ついにアジアチャンピオンに!


激闘の末、選手とサポーターが力を合わせて勝ち取ったアジアナンバーワンの座。


11月14日(水):サイタマスタジアム2002:     
AFCチャンピオンズリーグ決勝 第2戦:セパハン(イラン)


いよいよこの日が来た。3月から戦ってきたアジアチャンピオンズリーグ。3月のホー
ムペルシク・ケディリ戦から始まり、シドニー、上海、ジャワ島のソロ、韓国の全州と
城南、イランのエスファハンとアウェーを戦い続け、今日決勝の戦いを迎えた。泣いて
も笑ってもこの1戦で全てが決まる。浦和レッズがアジアナンバーワンになれるところ
までやってきた。今日の試合に勝てばアジアチャンピオンだ。           

朝から気持ちは高ぶるのだが、体調は最悪だった。イランで引いた風邪がこじれて下痢
が治まらず、途中の駅で「ストッパ」を買って、飲みながらの参戦だった。体調最悪、
テンション下がりまくり。でも今日は勝たなければならない。           

浦和美園駅の全ての柱に「ALL COME TOGETHER!」のポスター。 駅の階段にも巨大な横幕。クラブも今日は気合いが違う。


サイスタへの途中。 至る所に横断幕や檄文が貼られている。

いつもより早くスタジアムに着く。平日の夜だというのに、この人の多さはどうだ。み
んな歴史的瞬間に立ち会う為にやってきた。奇しくも今日は「埼玉県民の日」。チケッ
トは発売後2時間で完売だった。いつもより沢山のチケット難民がいて、いつもより沢
山のダフ屋がいた。特別な試合だということがよく分かる。これは浦和レッズサポータ
ーだけが教授できる幸せだ。他のチームのサポーターは指をくわえて見ているしかない
。我がチームがアジアチャンピオンになるかどうかという浦和レッズの戦いなのだ。テ
レビで日本のチームがなどと煽るが、それは違う。浦和レッズがアジアナンバーワンに
挑む戦いなのだ。他チームの応援も声援もいらない。我々の声が我々の選手を押す。 

サイスタの入り口にも「ALL COME TOGETHER!」の看板。 ボードを掲げて何やら叫んでいるセパハンサポーター。

セパハンサポーターがアウェー入り口でボードを掲げている。ペルシャ語なので何て書
いてあるか分からないが多分「チケット求む!」だろう。ザックを背負ってイランから
やってきた人たちだろうか。まさかここまで来て入れないとは思わなかったのだろう。
上手くチケットに巡り会えればよいが。まあ、アウェーだから厳しいのも仕方ない。ま
あ、頑張って叫んでくれ。                           

ゴール裏はすでに赤い旗の海となっていた。 今日はメインの人たちも気合いが入っている。

入場し席に着く。席は北ゴール裏に近いメインロアー。ゴール裏が近いので一緒に応援
出来る良い席だ。さっそく旗を出して振り始める。試合開始まで一時間以上あるのに、
すでにゴール裏は旗の海になっている。見わたすとセパハンサポーターも思ったより入
っている。2〜300人はいるだろうか。在日イラン人と関係者のようだ。きちんと黄
色い服を来ているのが嬉しい。イラン国旗が誇らしげに振られている。中にははるばる
イランから来たサポーターもいるのだろう。チームの勝利を信じて何十時間もかけてや
って来るサポーターには悪いが、今日だけは負ける訳にはいかない。        

セパハンのサポーター300人くらいだろうか。 選手のアップが続く。

セパハンの選手が出てきた。もの凄いブーイングが湧き上がる。選手達が驚いたように
こっちを振り向く。アウェーの力を思い知らせてやる。レッズの選手が出てきた。スタ
ジアムが歓声に包まれる。狂ったように旗を振り叫ぶ。すでに戦いは始まっている。い
つものように浅井さんの声がスタジアムに響き渡る。この一戦にかける選手の言葉が伝
えられその都度歓声が上がる。みんなこの一戦の大事さが分かっていて、この一戦にか
ける意気込みが伝わってくる。アジアチャンピオンになる戦いが始まろうとしている。

