長野の旅


善光寺のご開帳と「ろくもん」「旬花」そして松本城への旅



 五月十一日と十二日の二日間、長野を旅行した。                 
 善光寺ご開帳の時期に何とか行きたいものだと、旅行パンフレットをあれこれ眺めてい
た時に目にとまったツアーがあった。                       
「魅力満載!しなの鉄道「ろくもん」にのって長野を満喫コース」というもの。ろくもん
は、かの水戸岡鋭治さんがデザインした観光車両で、車内で食事が出来るというもの。元
国鉄職員としては是非乗ってみたい車両の一つだった。早速調べたら、開業したての北陸
新幹線に往復で乗れるプランにもなっていた。                   
 すぐにコースを申し込む。ろくもんの食事コースは洋食コースと懐石コースがあるのだ
が、善光寺に行くことを考えると今回は行きで乗る「洋食コース」しかない。五月の大型
連休を外して、この十一日と十二日に決めた。                   

 旅行の日程は、朝八時十二分の北陸新幹線「はくたか」で軽井沢まで行く。軽井沢から
しなの鉄道「ろくもん」で昼を食べながら長野に行き、あとは自由行動。宿泊は駅に隣接
しているメトロポリタン長野。翌日は自由行動で夕方四時の北陸新幹線「あさま」で東京
に帰るというもの。この自由時間に善光寺の参拝と「旬花」での夕食、翌日は松本まで移
動して、松本城見学を組み込んだ。                        

北陸新幹線「はくたか」の車内。新しい車両はいい匂いがする。 軽井沢駅で走り去る「はくたか」の勇姿。北陸新幹線に初めて乗った。

 十一日朝六時に家を出る。駅に行くバスが多くの会社員で混んでいる。いつもなら朝の
ジョギングに出発する時間に、こんなに働いている人がいることに驚かされた。カミさん
と顔を見合わせながら駅に向かう。駅の電車も混んでいた。池袋から東京までの山手線で
久しぶりに通勤の感覚を思い出した。                       
 新幹線の時間まで一時間ほどあったので地下の休憩所でエルゴラ(サッカー専門新聞)
を読む。先週末のサッカーが詳しく載っているので時間つぶしには最高だ。レッズは引き
分けだったが、まだ単独首位なので読んでいても気分はいい。            

 北陸新幹線「はくたか」に乗り込む。新しい車両の匂いはいいものだ。落ち着いた車内
の色がいい。きれいな車両だ。ヘッドが上下出来るので自分の頭の高さに調節し、一段だ
け背を倒す。動き出したのを感じないほどのスムーズな発車。車内販売でカツサンドとコ
ーヒーを買って朝食にする。途中大宮の手前できれいな富士山が見えた。旅の無事を富士
山に祈る。大宮を出れば軽井沢はもうすぐだ。一時間半の北陸新幹線乗車で新緑の輝く軽
井沢に降り立った。                               

軽井沢駅の駅前ロータリーには冷たい風が吹き抜けていた。 しなの鉄道の待合室。ここで「ろくもん」の乗車受付をした。

 ここで一時間あるので駅の外に出る。浅間山が見え、新緑が爽やかな風に舞うロータリ
ーから「さすがに軽井沢だ風が冷たいや…」などと言いながら喫茶店に入る。駅の緑を見
ながら暖かい紅茶を飲む。ここでも時間つぶしはエルゴラで。            
 予定時間になったのでしなの鉄道の受付に行く。ろくもんは座席指定が出来ないのでど
んな席になるかがわからない。ツアーの人が多いようで、早い時間に受付が終わったよう
だった。出発には時間があるが車両が入線しているということで、早く見たくて改札を入
る。出発ホームには人が溢れていた。みんな、このろくもんに乗るために来ている人達だ
った。思い思いに車両の写真を撮っている。私も後方と前方に回って写真を撮り、車体の
写真も撮る。新緑、快晴、最高の旅行日和だ。                   

