ACLアウェー・シドニー戦


アジアチャンピオンへの戦いは初めてアウェーの地へと向かった。


3月21日(水)オージースタジアム:AFCアジアチャンピオンズリーグ●予選リーグ
グループE:シドニーFC                           

3月20日(火)朝8時30分、成田に着いた。いよいよここから初の海外での公式戦
の応援に旅立つことになる。1泊4日という強行スケジュールでのシドニー戦の応援ツ
アーだ。指定されたカウンターでチケットを受け取り、シンガポールエアラインのチェ
ックインカウンターへ向かう。成田からシンガポール空港に飛び、そこで乗り換えてシ
ドニーへと向かう。時差があるので正確な時間は計算できないのだが、都合19時間も
のフライトになる計算だ。1泊ということなので、トランクも持たず、いつもサイスタ
に行く格好でザック一つ担いだ海外旅行だ。                   

シンガポール航空637便は定刻で飛び立った。機内で隣り合わせた24歳のスリランカ
人青年Mrイランと話をしているうちに親しくなり、次回日本に来たときはサイスタで
レッズの試合を観戦しようという事になった。彼は正月(スリランカでは4月)に家族
が揃う為に帰国するそうで、シンガポールで乗り換えて4時間かかるのだそうだ。私が
シドニーへ1泊でサッカーの応援に行くことを話したら信じられないと驚いていた。 

シンガポールエアライン。この飛行機に乗ってシドニーへ。 隣り合ったミスター・イラン。スリランカ人のサポ誕生近し。

11時半に成田を発ち、シンガポールに着いたのが午後7時。ここで2時間の乗り換え
時間がある。空港内のサッカーカフェに入りビールを飲んで時間を過ごす。店内のテレ
ビで今週のイングランドプレミアリーグのダイジェストをやっているのを見ていた。そ
のうちにジャズの生演奏が始まり、思いの外楽しい時間が過ごせた。テレビを見ながら
パクチソンの得点などに喜んでいたら、突然イギリス人のおじさんが話しかけてきて、
ひとしきりマンチェスターUの事を叫ぶように話してくれた。サッカー好きは何処に行
っても通じ合うものがある。握手をした大きな手が世界を感じさせてくれた。    

シンガポール空港内のサッカーバーカウンター。椅子がボール。 カウンターでビールを飲みながらプレミアダイジェストを観戦中。

シンガポール航空221便でシドニーへ向けて出発。この便はまったく日本語の案内は無
い。DVDの字幕も英語と中国語だけ。眠れなかったので機内で3本も映画を見てしまっ
た。日本の映画は「涙そうそう」をやっていた。約12時間のフライトが終わってシド
ニー空港に到着したのはシドニー時間の朝7時半。入国手続きを終えて出口に来たのだ
が、そこにいるはずの現地担当者がいない。今回はセリエフットボールネットのツアー
で申し込んだのだが、これには困り果ててしまった。               

近くにいたレッズ戦を案内するHISや近畿日本ツーリストの担当者に聞き回り、現地事
務所に電話してもらったのだが早朝のため連絡が付かない。近畿日本ツーリストの担当
者のお陰でやっと担当者と連絡が取れた時は2時間が経過していた。そして同時に今回
のツアー参加者が二人だったという事も分かった。もう一人の参加者は眞城(さなぎ)
さんという30代の人で、私と同じように担当者を捜して歩き回っていたのだ。ツアー
会社の手落ちだとは言え、この場に来ての担当者不在は不安になるものだった。   

シドニー空港でやっとセリエ担当者に会えて安心した眞城さん。 私もひと安心。それにしても暑い。朝だというのに30度くらい。

やっとホテルに到着したがチェックインは2時からということで、市内観光に向かう。
市内観光といっても、着替えていないし、暑いしで公園でのんびりするだけだった。市
内には赤いTシャツやレプリカを着たレッズサポが同じようにのんびり歩き回っていた
。中には眠気に負けて公園で寝ている人もいた。まあ、何時間も寝ないで来ているのだ
から仕方ないことだ。トイレを探して歩くが、有料でコインが無かったので入れず、売
店で水を買ってコインを作ってトイレを利用する。50セント硬貨で利用できるように
なっている。                                 

