インドネシアまで行って引き分け


ACL一次リーグアウェー最終戦は追いつかれての引き分け。疲れた・・。


5月9日(水)ソロ・マナハン・スタジアム:AFCアジアチャンピオンズリーグ
●予選リーグ:グループE:プルシク・ケディリ(インドネシア)     


5月8日朝9時成田に着く。第2ターミナルビルのガルーダインドネシア航空のカウン
ターは多くの赤い人でごった返していた。クルヴァのメンバーもこの便らしく、大勢の
見たことある顔が並んで列を作っていた。チェックインして搭乗口に進むと、上海で一
緒になった川端さんと会った。握手して挨拶する。また一緒に戦えると思ってはいたが
、同じ飛行機になるとは思わなかったので嬉しかった。              

成田からこのガルーダインドネシア航空の飛行機で飛ぶ。 バリ島のデンパサール空港に着いたのは5時過ぎだった。

ガルーダ航空881便は定刻よりやや遅れて飛び立った。行く先はバリ島のデンパサール
。到着まで約8時間の空の旅。デンパサールに着いたのは夕方の5時過ぎだった。時差
の計算が煩わしいので、今後も時間表記はすべて現地時間にしてある。ここで現地ガイ
ドのワルジャナさんがホテルまで案内してくれた。インドネシア旅行社のツアーメンバ
ーは7人プラス明日合流する2人を加えた9人だということが分かった。バリ島での宿
泊は空港近くにある「Harris Hotel」だった。6人がここに泊まる。うち3人はグルー
プなので、残った私と白石さん、伊藤さんが夜の食事を共にすることになった。   

デンパサール空港。ムッとした熱気と湿気がまとわりつく。 ホテルに到着し、すぐにチェックイン。

タクシーでクタの街に出て、SOGOの前のレストランに入る。ナシゴレン、ミゴレン、
サテ、バンブーサテとインドネシア料理を楽しんだ。料理はみな美味しくて、高い値段
も納得できるものだった。この店は外国人向けのレストランのようで、地元の人は入っ
ていなかった。食事後、歩いてホテルまで帰る。小さな屋台が並ぶ場所にもぐり込み、
椰子の実ジュースを飲む。お兄さんが切りやすい若い実を選んだため、味も若かった。
ホテルに帰ってコンビニで買ったビンタン(缶ビール)を飲んで早々に寝る。明日の朝
が早いのだ。そういえば、ホテルに歯ブラシが無かった。             

インドネシアでビールと言えばこの「ビンタン」 料理はどれも美味しかった。写真はミゴレン。


朝6時に起こされてチェックアウト。まだ外は暗い。 朝早くから開けてもらった食堂。係の方、ありがとう。

朝6時にモーニングコールで起こされた。すぐに着替えてフロントでチェックアウトす
る。外はまだ暗い。やっと夜が明けてきたところだ。30分後に迎えの車が来るので、
眠い目をこすりながら朝食を食べる。ここの朝食はなかなか美味しかった。こんな慌た
だしい滞在でなくてゆっくり泊まりたいものだ。車は定刻に迎えに来た。そのまま空港
へ向かう。デンパサールから国内便でジョグジャへと向かうのだ。飛行時間は約1時間
だが時差が1時間あるので表示だけ見ると飛行時間10分に見える。変な感じ。   

ジョグジャ・カルタへ向かう国内線。歩いてタラップへ。 国内線の機内。赤い人でいっぱいだった。

ジョグジャ・カルタに8時10分に到着。ここからの行動はミニバスとなる。ガイドの
ミントさんは日本語が堪能でいろいろ説明してくれた。スタジアムのあるソロという街
までの間に世界遺産の「プランバナン遺跡」を見学する。ミントさんが一生懸命説明し
てくれるのは有り難いのだが、とにかく暑い。日陰も少なく、持っていた雨傘を差して
日射しを避けるのが精一杯だった。1時間半ほど遺跡巡りをして、ミントさんが市内の
遺跡に行こうとするのをみんなで説得してソロに向かってもらうことにした。試合前に
体力を消耗するのを避けたかったのだ。ミントさんは物足りなそうな顔をしていた。 

世界遺産「プラン・バナン」見事な石塔寺院。 遺跡入り口の石像。とにかく暑かった。


地震で崩れた部分が、費用不足で修復が遅れている。 やっとソロに到着。無数のバイクを縫って走るバス。

ソロのスタジアムには1時前に着いた。すでに多くのバスが到着していて、すでに開門
されているようだったので、我々も急いで中に入った。たくさんの赤い人がスタジアム
を彩るダンマク貼りに奔走していた。いつもの事ながら頭が下がる。席はメインの右側
で屋根があるので日射しを避けられるのが良かった。ペットボトル2本の水ではとても
足りそうもないが、これなら熱中症にならずに済みそうだ。私も持参の旗を出して振り
始めた。Lフラッグは柄が軽いのでずっと振っていても疲れない。まだ2時間くらいあ
るのだが、とにかく振り続けようと思っていた。                 

