※※ 森林インストラクターへの道 ※※ 51


復層林施業による山づくり



2004. 3. 1


特別寄稿 復層林施業による山づくり     荷見(はすみ)泰男(やすお)

私が、復層林施業に関心を持ったのは、昭和44年に全国林業研究グループ連絡協議会
が主催した第1回のヨーロッパの林業視察を通して、択伐や画伐による天然更新が行わ
れている森林の姿を見て羨ましく思ったからです。                
 日本のスギ林やヒノキ林での天然更新は余程条件が良くなければ困難ですが、択伐し
た下層に樹下植栽を行う復層林施業は長所も多いことから、いつかは実行してみたいと
考えていました。                               

 私の復層林への取り組みは、昭和54年に樹齢約60年生のヒノキとカラマツの混交
林を対象に、ヒノキを被圧している上層のカラマツを全て伐採し、下層にヒノキを樹下
植栽したのが始まりです。                           
 この施業の結果、カラマツに被圧されていた上層木の成長が良くなるとともに、新植
した下層木についても成長は良好であり、下刈りも概ね4年で抜け、省力化が図られま
した。                                    

復層林を仕立てるのは試行錯誤の連続だった。 そして、これをどう育て、維持するかが次の世代の課題となる。

 これらの利点が確認されたため、復層林施業を拡大することにしました。実施に当た
っては岐阜県の石原猛志氏の山林や筑波山にある国有林の試験林を参考にするなど、試
行錯誤と創意工夫を重ねながら昭和59年から平成15年までの20年間に約10haの
復層林を造成しました。                            
 昭和59年に、樹齢70年生のヒノキ林を対象に10a当たり約6本の上層木を残しま
したが、この数ではお立て木的で、明らかに本数が少なかったため、翌年には10a当た
り約32本残しました。この本数は、伐採率(本数率)で約50%でしたが、この本数
では下層木の照度が不足することが分かり、翌年からは23本、21本、そして18本
というように段階的に減らしていきました。                   
 これらの試みで得られた結果を整理すると、上層木として残す本数は20本前後で、
伐採率は60〜65%になります。適正な林内照度の目安となる樹冠疎密度は40%前
後の経験値が得られ、この照度を維持するためには、上層木の間伐を続けていく必要が
あります。                                  
 また、下層木にはスギとヒノキを適地適木となるよう植え分けています。スギは全て
挿し木に優良品種を選びましたが、品種により耐陰性に相違あることが分かりました。

 次に復層林施業の得失ですが、長所としては前に述べたとおり、雑草木の成長が抑制
され下刈りが早く抜けることと、上層木の樹冠が発達し肥大成長が早くなり、付加価値
の高い木材を生産することができます。また、土壌の流出を防ぎ森林生態系の維持など
環境保全に優れています。                           
 短所及び必要な条件としては、上層木の伐採や集材時の下層木の損傷問題と伐出のた
めの高い路網密度が必要となることです。                    
 この下層木の損傷問題については、平成元年に私の復層林施業地で茨城県林業試験場
(現林業技術センター)と森林総合研究所が合同で、上層木の伐採と下層木の損傷に関
する試験を行った結果から、伐採時の下層木の損傷は数%で、下層木を傷めない伐出方
法の一例が分かりました。                           
 なお、復層林施業を行う場合は、普段から適正な間伐を実施し、丈夫な木を育ててお
くことが大切となります。                           

 以上紹介しましたとおり、復層林施業による山づくりは環境にやさしく、国が推進し
ている長期育成循環施業とも合致するとともに、施業の省力化や付加価値の高い木材生
産が出来るなどのメリットが多く、今後も林業経営の大きな柱としていきたいと思って
おります。                                  


豊かな時間が作ってくれた森は全ての人を癒してくれる。
最後に                                    

 木材の不況が長引くなか、林業経営は困難を極めています。林家は、いかにして省力
化を図り、付加価値の高い木材を生産していけばよいのか、選択の幅は限られた状況に
追い込まれています。                             
 我々林家は、私の林業後継者は言うに及ばず、次世代の林業を担う人達に対し、どの
ように夢を与えることができるのでしょうか。山村に住む私達は、山を護り、環境を保
全してすばらしい日本をつくっていかなければならない使命を帯びています。    
 日本の山が護られるとすれば、それは行政の積極的な支援、林業団体、林業経営者の
あくなき情熱と努力ではないでしょうか。                    
 今回の農林水産大臣賞の受賞は、ともすれば挫けそうになる私にとって、大いなる勇
気を与えてくれるものとなりました。                      



本文は「山林」第1437号に掲載された文章の一部を荷見泰男氏の許可を取って記載
しているものです。