公園でチェスをやっていた。ベンチでぼんやりと観戦中。 この公園には樹齢百年を超える木がたくさんあって涼しかった。

2時にチェックインし、すぐにシャワーを浴びてベッドに倒れ込む。泥のようにぐっす
り寝て、奇跡的に5時に目覚める。集合時間の30分前だった。すぐにむくんだ顔を洗
い歯を磨いて頭をスッキリさせ、レプリカに着替えてロビーへと急ぐ。セリエツアー参
加者が17人揃ってマイクロバスでスタジアムへ向かう。添乗員の人が現地情報を色々
教えてくれた。シドニーFCは全会員に参戦を呼びかけているという。スタジアムを水
色にそめようというキャンペーンをしているらしい。オーストラリアはラグビーとクリ
ケットがメジャースポーツで、サッカーはまだまだ発展途上らしい。今回のACLも新聞
やテレビではあまり取り上げられていないとのこと。この辺は野球一辺倒の日本と近い
ものがあるようだ。                              

試合のチラシが手に入ったが、選手の名前を見ても分からない。 駐車場からスタジアムに歩く。赤い人が集まってきた。

駐車場から歩いてスタジアムに向かう。前方に大きな赤い人の群れが見える。大旗を振
りながら歩く集団はセントラル駅から行進をしてきた人達の群れらしい。これが本隊と
いうことになる。正門前に集結したレッズサポのシュプレヒコールが始まった。これに
は周辺にいたシドニーサポも驚いていたようだ。パトカーも巡回しており、緊張感が漂
う空間になっていた。そしていよいよ6時半の開門となった。整然と入場する赤い群れ
。荷物チェックは型どおり、チケットもぎは本来は機械でやっているようだが、今回は
目視でOK!大勢の人を流すことに重点を置いた処置のようだった。         

正門前でシュプレヒコールが始まった。周囲の人が驚いていた。 これだけのサポが日本から来ているのだからすごい。

オージースタジアムは4万2千人が入るスタジアムで全席が指定となっている。席はゴ
ール裏右側の前から4列目。グラウンドレベルから傾斜が少ないため広告看板が邪魔で
立たないとピッチが見えない。まあ、応援が始まればいやでも立たなければならないの
で問題はない。席を確認したところで売店にビールを買いに行く。生ビールが小さめの
カップで約400円。試合前に3杯飲んで勢いを付ける。ゴール裏の右隅からレッズコ
ールが始まった。何ごとかと覗いて見たら、ジャージ姿の選手がすぐ横の通路から出て
きてピッチを通りメインスタンドの方へと歩いていく。ゴール裏からは大きな浦和レッ
ズコールが起き、選手がそれに応えていた。いよいよ戦いが始まる・・・ピッチを歩く
選手の姿を見て、待ちに待った戦いが始まることを実感した。           

Kゲートから整然と入場する。 ビールを買って飲む。ここはバースペースでピッチが見渡せる。


すぐ横でポリスが何やら打ち合わせ。こっちを見るので少々緊張。 貼りきれなかったダンマクはピッチに並べられた。

角田さんの声がかかり席詰めが始まった。全席指定とはいえ、そこは浦和のゴール裏。
いつものアウェーと同じ要領で準備が着々と進められている。開門が遅かったため、横
断幕を貼る場所の確認や調整で担当者が忙しく動いている。手すりに貼った横断幕の撤
去を命じられ、急遽別の場所を探す人。係員に相談して貼る場所を確認する人。初の海
外アウェーということもあり、慎重に作業が進められていく。中央に集まった人達は全
部で何人くらいいるだろうか。2000人くらいという話もあったが、とにかくこれだ
けの人数が飛行機に乗ってオーストラリアまでやって来ているのだからすごい。   

これだけのサポーターが日本からやってきた。 ピッチでは選手の軽快なアップが続いている。

威風堂々の歌から応援が始まった。マフラーを高く掲げて選手に届けと声を出す。今、
闘志を溜めているであろう選手に少しでも力を与えようと声を出す。そして、ウオーリ
アが始まる。浦和レッズオリジナルの応援だ。応援は最初から全力で飛ばしている。さ
あ選手はどうだ。俺たちの思いを受け取ってくれ。祈るように叫ぶ。徐々に声が大きく
通るようになっていく。浦和レッズのアジアへの戦い。アウェーでの戦いが始まった。

試合開始のホイッスルが聞こえない。ゴール裏は応援一色だ。しかし試合が始まった瞬
間から応援は主役ではなく、ピッチの選手が主役だということを思い知らされる。開始
わずか1分。あっという間のシドニーの攻撃だった。あれよあれよという間にボールが
右から左に渡り、スルーパスが出て、最初のシュートがゴールに吸い込まれてしまった
。応援が始まって高ぶっていた気持ちにいきなり冷水をぶっかけられたような気分だっ
た。スタンドは総立ちでシドニーの選手全員が集まって飛び跳ねている。レッズの選手
は何が起きたんだ・・とでもいうように立ちつくしている。都築一人が怒っている。 