ものすごい数のカメラマンが場所を争っている。 ゴール裏は赤い旗の海。

アップが終わり選手が消えたピッチにしばしの静寂が訪れる。そしてゴール裏が動き出
す。中心部から歌われ始めた「威風堂々」があっという間にスタジアム全体の合唱へと
変わる。ゴール裏では隣の人同士が手をつないで差し上げる。それを見てメインもバッ
クも立ち上がり手をつないで「威風堂々」を力いっぱい歌う。この一戦にかけるサポー
ターの思いを両手と声に乗せる。その中を選手が入場してくる。バックスタンドに巨大
な白い星が浮かび上がる。スタジアムが一体となったビジュアルはアジアの一番星を表
していた。メインは白と赤の旗を振る。ゴール裏は赤白のストライプ。そして6万人が
声を合わせてウオーリアが始まった。何という声の圧力。満を持したサポーターの声が
サイスタを圧倒する。                             

バックスタンド現れたビジュアルは巨大な白い星。 選手が入場するのをウオーリアで迎える。

声の圧力がスタジアムを揺るがす中、運命のキックオフ。セパハンの選手の動きが良く
て、最初から白熱したボール争いが始まった。浦和レッズコールを繰り返しながら、少
しでも前にボールを運んでくれと願う。ポンテの動きが頼もしい。セパハン4番のナビ
ドキアが上手くボールを捌く。レッズの守備は今日も固い。前半7分、ポンテのフリー
キックをドンピシャのタイミングで闘莉王がヘッド。惜しくも相手キーパーのファイン
セーブに得点成らず。流れは徐々にレッズへと傾く。そして前半21分、ポンテのスル
ーパスが相手の足に当たりコロコロと永井の前に。永井がそのまま持ち込み右足一閃!
ボールはキーパーの手を弾き、ゴールネットに突き刺さった。           

スタジアムが揺れた。総立ちになったサポーター。カミさんと抱き合い、周りのみんな
とハイタッチ。「永井〜〜!やったあ」「えらいぞ〜〜」お祭り状態になった。ビジョ
ンで再度確認し、再び大歓声。レッズが待望の先取点を奪った。こうなればこっちのも
のだ。先制した試合で負けたことはない。ここ一番に強い永井。素晴らしいシュートだ
った。勝たなくてはいけないセパハンだが、全力で押してくる訳ではなく、失点後も同
じ展開が続いた。監督にすれば、まだまだ逆転できると思っていたのかもしれない。し
かし、こうなった時のレッズが強いという事をセパハンの監督は知らなかったのかもし
れない。そのまま1点リードで前半を終了した。                 

永井の先制点に大喜びのスタジアム。 ハーフタイムに三色のデカ旗が出された。

ハーフタイム、知り合いと会い、旧交を暖める。しかし、最悪な体調が災いし、ゆっく
り話す暇もなくトイレを往復する。気分は最高なのに体調は最悪な状態が続いていた。
まったく何てざまだ。トイレの中で後半開始のホイッスルを聞く羽目になってしまった
。後半はセパハンのFWにカリミが出ていた。小さいけど嫌な選手だ。この選手とナビ
ドキアのホットラインが怖い。ゴール前からゴール前への展開が増えて、応援の声出し
を忘れることもあった。まさに手に汗握る展開が続いていた。           

ジリジリした展開が続いていた後半26分のことだった。CKのこぼれ玉を闘莉王が中
にクロス。それをワシントンが落とし、走り込んだ永井がシュート!キーパーが弾いた
ボールがゴール前に上がる。そこに走り込んだ阿部が全身の力でジャンプして頭に当て
たボールがネットに吸い込まれる。一連の流れがまるでスローモーションのように目の
前で展開した。キーパーが悲しそうに両手を付いた瞬間、スタジアムが大歓声に包まれ
た。「やったあ!阿部え〜〜」「二点目だあ〜〜」「阿部〜〜よくやった!!」誰彼な
くハイタッチして飛び跳ねる。勝利を確信する2点目。何よりボロボロになっていた阿
部が得点した事が嬉しい。神様が祝福してくれているかのようだ。         