ソロのマナハンスタジアム。駒場くらいの規模か。 すでに開場されていて赤い人がいっぱいだった。

隣に1列になって我々を監視している警備員が珍しそうにこちらを見ている。その中の
一人がペットボトルの飲み物を勧めるのでビールだと思って飲んだら、なんと中身はき
つい酒だった。吹き出しそうになるのをこらえて真っ赤になって飲み込む。そのリアク
ションに警備員が大喝采。私はお礼にマッチデーカードを上げた。これはみんなの取り
合いになった。旗を振りながら記念写真を撮ったりと、試合前はなごやかなムードだっ
た。しかし、徐々に緊張感が高まってきて、角田さんの声で空気が一変した。警備員も
本来の任務を思い出したようにヘルメットをかぶり始めた。            

一列に並んだ警備員。何だかすごくフレンドリー。 隊長と一緒に写真を撮る。頭にヘルメットを乗せられた。


ダンマクを貼る赤い人たち。まるでとび職人のよう。 対面のバックスタンドに広げられたインドネシア国旗。

選手がピッチに出てきた。力いっぱい旗を振って叫ぶ。全身から汗が噴き出してくる。
この暑さの中で90分間走り続ける選手の疲労はどんなものなのだろうか。1時間半旗
を振るだけでこれだけの汗が出るのだから、さぞ大変なものだろうと思う。今日は負け
る事の許されない戦いで、我々もそのつもりで臨んでいる。暑さで疲れる選手に少しで
も力を与えることが我々サポーターの役目だ。今日はどうなってもいいから90分間声
を出して跳ねようと決めていた。ここまで来て悔いを残したくない。        

角田さんの声がかかり、応援が始まった。 アップ中の選手たち。心なし身体が重そうに見える。

スタメン発表はよく聞き取れず、何だか分からなかった。スタジアムにオーロラビジョ
ンは無く、壊れた電光掲示板だけで、時間すら分からない状況だ。そんな中でいよいよ
負けられない戦いが始まる。威風堂々の歌から応援が始まった。マフラーを掲げて声を
限りに歌う。最前列で発煙筒が何本も焚かれた。「ここではOKなのか??」しかし、昼
間なので煙ばかりで迫力はない。ウオーリアの時に発煙筒の煙が喉に入り、むせてしま
った。発煙筒はやはり夜が似合う。                       

背後に「浦和」のビッグフラッグ。ヒモで吊ってある。 発煙筒が焚かれた。全力応援の始まりだ。

キックオフの笛が鳴り、選手がピッチを走り出す。伸二の動きがいい。今日は気合いが
入っているようだ。ピッチが悪いようで何人もが足を滑らしている。徐々にケディリが
押してきた。悪いピッチも慣れたものなのだろう。思えばここでシドニーも上海も負け
ているのだから、我々も苦戦はするだろう。その原因はこの暑さとピッチなのだろう。
ポゼッションはケディリが上回っている。レッズを何度となく押し込み、CKからゴール
を狙うが点にはつながらない。思った以上にケディリが強い。レッズもポンテを中心と
した攻めが少ないけれども強力に相手ゴールを襲う。               

試合開始10分、ポンテがPAに飛び込んでDFに倒された。これがPKの判定。見ていて
も、一瞬シミュレーションかと思ったくらいの際どいプレーだった。どちらに手が上が
ったのか分からない微妙な判定。やはりアジアの主審は危ない。小野がきっちりとPKを
決めて先制点。アウェーでレッズがリードした。しかし審判の状況から、このまま終わ
るとも思えなかったが、22分に今度はネネがファールして今度は相手にPKが与えられ
てしまう。「やはりなあ・・」これで振り出しに戻ってしまった。まあ、もらったよう
な点だったから、ここから仕切直しだ。と思い直したのだが相手の勢いが止まらなくな
った。30分には鮮やかなゴールが飛び出し、リードされる展開になってしまった。ケ
ディリは強い。このミドルは都築もノーチャンスだった。認めるしかない。     

伸二のPKで先制したが・・・ 1点ビハインドで後半の開始となった。

そのままハーフタイムに突入するという、何ともスッキリしない展開になってしまう。
バックスタンドが大勢の観客で埋まっている。ケディリのサポというよりは、近在のサ
ッカーファンが集結したという感じ。双眼鏡で見るとほぼ大半の人が何かのユニフォー
ムを来ているのだが、まったくバラバラで、まとまったサポーターという印象は無い。
しかし、間違いなくみんなインドネシアのチームを応援している訳で、スタジアム全体
が敵だという事は間違いない。バックスタンドに掲げられた巨大なインドネシア国旗が
それを表していた。                              