いきなり1点のビハインド。日本から遠く離れたアウェーという現実が我々の上にもズ
シンと乗った瞬間だ。今期のレッズを象徴する一瞬のスキ。エアポケットのように集中
が切れる時。そのスキを逃してくれないのがアジアの戦いなんだ。応援は声を限りに続
けられる。声を張り上げ、手を叩き、選手を鼓舞するために必死になる。しかし、選手
の動きが悪い。シドニーの早い攻めを受け止めるのが精一杯という感じだ。ワイドに攻
めて来るシドニーはサイドチェンジも正確で速い。スリーバックの後ろを狙われてそこ
にボールが出され、走り込まれる。前の選手が速いのでネネも坪井も走り比べのような
展開になって厳しい守備が続く。特にネネの側が狙われているようだった。     

そして22分、走り込んだシドニー選手をエリア内で坪井と闘莉王が挟む。ボールを取
ったに見えたのだが、相手が股抜きを仕掛け、坪井の足に引っかかって選手が倒れ、笛
が鳴った。PK・・・。ありえない笛だと思うが、これがアウェーの洗礼なんだろう。エ
リアに入る前に当たっておかなければならないのに、それが出来なかった。PKは成功し
レッズは前半22分に2点のビハインドとなってしまった。つらく重い現実。シドニー
にしてみればプラン通りで最高の立ち上がりだった。               

シドニーのブランコ監督が翌朝の新聞でこう言っていた。             
 "Our plan worked to perfection. we attaced them hard in the first 20  
  minutes but in the end we wern`t quite good enough [to win]"      
明らかにレッズの立ち上がりの悪さを知っていて、そこで勝負をかけていたのだ。相手
の様子を見ながら対処するというような悠長な戦いではアジアを勝ち抜くのは難しい。
死にものぐるいで先取点を取ってから戦い方を考えるように切り替えなければダメだ。

スタメン発表は一人一人写真が出たが、何故か背番号順。 ポンテのゴールが決まってゴール裏は大歓声に包まれた。

しかし、ここから反撃できるのがレッズの強さでもある。30分に山田のクロスをポン
テが素晴らしいシュートをしてアウェー初得点が生まれた。ゴール裏は狂乱状態。誰彼
となくハイタッチを繰り返し、旗が振られる。前半で1点取れたのが大きかった。まだ
いける。大丈夫だ。そんな空気が一気にゴール裏を覆い、テンションが一気に上がった
。ララ浦和が出る。拳を突き上げて叫ぶ。まだまだこれからだ。我々は逆転を信じてい
るぞ、と選手の背中を声と手拍子で押す。負傷のネネに代わりピッチに入った長谷部が
素晴らしい動きで再三好機を演出する。長谷部が入ったことでまるで違うチームになっ
たかのようだった。ホームのシドニーが1点リードしたまま前半を終えたが、後半に期
待を抱かせる試合展開になっていた。                      

ハーフタイムに練習する控え選手に声をかける。彼らもまた共に戦う戦士だ。気合いの
入った練習は1点ビハインドの故か、それともアウェーの為か。岡野や細貝のシュート
が決まる毎にゴール裏から拍手が起きる。試合中も何度かゴール裏の応援風景がオーロ
ラビジョンに流された。その都度、ここがオーストラリアであり、シドニースタジアム
で戦っているのだという事を思い出し、更なるパワーアップになった。ここまで来て、
このまま帰るわけにはいかない。何のために片道20時間、十何万円もかけて来たのか
。勝ち点を取るために来たのだから、残り45分に全てをかけて応援する。     

後半開始からレッズの攻勢が続く。長谷部の動きが効果的で、伸二もそれに連れて良く
なってきた。危ない場面は少なくなり、レッズのチャンスが増えてきた。そして、後半
10分のことだった。クロスだったかシュートだったか目の前のゴールにボールが来た
のをGKがキャッチしたかに見えたのだがボールがわずかにこぼれた。そこにいた永井
が爪先でちょんと蹴ったボールはゴールにコロコロと転がり込んだ。「同点だぁ〜〜」
目の前は旗が振られて何も見えない。永井がこっちに向かって手を上げているのがチラ
ッと見えた。もうゴール裏は狂乱状態。「いけるぞ〜」「これからだ!」「逆転できる
ぞ〜〜」「永井〜良くやった!」みんな叫ぶ叫ぶ。                