コンコースに掲げられた「ろくもん」の巨大ポスター。 ろくもんと記念写真。カミさんもワクワクしている。


ろくもんの先頭車両で記念写真を撮る。やっと乗れる。 三号車の車両ペイント。いいですね〜。


これが我々が乗る二号車のペイント。かっこいいですね。 しなの鉄道軽井沢駅の看板。

 車内への案内が始まった。我々は二号車の入り口から入る。二号車の車内に入って驚い
た。車内はまるでサロンのよう。基本的に二人づつ座る形になっているが、向かい合わせ
でなく横並びに座る。進行方向と平行に並んで座る形だった。これは面白い。     
 我々の席は入り口から一番奥の壁際で、しゃれたソファーの席だった。板の椅子でなく
てラッキーと喜ぶ。配膳室に一番近い席で、係員の動きが多少気になるが、いい席だ。席
のテーブルにはすでランチョンシートが敷かれており、皿に乗ったパンやジャムが並んで
いた。                                     

これが決められた席。ろくもんは指定席ではないので席は運で決まる。 テーブルにはすでにパンやランチョンシートが敷かれていた。

 席に着き、簡単な説明を聞いているうちに車両が動き出す。飲み物のリクエストには白
ワインを頼む。新緑の軽井沢から長野までのゆっくりした旅が始まった。       
 すぐに料理が運ばれて来た。以下、ろくもん洋食フルコースのメニュー。      
※ろくもん〜初夏の詩〜                             
・アミューズ・先付け                              
 冷製きのこの和風ポタージュ、信州産えのき茸のチップス             
・パン                                     
 信州産小麦のパンと沢屋旬のジャム二種                     
・オードブル・前菜盛り合わせ                          
 信州地鶏「真田丸」の蒸し煮。佐久産有機トマトのソース             
 「信州サーモン」白樺チップのくん製「沢屋塩レモン」のドレッシング       
 季節の「彩り野菜」と冷たいバーニャカウダーのソース              
 蓼科産「豚もも肉のハム」と沢屋ピクルス、東信のじゃが芋をくん製したポテトサラダ

冷製スープが美味しい。 様々な料理が並ぶ前菜。一品毎に違う味付けをしている。


洋食コースに意外な炊き込みご飯。この量が嬉しい。 メインは素晴らしい味。どれもこれも旨い。

・ごはん                                    
 佐久「五郎兵衛米」と「むらさき米」の炊き込みごはん。信州ぶんご梅の生ふりかけ 
・メイン料理                                  
 カマンベールと春の野菜、赤コショウ添え                    
 真空調理でゆっくり火を通した信州プレミアム牛のステーキ            
 佐久鯉とリコッタチーズのカネロニ、ふきのとうジュノベーゼ           
・デザート                                   
 フォンテンヌブロー                              
 ミカドコーヒー                                

お菓子のお土産を配っていた売り子さん。一人に一つ頂いた。 デザートはフォンテンヌブロー。素晴らしい味だった。

 地元の素材を使って地元のシェフが調理する洋食フルコース。ひと皿食べ終わると、良
い時間とテンポで次の料理が運ばれる。なんという楽しさ。白ワインを飲みながら車両の
揺れとゴトンゴトンという線路の響きに身を委ねる。窓の外は輝くような新緑の山々。 
 浅間山、信州上田城、観光的な見どころではスピードを落とし、じっくりと解説してく
れる。停車の駅ではそれぞれに観光みやげの販売があり、係員や駅員が手を振って見送っ
てくれる。スペシャル感満載の鉄道旅だ。こんな旅があったのかと新鮮だった。    
 メインの時には赤ワインを頼み、少しずつ様々な味を楽しむ。食事の量は少なめで、誰
でも食べきれる量だった。一つ一つにそれぞれ違った味付けがしてあり、味を発見する楽
しみも隠されていた。オードブルのシェフとメインのシェフはそれぞれ交代時にホームで
手を振って見送ってくれた。「あの人の料理だったのか…」と思うと味も深まるような気
がした。                                    

二号車の車内風景。 サロンのような豪華な内装。とてもいい気分です。

 車内販売が来たのかと思ったら、お土産の配布だった。こちらが楽しんでいるのに申し
訳ないような気がしたがこれもツアーの一部なのだろうか。             
 お土産は、かわいい売り子さんから田中本店のくるみ菓子の二種類。ろくもんラベルが
ついたラッピングになっていた。そして、料理をサーブしてくれた係員から、高村商店の
醤油と味噌のセットを袋入りで頂いた。本当に驚いて恐縮するばかりだった。旅行に行っ
ただけでお土産がもらえるなんて思ってもいなかった。カミさんは大喜び。      
 数々の驚きとサプライズを見せてくれた「ろくもん」。新緑の中を走り抜け、一時五分
に長野に到着した。名残惜しかったが、次回は懐石コースに乗ってみたいと思わせてくれ
る楽しい時間だった。                              