相馬に変わり岡野が入って、後半開始の笛が鳴った。選手の動きが良くなってきた。特
に岡野の右サイドが活発にチャンスを作る。岡野、永井、ポンテの絡みが連動してチャ
ンスを作るようになってきた。伸二も積極的にボールに絡んでチャンスを作る。そして
その右から同点弾が生まれる。永井のクロスをポンテが技ありのシュートで同点ゴール
を決めた。数少ないレッズサポが狂喜乱舞し、全体はシーンと静まりかえっていたよう
だ。私の後ろには何故か知らないがインドネシア人でレッズを応援してくれる人たちが
いて、その人たちとハイタッチを繰り返した。                  

ポンテの同点弾。嬉しかった。 阿倍の逆転弾でサポーターは爆発した。

その10分後、今度はCKから逆転ゴールが生まれた。ポンテが蹴ったボールがゴール前
に上がり、飛び込んだ阿部が頭でジャストミートしたボールがネットに突き刺さった。
もう狂喜乱舞。誰彼と無くハイタッチし、雄叫びを上げる。「逆転だあ〜〜〜!!」 
「阿部ぇ〜〜〜良くやったぁ!!」「これで勝てる!!」応援のボルテージは一気に加
速していった。声を限りに歌い、跳ねる。もうこのままいくしかない。そして、後半も
残り5分くらいになったのだろうか(スタジアムに時計が無いので分からなかったが、
いつもの勝ち試合のようにP・O・Uが出た。これが最後だ。このまま行ってくれ!そん
な願いを込めて歌い出した直後に悪夢のような失点。真ん中でなぜかフリーになった相
手に同点ゴールを決められてしまった。                     

同点になった瞬間、両側の席から我々に向けてペットボトルが何個も投げ込まれた。も
ちろん水が入ったものだ。インドネシアのサポの勝ち誇ったような雄叫びと地鳴りのよ
うな歓声がスタジアムを包む。我々はそんなものにはお構いなしに跳ね続ける。「何と
かもう1点取ってくれ!」祈るような思いで歌い続けたが、ロスタイムも短く、タイム
アップの笛が鳴ってしまった。その瞬間、ガックリと膝から床に崩れ落ちた。何という
ことか・・・また勝ちきれなかった。あの一瞬だけ集中が切れた。何とも悔しい失点。

腕と額から汗が流れ落ちる。50過ぎの体にこの結末は過酷だ。膝に手を当てて立ち上
がると、選手が目の前に来て挨拶をしていた。みんな疲れ切った顔だ。この暑さの中で
、連戦の疲れもあるだろうに、よく頑張った。コールと拍手で選手を讃えた。負けた訳
ではない。アウェーでの引き分けなら想定範囲だったはずだ。なのに、この悔しさは何
だ。しばらく、呆然とピッチを、人が少なくなっていくスタジアムを見ていた。ケディ
リは思った以上に強かった。                          

悔しい同点で最後のアウェーも終わった。 インドネシアのサポでいっぱいになった出口。しばらく待機。

試合後、何人ものインドネシア人からせがまれて写真を一緒に撮った。警備員も係員も
みんなニコニコ顔で写真を撮っていた。彼らの目には我々がどう映っていたのだろうか
。同点だったので特別なセレモニーも無く、スタジアム内外でお互いを称え合う呼びか
けが行われていた。インドネシアの人はとにかく何でもいいから交換したがる。特にユ
ニフォームとかマフラーの交換希望者が多く、歩いているだけで群がってくる。交換す
るつもりもないので振り払うが、それだけでは交流にならないので、持参したマッチデ
ーカードを配る。みんな取り合いになって大変だった。警察官にガードされた通路をバ
スに向かう。1次リーグ最後のアウェーが終わった。               

バスに乗り込み、ジョグジャ・カルタのホテルに向かう。無数のバイクと競争しながら
バスは暗い道を疾走する。疲れて声も出ず、車内はシーンとしていた。シドニーの結果
を待つまでもなく、これで最終戦決着が決まった訳だ。まあ、当初の予想通りとなった
訳で、あわてる事でもない。とにかく、今日の試合でもう一点を取らせるサポートが出
来たかのかどうか。また、なぜ一瞬の集中の切れを無くすことが出来なかったのか、を
頭の中で繰り返し自問自答していた。                      


●AFCアジアチャンピオンズリーグ 予選リーグ グループE           
5月9日 / 17:30 / ソロ(インドネシア)/7,000人               
ケディリ 3-3 浦和                              
得点:10' 小野伸二(浦和)、22' ジェラードゴンサレス(ケディリ)、30' ジェラー
ドゴンサレス(ケディリ)、51' ポンテ(浦和)、62' 阿部勇樹(浦和)、84' ブディ


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