ACLアウェー上海申花戦、悔しいドロー


動き出しの悪さ。パスミスの連続。浦和らしさは一体どこへ?


4月25日(水)上海浦東源深体育場:AFCアジアチャンピオンズリーグ
●予選リーグ:グループE:上海申花(シャンハイ・シンファ)   

4月24日(火)午後2時20分成田空港に着いた。これから上海に向かうためだ。カ
ウンターでチケットを受け取り、中国東方航空にチェックインする。たまたま一緒にな
ったK端さんとここから同行することになった。出発までビールを飲みながらレッズの
話で盛り上がる。考える傾向がとても似ていて、思わずうなづいたり相づちを打ってし
まう。旅は道連れ、得難い人と同行できるようで幸先が良い。午後5時、飛行機は定刻
に飛び立った。機内でも楽しい会話が続き、時間があっという間に過ぎていった。  

MU522便の機内は赤い人でいっぱいだった。 中国東方航空の機内食。なかなか美味しい。

7時、上海空港に到着。大きい空港だ。今回はセリエのツアーで来たのだが、この時に
初めて全体像が分かった。42名という大所帯で、大型バスでの移動となった。様々な
人がいて、今さらのようにレッズサポの層の広さを感じた。70歳を超えていると思わ
れるおばあちゃんがいるのには驚いた。ガイドの王さんが上海の説明をあれこれしてく
れる。ホテルまでの時間も楽しかった。初めて来たが、上海は本当に大都会だ。考えて
いた印象よりも遙かに近代的で規模の大きな都会だ。明日のアウェーを考えると少々緊
張する。ホテルには9時に着いた。                       

同室になったK原さんとK端さんの3人で夕食に出かけたが、店が閉まってしまい再度
ホテルに戻り、王さんに紹介してもらった南京西路の「ビー・フン・ター」というレス
トランに行く。タクシーで行ったのだが、これが心臓に良くなかった。何というか、韓
国以上に交通状況はデンジャラスで、緊張の連続だった。道路は自転車やバイクが車と
一緒に走り、車線変更、割り込み、横断何でもあり。タクシーは常にパッシングしなが
らクラクションを鳴らせ続けて走る。急ブレーキもたびたびで、その度に心臓がドキド
キした。ジェットコースターに乗っているようなのだ。やっと着いたお店は観光客用み
たいで、外人が大勢いた。まあ、我々も外人なのだが。              

南京西路の「ビー・フン・ター」外人用のレストランと見た。 K端さんとK原さん。私もKで、3K軍団。料理の撮影中。

料理は美味しかった。それに安かった。特にアヒルアゴ肉の香辛揚げが旨かった。五目
チャーハン絶品だった。上海は料理が楽しめそうだ。ビールはバドワイザーとチンタオ
、ギネスを飲んだ。メニューの漢字を読むのが楽しい。日本に無い漢字が多いのでここ
にはタイプ出来ないものも多いが、何だか暴走族の当て字みたいで面白い。「百威碑酒
・バドワイザー」「喜力碑酒・ハイネケン」「七喜・セブンアップ」「百事可楽・ペプ
シコーラ」「雪碧・スプライト」「三得利・サントリー」「萱徳基・ケンタッキー」「
依云・エビアン」などなど。店を出た時の物乞いには辟易したが面白い夜だった。  

ツアーの宿「南部大酒店」酒屋ではなくちゃんとしたホテル。 外の景色。黄砂のせいか街全体が霞んでいる。

25日朝、車のクラクションの音で目が覚めた。部屋は6階だったのだが、外の道では
朝のラッシュが始まっていて、騒々しいクラクションが鳴り響いていた。見下ろすとお
びただしい数の自転車が車と一緒に走っている。日本ではまず見られない風景だ。天気
は晴れているので試合に問題は無さそうだ。シャワーを浴びて食堂へ行く。レプリカを
着た人も多く、大部分がレッズサポだと思われた。食事はバイキングだったが、味は何
とも言えないものだった。ハッキリ言えば不味い。上海まで来てこれを食べる必要も無
いだろうという味。ツアー代金はかなりなものだが、ホテルの質とか食事の質とかで利
益を出しているのだろう。まあ、我々も観戦だけが目的なので何も言えない。    

9時半に集合して市内観光へ向かう。すっかり観光客コースに入れられている。まるで
アウェーの応援戦力を削ぐための戦略かと思われるほど歩かされた。ヨエンという4百
年前の庭園なのだが、日本人の感覚とは微妙に違う美意識に当惑しながら歩き回った。
時間はたっぷり使ったが特に書くことは無い。                  