阿部の2点目が決まり大喜びのサポーター。 試合終了のホイッスルが鳴った。チャンピオンになった。

あきらかにセパハンの選手は気落ちしたようだ。果敢に攻めては来るが跳ね返すレッズ
に余裕が出てきた。2点あれば勝ちは間違いない。そこからは勝利へのカウントダウン
となっていたような気がする。そして、レッズがアジアチャンピオンになる瞬間がやっ
てきた。主審の両手が上がり、試合終了のホイッスルが鳴った。選手や関係者がピッチ
に飛び出す。ゴール裏は浦和カンペオンが声高らかに歌われている。そうなんだ、やっ
と歌の内容に応えるチームになったんだ。我々はアジアチャンピオンなんだ。チャンピ
オンを夢見て戦ってきた選手とサポーターがやっと胸を張って歌える歌になったのだ。
「浦和レッズカンペオ〜ン、浦和レッズカンペオ〜ン、浦和レッドダイヤモンズ、世界
に輝け、浦和レッズ!」声を限りに歌いながら目頭が熱くなった。         

試合終了で整列する両軍選手達に大きな拍手が送られた。 旗が振られて「浦和カンペオン」の合唱が続く。

オジェックが囲まれ祝福されている。みんな笑っている。表彰台の準備が行われている
。見慣れない青い台が組み上がっていく。そして表彰式が始まる。浦和レッズがフェア
プレイ賞を受賞した。これも嬉しい受賞だ。ポンテが得点王を受賞。これには???と
いう思いもあったが、まあファイナリストの中から選ぶという基準なのだろう。永井が
MVPを受賞。これもこの試合に限ってというものなのだろう。素直に喜びたい。セパ
ハンの選手が表彰台に登る。惜しみない拍手が送られる。そしてレッズの選手が表彰台
へ向かう。キャプテンマークの啓太がトップだ。どの顔も笑っている。アジアチャンピ
オンの表彰だ。啓太がトロフィーを両手に持ち、合図と共に掲げる。スタジアム全体が
一緒に歓声で合わせる。銀色の吹雪が舞い上がる。まるでヨーロッパでの表彰式のよう
だ。小野が山田が合流する。みんなでつかみ取ったチャンピオンの座だ。      

表彰式で再び星のビジュアルが出された。 表彰台に登る浦和レッズの選手達。


銀色の吹雪とともに栄光のチャンピオン誕生だ。 場内を一周してゴール裏に挨拶に来た選手達を讃える。

選手の場内一周が始まった。みんなで「威風堂々」を歌いながら選手を迎える。スタン
ドには再び巨大な星が浮かび上がる。まぎれもないアジア頂点の星。グループリーグか
ら一度も負けなかった。堂々たる王者の凱旋報告だ。おびただしい数のイノシシのよう
に動き回るカメラマンの群れを引き連れて、選手が目の前に来た。声を合わせて誇らし
く両手を天に突き上げる。「よくやった!」阿部がアジアキングと書かれたゲート旗を
掲げてはしゃいでいる。気持ちはよく分かる。本当によく戦ってくれたと思う。選手の
精神力が誇らしい。ワシントンがゴール裏に登ってきた。サポーターの真ん中で雄叫び
を上げる。今年はいろいろあったけど、最後が良ければそれでいい。そして勝利の歌が
歌われた。We are Diamondsは声が時々裏返って困った。この歌を歌うことこそが今
日の目的だった。                               

メインスタンドでも勝利の挨拶。 勝利の歌「We are Diamonds」を高らかに歌う。

浦和レッズはアジアナンバーワンのチームになったのだ。             


11月14日(水) AFCチャンピオンズリーグ 決勝 第2戦            
浦和 2 - 0 セパハン (19:25/埼玉/59,034人)               
得点者:22' 永井雄一郎(浦和)、71' 阿部勇樹(浦和)             


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