車内で記念写真を撮る。 なかなかいい感じ。


これは食事の出ない一号車。 三号車は障子があって和風の造り。トイレも三号車にある。

 長野駅に隣接したメトロポリタンホテルに行き、荷物を預けて善光寺に向かう。善光寺
は長野駅から約一、七キロあるが、良い天気なので歩いて行く。中央通りを多くの人が同
じ方向に歩いている。善光寺のご開帳は四月五日に始まって五月三十一日まで行われてい
る。全国の善男善女が参拝をして、七年に一度の盛儀を楽しんでいる。        
 今まで善光寺に参拝したことがなく、このご開帳を機会に参拝をしようと思ったのが今
回のツアーを選んだきっかけだった。                       
 一歩一歩近づく善光寺。周囲の景色も徐々に変わって行く。大門を入ると参道になり、
多くの名店が並ぶ。どの店も堂々とした造りで、歴史の長さを感じさせる。      

長野市内を歩く。中央通りはすぐに善光寺の参道になる。 爽やかな風が吹き、ビル屋上の鯉のぼりが風に泳いでいる。


大門を過ぎると急に参道らしくなる。 仁王門が近づいてきた。巨大な仁王様だ。

 仁王門の偉容が迫ってくる。左右の巨大な仁王様が迎えてくれる。無数の草履が奉納さ
れているのはどんな訳があるのだろうか。                     
 仁王門を過ぎると参道はさらに門前町の様相を呈し、遠くに巨大な三門が見えてきた。
三門が徐々に近づく、三門の楼閣に人々の影が動き、その影の小ささに三門の巨大さが際
立つ。なんという大きさだ…。その柱の太さ、屋根の高さ、圧倒的な量感が我々を暖かく
包む。圧倒されるのではなく包み込まれるような感覚で門をくぐる。いよいよ善光寺だ。

右の仁王様。 左の仁王様。


門前町の風情がいい。名店ばかりだ。 巨大な三門が見えて来た。この大きさはどうだ!

 遠くに本堂と回向柱が見えて来た。テレビでよく見る光景だ。これが目的の地。長野駅
で案内所の人から「土日は回向柱に行き着くまでに三時間くらいかかったようですよ…」
と言われていたので、どんなにかすごい行列が出来ているのかと思ったが、行列は少しず
つだが進んでいた。一時間くらいは覚悟していたのだが、十分ほどで回向柱に到着した。
 前立本尊と「善の綱」で結ばれた回向柱に触れることで如来様との結縁が叶うと言われ
ている。カミさんと並んで側面にしっかり両手で触れ、願いを伝えた。        
 ちょうど法要の為にご住職が本堂に向かう姿を間近で見ることが出来た。紫の袈裟に向
かって両手を合わせた。そしてその後を追うように本堂へと向かった。        