ヨエンへの通路。両側はお土産やさん。400年前の建物。 ヨエンの建物。中国400年の歴史を感じる庭園。


ヨエンで集合写真。こんな時でも旗が出る赤サポ。周囲の目が集まるがお構いなし。

昼は南京路で自由行動。3人でデパートの中のレストランに入る。ここは大当たりだっ
た。海鮮ビーフン、生春巻き、エビ水餃子、青菜と豚肉炒め、全部が絶品。大満足のお
昼になった。上海料理は1品の量が多いので3人とか4人で行かないと食べきれない。
色々楽しむには大勢で行くに限る。このお店は是非もう一度行ってみたい。     
昼食後に寄ったサッカーグッズショップは時間の無駄だった。見る物無いし、もちろん
買う物なんて何もない。まあ、ツアーの時間つぶしだったのだろう。        

南京路の繁華街。ハッキリ言って新宿よりにぎやか。 絶品料理のレストラン。名前は覚えていない。また行きたい。

スタジアムに到着し、気合いが入ってくる。入り口周辺には赤い人がすでに大勢いた。
さっそくフラッグを出して掲げる。地元のテレビ局が「ニイハオ!」と近寄ってきてカ
メラを回すので「ニイハオ!」と返事をして手を振る。上海申花のサポが何人かいて、
ボール蹴りをしている。赤い人はどんどん増え、ごった返してきた。制服の保安員が並
んで、威嚇するように立入禁止ラインを作る。特に緊張感もなく、我々は普通にアウェ
ー戦前の時間を楽しんでいた。記念写真を撮ったり、知り合いと挨拶を交わしたり、ト
イレに行ったり。そういえば、トイレがスタジアム内にあり、一番奥だけ解放していた
ので、トイレに行く人はノーチェックでスタジアムに入れた。心配していていた入場の
チェックなど何も無し。本当に出入り自由状態だった。              

スタジアムに降り立ったツアー参加者。気合いが入る。 ACLの案内看板。スタジアムコンコースに貼ってあった。


ここでも集合写真を撮る。みんな気合いが入ってきた。


ぞくぞくと赤い人が集まってきた。 スタジアムの中に入ってピッチを眺めた。

混雑して来たときだった。角田さんの「入るぞ!」の声とともに入場開始。チケットを
もぎるだけで、荷物チェック無し。予定の開門時間よりもずいぶん早い。チケットは全
席指定で100元(1500円)前から三列目で見やすい席だったが、あまりに応援席
中央に近かったので、試合開始頃には移動するようだろうなと思っていた。持ち込み禁
止だったはずのペットボトルもノーチェックで、大勢の人が持っていた。目の前にムッ
ツリとした保安員が立っているのが気になっていたが、自分に掛かりそうになった大旗
を両手でまとめてくれたりと世話焼きの一面もみせてくれた。「いい人じゃん」   

これが今回のチケット1500円なり。 ダンマクも許可が下りて良かった良かった。

ダンマクも許可が出て、試合前にダンマク貼りの動きが忙しい。いつもの浦和のゴール
裏になってきた。選手が出てきた。拍手とコールで迎える。フラッグを振り、大きな声
で叫ぶ。大旗が席の近くに来たので自主的に移動する。中心部ではおじさんの体力が持
たないので端の手すり付近に移動して旗を振る。手すりの中に入りたそうにしている人
達に呼びかけて中に招き入れる。どうせなら一緒にやった方が楽しい。ピッチでは選手
のアップも終わり、試合開始を待つだけになっていた。              

じっとその時を待っているサポーター。 申花サポも集まってきた。

コールは「威風堂々」から始まり、ウオーリア、浦和レッズコールへと続く。申花の選
手、サポ、グランドの関係者、公安、一般入場者、カメラマン・・全ての視線がこちら
に向かっている。気持ちが高ぶってくる。コールが屋根に反響して響く。手を合わせて
いるので写真が撮れない。初めての人はウオーリアに合わせられなくて苦労している。
選手が入場してきて、声はより高くなる。                    

キックオフの笛が鳴った。応援のボルテージはどんどん上がっていくが、選手の動きが
なんだか悪い。いつものようにボールを持たされている展開。上海は前回よりも前でプ
レスを仕掛けてくる。パスカットされて危ない場面が出る。レッズはワシントンにボー
ルが納まらずフィニッシュに持ち込めない。ワシントン頼みの攻撃だからワシントンが
押さえられると何も出来ない。とにかく攻めに入った時に前線に人がいないのだから守
る方は簡単だったと思う。得点の匂いがしないまま、ジリジリするような展開が続く。
横パスをカットされてのカウンターが多い。困った展開だ。ポンテもしっかりマークさ
れて自由に動けない。シュート数は申花の方が多い。やはり、ボールを持たされている
感じがする。                                 

