は、風の呼吸(強弱)を読む勝負のような感じになっていた。護岸には綺麗なしだれ桜
が満開で、里の春は今が盛りだった。                      

満開の桜の下で竿を振る。風が強くて四苦八苦。 第1号のイワナが出た!これでボウズはまぬがれた。

護岸の陰に身を潜め、静かに投じたレベルラインの毛鉤に水しぶきが上がった。サッと
合わせるが、空振り。しかし、魚が反応した事で、俄然やる気になった。そして、その
上の小さい淵に毛鉤を振り込んだ時だった。陰がユラッと近づいて毛鉤を喰った!今度
は予想していたのでしっかりと合わせが効き、魚が抵抗する間もなく抜き上げられた。
ネットに納まったのは16センチほどの小さなイワナだった。やれやれ、これでボウズ
は無くなった。ホッとして、やっと周囲を見回す余裕が出てきた。風を待つ時間も釣り
のうちだという余裕も出てきた。                        

所々にこんな淵があって胸が高鳴る。 23センチのイワナ。魚の手応えを思い出した。


橋のたたずまいが里の風情を感じさせる。 何匹かのイワナを釣ってすっかり満足。お握りを食べている。


この日の当たり毛鉤。春らしく白いパラシュート16番。 またイワナが釣れた。


またまた釣れた。 こんな小さな流れに魚の気配が濃い。

その後いくつかのイワナを釣り、ミズを摘み、お握りを食べ、お茶を飲んだ。青空に浮
かんだ白い雲が同じ速さで移動していく様をのんびり眺めた。3時を過ぎ、枝にからま
った毛鉤が切れたのをきっかけに脱渓した。川の崖を登ったところは黄色い花が無数に
咲いていた。3面の畑がタンポポで覆われていたのだ。里山は婉然たる春だった。  

3時になったので脱渓。森も大地も魚が釣れると綺麗に見える。 タンポポが畑一面に咲いていた。

まだ時間があったので、本流を探るべく車を走らせた。程の良いところで車を停め、川
に入ろうとするのだが、どこもかしこも引き下ろしの風が強く、これではテンカラは振
れないと判断して撤退となった。実際問題、本流筋でレベルラインを振るには風が強す
ぎた。羽化した羽虫が風に飛ばされるような日にはライズどころではない。上空のカモ
メ(この川では川の上にカモメが飛んでいる)も羽ばたきながらホバリングしているよ
うな有り様だ。                                

あきらめて川を変える。気仙川から矢作川に向かって走り、昨年竿を出さずに帰った淵
に到着した。ここも車の外に出ると上流からの吹き下ろしで、とても釣りが出来る状態
では無かった。仕方なく、支流に逃げる。白糸の滝上流で車を停めて外に出ると、山陰
になったせいか、風が弱い。ここならと身支度をして風に多少強いテーパーラインの竿
と仕掛けを準備する。まあ、気休めにしかならないだろうが、釣りが出来る状態を少し
でも確保したかった。                             

しかし、この川では最初から最後まで何の反応も無かった。仲間の情報ではゴールデン
ウィークに大勢の釣り人が入っていたそうだし、この風だし、魚も毛鉤を追うどころで
はないのだろう。夕まずめのひととき、例の淵で毛鉤を振ったが魚のアタックは無かっ
た。毛鉤の横ではライズするのだが、肝心の毛鉤には見向きもしない。暗くなるまで必
死に竿を振ったのだが見返りは無かった。                    

宿の食事はシンプルでヘルシーだった。カロリー過多にはGOOD。 夕食後は毛鉤巻き。白いパラシュートを久しぶりに巻いた。

鈴木旅館は田んぼの真ん中にある。周りは田植えが終わっていてゲコゲコうるさい。昼
にこれが分かっていたら宿泊などしなかったのに。温泉なのだが、タオルも石けんも無
い。仕方なく私は先に入っていた地元のおじさんに石けんを借りた。夕ご飯はじつにシ
ンプルで質素。カロリー計算の必要もない。3畳くらいのカラオケルームで食べさせら
れる。御飯のおかわりは無い。ビールはロビーの自動販売機で買って飲む。朝の食事を
6時にしてと言ったら断られ、お握りを作ってくれと言ったら断られ、売店のあんパン
を買ってくれと言われた。ロビーは温泉に来た地元の人の社交場になっていた。そそく
さと食事を済ませ、缶ビールを買って会計をした。1泊夕食付きで3600円は高いの
か、安いのか。部屋に帰って翌日用の白いパラシュートをしこしこと巻いた。    

午前4時。気仙川オフをやった思い出の淵でルアーを振る。 矢作川上流の川に入渓する。

朝4時、目が覚めたらすぐに行動開始。気仙川の中流でルアーを投げてみたかったのだ
。昔、気仙川オフをやった大きな淵に行き、傍らに車を停めルアーロッドにリールをセ
ットする。渋谷のサンスイでこの日の為にヤマメ用のルアーを買っておいたのだ。琥珀
さんが自慢する気仙川のヤマメをルアーで釣ってみたかった。朝4時過ぎの河原はとて
も寒かった。指先の感覚が無くなるような寒さの中で2時間、手を変え品を変えてルア
ーを投げて引いたが、まったく反応は無かった。水温なのか、時間なのか、時期なのか
、スレているだけなのか・・・気仙川のヤマメは私の手には負えないことが分かった。

この周辺にはコンビニが無いので陸前高田市に一旦戻る。バイパスのローソンでお弁当
を買い、温めてもらって食べる。これが美味しかった。温かいコーヒーを飲んで気分転
換し、再度矢作川に向かった。支流から本流と釣り歩くが、8時頃からまた風が出てき
て悩まされ続けた。魚はいるのだが淵の底にへばりつくように隊列を組んでいて、毛鉤
をい打つとサッと散り、時間がたつとまた戻ってくるという忌々しい状態だった。とに
かく魚が上を向いていない。本流でただ1尾釣れたヤマメは「スレ」だった。    

イワナが釣れた。 広葉樹の緑が明るい小渓流だった。

11時になってしまい釣りの残り時間も少なくなってきた。最後は矢作川の上流で終わ
ろうと思っていたのでためらわず車を走らせた。この川は奥が深いので適当なところで
車を停めて入渓した。藪のような川で、とにかく毛鉤が振りにくい。ラインを心持ち短
くして毛鉤を振る。最初のイワナは何と言うこと無い瀬で出た。「へえ〜こんな場所に
いるんだ・・」というような場所だった。とにかくポイントの半分以上は藪で竿が振れ
ない。3尾のイワナを釣ったところでラインを杉の枝に絡ませて切ってしまった。それ
きっかけに脱渓することにした。二日間の釣り三昧が終わった。          

またイワナが釣れた。朝からここに来ていればなあ・・ 脱渓して歩いて車に帰る林道が明るくて気持ちよかった。

川から出ると山の緑が目に飛び込んできた。新緑真っ盛りだ。土手にはミズ、ウルイ、
ニリンソウ、シロバナエンレイソウなどが早春の風に揺れていた。青空に浮かんだ白い
雲が風に流されてゆき、若葉は風と共にざわめいていた。全ての草花や木々が春を謳歌
していた。岩手の里山は春満開だった。