本堂と回向柱。テレビでよく見る景色だ。 回向柱の前で記念写真。


カミさんも記念写真を撮る。これが今回の目的地。 誰もが回向柱に両手をつけて願い事をする。


法要を行う住職が本堂に向かって歩いている。合掌で見送る。 ご住職を追うように本堂へと向かう。

 前立本尊を拝観する行列がびっしりと本堂内を埋め尽くしていたので、ご本尊の拝観は
断念して、本堂横の休憩所で休む。ちょうど法要が始まったようでお経を読む声と鉦の音
が聞こえてくる。休憩所の椅子に座りながらカミさんと両手を合わせていた。     
 法要を案内する人の声が自然に耳に入る。今日は東日本大震災の追悼法要だとの言葉に
耳を疑う。陸前高田の人々や福島の人々が多く法要に参加しているという。なんというこ
とか……。ここ善光寺で、陸前高田を追悼する法要の時間に居合わせるなんて。陸前高田
にゆかりのある人間として、その偶然に驚いた。そして二時四十六分にマイクの声が言う
「ご参拝の皆さまも足を止め、黙祷を捧げて下さい」そうだ、今日は月命日だった…。 
 何という偶然か…、二ヶ月前の月命日には陸前高田市内で黙祷を捧げていた。この日、
ここで黙祷をする。この日、この時間に本堂横にいなかったら思い出すこともなかったか
もしれない。なんという偶然。というよりも、善光寺に導かれてこの時間にここにいた奇
跡としか思いようがない。                            
 ご住職が法要を終えて、本堂横から出てきた。偶然、目の前を通るご住職一行に合掌し
頭を垂れる。「陸前高田を忘れちゃいかんよ」と言われているような気がした。    

爽やかな風が吹き抜ける本堂。 東日本大震災の追悼法要の読経が聞こえている。

 カミさんが目に涙をうかべていた。「こんな偶然があるなんて…」あとが言葉にならな
い。本堂の放送は陸前高田の熊谷さんが代表してお礼の言葉を述べている。挨拶が終わっ
たようで、それを確認して席を立った。                      
 何も考えずに二人で本堂を回る。戒壇周りの列が最後尾で「ここから一時間待ち」と書
かれた立て札を見る。善男善女がズラリと並んで待っている。さすがにこの後に並ぶ気に
はならない。横にトイレがあったのでそれぞれトイレに入る。            

戒壇巡りを待つ善男善女の長い列。 小さな祠の横に立っていた立て札に「高田の松で彫ったお地蔵様」

 トイレから出てカミさんを待つ間、背後がやけににぎやかだったので気になった。カミ
さんが出て来る時間までと思ってその小さな祠をのぞき込む。木のお地蔵さんだった。ふ
と立て札を見て驚いた。陸前高田の震災で消滅した高田松原の松で彫ったお地蔵さんだと
書いてある。テレビの取材が来ていて。先ほどの法要を終えた陸前高田の人々がインタビ
ューを受けていた。善光寺に高田の松で彫ったお地蔵さんがあるなんて知らなかった。
 トイレから出てきたカミさんもビックリだった。先ほどの法要といい、このお地蔵さん
といい、善光寺には驚かされる。その場に団体が来てお坊さんが先頭でお経をお唱え始め
た。終わるまでの時間、一緒に合掌する。                     
 高田の松で彫ったお地蔵さんは三体あり、残り二体は陸前高田の普門寺にあると書いて
あった。三月、高田にいた一週間、毎日普門寺の前を通っていた。そんな偶然も善光寺に
来て知ったことになる。やはり善光寺の仏様に導かれていたのだろうか。       
 普段は扉が閉まっているこの祠、東日本大震災の追悼法要ということで、インタビュー
の時だけ特別に扉が開いていたのだという。初めて来たのに、ピンポイントでここに来ら
れる偶然。本当になんという仏縁なのだろうか。                  

高田の松で彫ったお地蔵様。 たまたま開いていた祠だった。


お坊さんの読経に合わせて合掌する。 少し疲れて公園の茶屋で休憩する。

 少し疲れて横の公園にある茶屋に行って休む。カミさんは冷やし甘酒、私はサイダーを
注文する。のんびりと庭を眺めながら休む。いろんな事があって少し混乱していた。  
 のんびり休んでいるうちに、あまりに静かなので、ここが善光寺境内だという事を忘れ
てしまいそうだった。居心地のいい空間だった。                  
 誰でも、どんな宗派でも受け入れて包み込んでくれる空間。お寺さんでそんな経験をし
た事がなかったが、今回だけはそれを実感した。偶然に高田の人々と隣り合わせたのも仏
縁なのだろう。この日、この時間に善光寺にいる事がまるで決められた事だったかのよう
に感じる。こんな事はあまりない。                        

 たっぷり休んで、改めて善光寺を見学する。本堂前で結婚式の前撮りをしていた。打ち
掛け姿の花嫁さんには観光客のカメラがズラリと囲んだ。外国人観光客にとってはまたと
ない被写体だ。争うように撮っている人達を見て笑ってしまった。          
 様々な伽藍があって、それぞれにお参りする。縁がありそうな仏様も、縁がなさそうな
仏様も平等にお参りする。そしてユラユラと参道の店巡り。お土産を何にしようかと思案
していた目に飛び込んできたのが「箸」の看板。すぐに店内を見る。木の箸がズラリと並
んでいる。善光寺参拝記念に桜の木を削った箸を購入した。カミさんも気に入った杉の箸
を買った。いいお土産が出来た。                         