ここからはゴール裏も一体になって押せ押せ状態。声も手拍子もどんどんヒートアップ
していった。レッズの選手がこっちに向かって走ってくるのが面白いように増えてきた
。永井が左サイドで軽やかに踊るようにシドニーのDFを交わす。歓声とも溜息ともつ
かぬどよめきがスタンドから湧き上がる。伸二のダイレクトシュートがわずかに外れる
。スタンドが悲鳴を上げ、溜息に変わる。後半35分、残り10分を切った。ここで応
援が「Pride of URAWA」になる。最後のスパートだ。声を限りに叫び、選手の背中を
押す。もう1点だ。もぅ1点だ。頑張ってくれ。                 

永井の2点目が決まって、気合いを入れ直すサポーター。 試合終了後、ゴール裏の看板を越えて挨拶に来た選手を迎える。

しかし、時間は淡々と時を刻み、タイムアップの笛が鳴ってしまった。惜しかった。勝
てる試合だった気がする。しかし、前半の出来からすれば負けなくて良かったとも言え
る。選手が広告看板を越えて挨拶に来てくれた。ゲート旗と旗で何も見えない。伸二の
顔がチラッと見えただけだった。でも、選手にはお疲れさまと声をかけた。角田さんの
リードでコールをして、オージースタジアムへ最後の挨拶をする。しばらく呆然と余韻
を楽しむ。終わってしまった・・・勝ち点は1しか取れなかった。試合後、ケディリが
上海に勝ったという情報が入った。これは吉報だ。最終的にサイスタでシドニーとの決
戦になりそうだし、それはそれで願ってもないことだ。              

試合が終わり、後片づけをするサポーター。 スタジアム正門前で記念の写真を撮る。

スタンドのゴミを拾いながら出口へ向かう。行き交うシドニーサポから「グッドゲーム
」「グッドサポーター」という声をかけられる。それぞれに握手を交わす。正門前で写
真を撮ろうとするとシドニーサポから声をかけられる。「グッドゲーム!」「ファンタ
ステックサポーター!」「サンキュー、ナイスゲーム ユートゥー」声を掛け合い、ま
た握手を交わす。あちこちで誰彼と無くそんな交歓がくり広げられていた。シドニーサ
ポはじつにフレンドリーだった。サイスタでまた会いましょうと声をかけた。みんなニ
コニコと手を振ってくれた。引き分けだったからかもしれないが、アウェーの殺伐感は
まったく感じなかった。スタジアムから去りがたかったが、バスを遅らせる訳にはいか
なかったので後ろ髪を引かれながらスタジアムを後にした。            

二人で並んでオージーサポに撮ってもらった。 翌朝のスポーツ新聞。悔しそうな論調が心地よし。

バスでホテルに帰り、そのまま近くのスポーツバーでビールを飲む。XXXXビールが
噂通りに旨かった。ヒリヒリする喉にしみ込んでいくビール。じつに旨かった。2杯飲
んでバーを出る。すでに時間は夜の12時近い。お腹が空いていたので総菜の店でつま
みになりそうな料理とピザを買い、酒屋でワインと缶ビールを買ってホテルの部屋に帰
り、再度眞城さんと二次会。今日一日を振り返り、思い出しながらいろいろ話した。寝
不足の体にアルコールが入り、興奮しているのだが眠気に勝てず、1時前には先にダウ
ンしてしまった。翌朝、日が高くなるまでぐっすりと寝てしまった。        

9時に起きてシャワーを浴び、荷物の整理をして11時にチェックアウト。眞城さんと
タクシーでオペラハウスへ行く。わずかな時間だが、シドニーの観光スポットを見て回
ることにした。オペラハウスからシドニーベイ周辺をぶらつき、またタクシーに乗って
ホテルに戻り、近くのカフェで昼食。ここは美味しい料理があるので二回目の利用だっ
た。勝ち点1を祝い、昼からシャンパンを開けた。もう後は空港へ行って、長い長い飛
行機の旅をするだけなので、最後のシドニーを味わった。             

長い長い帰り道は疲労困憊。金曜の朝7時に成田に到着、そのまま会社へと向かった。

●AFCアジアチャンピオンズリーグ 予選リーグ グループE           
3月21日(水)/20:00(現地時間)/オージースタジアム/21,010人       
シドニー 2-2 浦和                              
得点者: 1' CARNEY(シドニー)、22' TALAY(シドニー)、30' ポンテ(浦和)、 
55'永井雄一郎(浦和)                            


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