何度かヒヤリとする場面もあったが、相手のミスに助けられ、0−0でハーフタイムに
なった。カウンターで攻める相手、坪井の俊足に何度も助けられた。前半唯一のチャン
スだったゴール前のフリーキックもワシントンのしょぼいシュートで終わってしまった
し、阿部のクロスにも足が届かなかった。ワシントンは重傷だ。あのフリーキックは阿
部に蹴らせて欲しかったなあ・・。もう少し詳しく書きたいのだが、他に書くほどの内
容も無かった。外に出てコールでカラカラになった喉を湿らすためにコーラを買って飲
む。一杯5元(75円)、ビールは無かったようだ。               

後半開始前、出てくる選手に浦和レッズコールを送る。上海申花のサポは最初二つに分
かれて応援していたのだが、後半から一つになって応援してきた。声が揃ったので大き
くなり、こちらへの対抗心が増してきたようだ。後半5分、山田が倒されたFKをポン
テが蹴り、飛び込んだ阿部が合わせた。ジャストミートしたが、ボールは無情にもバー
を叩いて得点ならず。決定的なシュートだったのだが・・・。           

後半30分、山田が二枚目のイエローで退場になってしまった。何が起こったのかまっ
たく分からず、ひたすら主審にブーイングをする。いくらアウェーの洗礼などと言って
もひどすぎる。普通に考えてありえないカードだ。糞な主審には徹底的なブーイングし
かない。山田退場。キャプテンマークを渡されたポンテが長谷部に渡そうとしたが、長
谷部は怒ったようにそれを拒否。結局キャプテンマークは坪井に渡り、事なきを得たが
長谷部は激しく何かに向かって怒っていた。その後の長谷部の動きは凄まじかった。相
手へのチェックは激しさを増し、どこまでも追い、最後は体を投げ出してシュートを放
つ。明らかに不可解な判定に対して長谷部は怒っていた。久しぶりに鳥肌が立つような
プレイを見た。怒りのエネルギーが長谷部を突き動かしていたのだろう。平川のクロス
に飛び込んだヘディングシュートは惜しくもGK正面だった。悔しがる長谷部に大きな
コールをした。サポーターと選手の気持ちは一緒だった。             

ワシントンと岡野の交代。これは遅すぎた感もある。今日のワシントンは本当にダメだ
った。手に巻いたテーピングをむしり取り、ピッチに叩き付ける仕草は自分への怒りと
思いたい。交代された事へのぶち切れだったらそれは違う。残り10分。声が出なくな
ってきた。プライド・オブ・ウラワが出た。サポも選手も最後の頑張りどころだ。出な
い声を張り上げる。オジェックの指示は「守れ」なのか?都築がボールを持つ時間が長
くなってヒヤヒヤする。岡野が走り、長谷部がゴールを狙う。しかし、無情にもタイム
アップの笛が鳴り、糞主審の両手が上がった。                  

試合終了の瞬間。選手は負けたように肩を落としている。 挨拶に来た選手。疲労の色が濃い。

スコアレスドロー。退場者が出たのに守りきった、と取ればいいのか、攻めきれなかっ
たと取ればいいのか・・・微妙な空気がサポーターを包む。私は呆然と椅子に腰を落と
した。1点が取れなかった。それだけだ。選手が挨拶に来たが、みんなまるで負けたか
のような姿だった。対照的に申花の選手は両手を繋いでサポに挨拶して、サポもまるで
勝ったかのように大歓声を上げている。正直なところ悔しい。レッズコールで選手を送
る。スタンドで後片づけをしていたら申花サポから「ウラワ・ウラワ」のコールが起き
た。我々も拍手でそれに応えた。濃密な時間を共有した者だけが分かる交流。日中友好
などという題目は関係ない。                          

1点が遠かった。サポーターも微妙な空気の中にいた。

スタジアムの外は制服の保安員でいっぱいだった。これでは申花サポとの交流も出来な
い。後の予定もあるので早々にバスに戻る。K端さんが汗びっしょりで帰ってきた。席
に着くなりポツリと「1点を取らせてやることが出来なかった・・」と絞り出すように
つぶやいた。精根尽き果てた正しいサポーターの姿がそこにあった。        

バスへ、地下鉄へ、ホテルへ・・足取りが重い。 申花のサポが発煙筒を焚いていた。

長い時間待たされてやっとバスが動き始めた。スタジアム正面の道路に向かう時反対側
車線前方から発煙筒の炎が見えた。上海申花サポの一団が歩いてくるところだった。バ
スの中で手を振ると向こうも手を振っている。「ツァイチェンまた来年・・」次に会う
時はケチョンケチョンにしてやる。正門から駅に向かって歩くボーイズの面々が見える
。彼らもまた悔しい思いで胸がいっぱいだろう。次はインドネシアのアウェーだ。次こ
そスッキリと勝ちたいものだ。                         

その後、ツアーなのでいろいろあったが、長くなるので省略。上海は大都会で、食べ物
は最高だった。(ホテル除く)                         


●予選リーグ グループE                           
4月25日 / 17:00(日本時間) / 上海 / 6,000人 上海 0-0 浦和         


●サッカーページに戻る