ブラブラと境内を歩き回って仏様に手を合わせる。 六地蔵の豊かな表情がいい。


カミさんが食べたかった「玉だれ杏」牛皮と杏のバランスが旨かった。 倉を改装した雑貨店。二階を見たらむき出しの梁が目の前に。

 夕飯の時間まで間があるので長野市内を散策。歩いて休んで、歩いて休んでと時間をつ
ぶす。入り組んだ裏側の路地歩きが面白い。歩き回って夕食用にお腹を空かせる。   
 今日の夕食は予約客だけの店、日本料理「旬花」。時間になって店に向かったのだが、
入り口がわからず、うろうろしてしまった。思いがけない場所に入り口があって、やっと
入る事が出来たのでほっとした。                         
 おかみさんが迎えてくれて、個室に通される。畳の部屋だがテーブルに椅子式となって
いる。足元のカーペットは保温式で暖かい。疲れた足が解放されていい気分だ。    
 ガラス窓の外は新緑のモミジが風にあおられて大きくゆれている。青嵐という季節にふ
さわしい景色だった。                              

日本料理「旬花」、個室のしつらえ。 大きなガラス窓から新緑のモミジが風にゆれていた。

 日本料理「旬花」の料理は以下の通り。                     
先付け:熱々のホタルイカ沖漬け                         
八寸:虎豆出汁煮・カニの煮こごり・芋甘煮・イカ手鞠寿司・鮭の蕗味噌田楽・信州牛た
   たき・旬花たまご・豆腐と百合根の味噌風味                 

暖かいホタルイカの沖漬け。初めての味だった。 八寸はどれも珍味。一つ一つが丁寧な味付けになっていた。

椀物:ホタテしんじょう・竹の子・桜麩・若布・出汁                
お造り:愛媛の本マグロ・真鯛・ヒラメ・エンガワ                 
〃   信州名産馬刺し                             

椀はホタテしんじょうの優しい味が良かった。出汁と若布の相性。 新鮮な魚がある。ヒラメはエンガワの太さから見てかなりの大物。


お造りに大満足。 信州といえば馬刺し。ニンニク醤油で頂く。

蒸し物:山芋宝箱(山芋をベースに鰻・鰻の皮細切り・ギンナンを入れて蒸したものにイ
    クラ・ウニを乗せ出汁を張って柚子の皮を散らしたもの)最高に旨かった。  
三種:コゴミのゴマ豆腐和え・サワラ焼き&蕗味噌卯の花・わらび          
蕎麦:ご開帳の期間だけ提供する手打ち蕎麦                    
甘味:酒粕パウンドケーキ・酒粕アイス・生クリーム二種添え            
お茶:特製ブレンド茶                              
 これが七千円のコース。味はもう絶品だった。料理の量も絶妙で、これだけ品数が多い
のに最後まで普通に食べられた。今まで食べた料亭の中でも上位に来る店だった。飲んだ
お酒はビール・善光寺特別純米酒・大信州純米酒。信州のお酒も旨い。        

山芋蒸し宝箱。うなぎ・ぎんなん・いくら・ウニ・柚子……旨し。 三種の珍味。どれもしっかりした味の中に新鮮な発見があった。


蕎麦は更級の細打ち。のどごし最高。 甘味もビックリの味。酒粕ケーキはクリームと一緒に食べる。


看板もどっしりと格調が高い。 若いおかみが見送ってくれた。


入り口はこんな感じ。 「旬花」のれん。ごちそうさまでした。

 華やかに酔って店を出て夜風に当たり、タクシーでホテルに向かう。遅いチェックイン
だったせいかフロントの人に「お部屋が一杯になってしまいましたのでこちらの都合でグ
レードアップさせて頂きました」と言われた。何のことか分からず部屋に入って驚いた。
 部屋が広い。角部屋で窓が二方向にあり、長野駅が真下に望める。ちょうど北陸新幹線
がホームに停まっていた。目の下にまるでジオラマのような景色が広がっている。   
 ベッドが並ぶ広い部屋とは別に六畳の和室があり、テレビが洋室と和室の二台ある。ま
た、お風呂が広くて驚いた。普通に洗い場があり、ユニットではないお風呂だった。トイ
レも洗面所も広く快適だ。こんな部屋に泊まることはないので何というクラスなのかわか
らないが、嬉しいサプライズだった。                       
 早速お風呂に湯を張り、疲れた体を暖める。本当にいろいろな事があった。最後のサプ
ライズもすごい。こんなに内容の濃い一日はなかなかない。             

七階の部屋からの夜景。駅のホームがよく見えた。 豪華な部屋にグレードアップ。なんてラッキーな。

 十二日、朝食はホテルのバイキング。いつも行っているルートインなどと違ってメニュ
ーがいい。キチンと着替えているので、今日は洋食にする。スクランブルエッグが旨い。
カミさんもいっぱい食べている。牛乳が濃くて旨かったのでおかわりした。      
 朝食後駅に向かい、松本行きの電車を確認する。なんと、特急で五十分かかるとのこと
、しかも一時間に一本しかない事がわかる。急いでホテルに帰り、片付けてチェックアウ
トする。せっかく豪華な部屋に泊まったのに、ゆっくりしている時間はなかった。   
 十時発、特急しなの八号。駅員さんに聞いてアルプスが見える方の席を買う。長野から
松本まで電車で行くのは初めてだ。                        

長野から松本へは特急しなので行く。 松本駅に到着。台風の影響か、風がとんでもなく強い。

 松本駅に到着。すぐに松本城目指して歩く。台風六号が来ていて、松本市内は強風が吹
き荒れていた。街路樹の桂が葉を飛ばし、枝を大きく回転させながら暴れている。強風を
背にして押されるように城まで歩く。                       
 松本城は国宝。約四百年の歳月をここで風雪に耐えてきた。石川数正が秀吉に封じられ
て城主となり、数々の戦う城としての防備を築いてきた。秀吉・数正・家康の三者の物語
などもこの城を魅力あるものに見せてくれる。その外観は黒漆に塗り固められ、端正な姿
の中に剛直な男の意思を感じさせる城でもある。                  

いよいよだ。松本城の入り口に到着。 入り口の門を横目にお城一周へと向かう。強風に木がかしいでいる。


お城をバックに記念写真。 お堀越しのお城が美しい。

 まずは周囲を一週する。見る角度によって印象が変わるのを確認しながら歩く。強風に
木があおられ、土埃が舞い、お堀の水が波立っている。なんという天気だろうか。   
 お城の風裏に白鳥が二羽避難していた。賢いものだ。お堀の急斜面で草刈りをしている
庭師が三人いた。お堀に落ちるのではないかと見ている方が気になった。お堀から二の丸
御殿跡に入る。絵図面と庭を対比しながら当時の生活を想像する。こういう時間が好きだ
が、今日は風が強すぎて感傷に浸っていられない。                 
 入り口で六百十円を払い黒門を入る。本丸御殿跡は庭になっていてツツジやボタンが咲
き誇っている。そして正面に国宝松本城の偉容が……、美しい、本当に美しい城だ。  

この角度もいいね。 朱塗りの橋と黒いお城の対比がいい。


黒門から入る。 本丸御殿跡は花でいっぱい。ここで記念写真。いいね。

 大手口から靴を脱いで入城する。柱のチョウナ跡が美しい。この太い柱をどうやって運
んだのか…。作った大工はどうやってこの梁を削ったのか…。見ているだけで妄想がふく
らむ。後ろから次々来る団体さんに押されるように順路を進む。どうやら中国人の団体さ
んのようだ。平日でこれなのだから、土日はとんでもない事になっているのだろう。  
 狭い階段を大股で次々に登って行く。窓からの景色を時々楽しみ、柱の感触を楽しみ、
上へ上へと登って行く。狭く曲がった階段を窮屈にすれ違いながら最上階の天守六階に着
く。中央で見上げると神様が祀られている。パンフレットを見ると、二六夜神という松本
城を守る神様と書いてあった。                          
 ここでしばし座って時間を楽しむ。中国人の若者がみゃーみゃー言いながら次々と登っ
て来て下りていった。天守閣を通り抜ける風が気持ちいい。石川数正が、松平直政が、水
野忠清がここに座って同じ景色を眺めていたのか…と感慨深い気持ちになる。     

急な階段。 天井の梁がすごい。


ピカピカの床。 火縄銃のコレクションがいっぱいある。


縦格子の窓から外を眺める。 窓から外を眺める。風が強い。


天守閣の天井に神様がいた。 天守閣の床。歴史を磨き込んだ床だ。

 急な階段を下り、二階の月見櫓に来た。ここだけは戦いの城ではなく、月を楽しむ為に
後で造られたものだ。欄干の朱色が美しい。江戸時代、戦乱の世はすでに遠く、この月見
櫓で月見を楽しむ城主と客人。三方が吹き抜けになる開放感。さぞよい月見ができたこと
だろう。剛直な城の姿に風流を加えてこの月見櫓が存在する。なかなかいい。     

お城を下から見上げる。 そういえば仲間でお城の石垣を登ったという人がいたっけ…。

 松本城を後にして「松本に来たら蕎麦を食べなくちゃ…」とばかりにガイドブック片手
に蕎麦屋を探す。本通りの蕎麦屋はどこも混んでいそうなので裏通りの店を探す。   
 やっと見つけたのが「古ばやし本店」。待っている人がいなかったのでラッキーと思っ
て入り口を入ったら満席だった。しばらく待って席があいたので案内され、まずはビール
を注文する。蕎麦は私が鴨セイロ、カミさんが重ねを注文した。先にワサビが来て、それ
をすりながら蕎麦を待つ。                            
 出てきた蕎麦は真っ白の更級蕎麦の細打ち。たっぷりの鴨汁に浸けてすする。のどごし
がじつにいい。店内に写真があり、この店は高円宮ご夫妻がいらしたという店だった。高
円宮といえば、日本サッカー協会の名誉総裁でもある方で、そんな方が来た店で蕎麦を食
べられたのは、これまた強運と言っていいかもしれない。今回の旅は当てずっぽーだった
割りには、素晴らしい旅だった。蕎麦も鴨も旨かった。               

頼んだのは鴨セイロ。更科の白く細い蕎麦だった。 松本の蕎麦に大満足。


古ばやし本店の店構え。 手水鉢にきれいな水とキュウリとトマト。松本は水の町でもある。

 駅から北アルプスの遠景が素晴らしかった。広告ブースに「松本山雅FC」を発見。サッ
カーファンにとって松本と言えば「松本山雅」だ。J1に昇格して苦しい戦いをしているが
なんとか残留できそうでもある。あの強烈なサポーターがこの町にいるのだと思うと嬉し
くなる。次回レッズとの試合は七月十一日の土曜日だ。もう一度来るとすればその時だ。
 松本駅からまた特急しなので長野に向かう。                   

松本と言えば「松本山雅」、すばらしいサッカーの町。 長野駅のお土産は「善光寺浪漫」という三種類の地ビール。

 長野駅で土産物コーナーに利き酒コーナーがあったので三種類の酒を利き酒する。その
中の一本が気に入ったのでお土産に買う。ついでに昨夜「旬花」で飲んだ酒も一本買う。
 夕飯用におやきを買って新幹線乗り場に向かう。帰るのは北陸新幹線の「あさま」だ。
 構内の売店で「善光寺浪漫」という三種類の地ビールを買う。新幹線の中で飲む予定。
 それにしてもいろいろあった旅だった。これだけ中身の濃い時間を過ごしたのは久しぶ
りだったような気がする。神仏のご加護があったのだろう。ありがたいことだ。    

 追記:帰って来てメトロポリタンホテルのHPをチェックしたら、なんと泊まった部屋は
ジャパニーズコラボレーションスイートという一泊六万円の部屋だった。こんな高い部屋
は二度と停まることはないだろうから、もう少し部屋を楽しめば良かったと少し後悔した
が、相手の都合でグレードアップしたなんて、まあ運がいいこと。          
 無事に帰っておやきを前にカミさんとビールで乾杯。おつかれさま。        


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