面影画35


7月10日の面影画は高橋純子さん




描いた人 菅野 修さん 六十三歳 兄                        
     菅野まさ子さん    姉                         

 修さんは、今回の津波で家を流されて、何もかも失った。命は助かったが、体は難病と戦っ
ていて一人で暮らすのは難しく、今は姉の家に実を寄せている。             

 そんな境遇の兄に少しでも力を与えることができたら、と純子さんは面影画に申し込んだ。
絵のリクエストは、十八年前に交通事故で亡くなった姉のまさ子さんを一緒に描くこと。  
 今の兄の姿と十八年前の姉の姿を一緒に描く。面影画ならではの創作だ。        

 修さんとまさ子さんは、仙台の高校時代に知り合って、交際を重ね結婚することになった。
仙台に住んでいたまさ子さんだったが、結婚を機に高田に来た。             
 まさ子さんは、高田では電気店を営み、コーラス活動などもして友人も多かった。しかし、
十八年前、交通事故で他界してしまうという悲劇が襲った。               

 修さんとまさ子さんには陽子さんという娘がいる。アメリカで結婚して孫が二人いる。女の
子はキアナ、男の子はブルースという。陽子さんはアメリカで歌の活動をしていて、その成果
を高田の被災地で披露するために孫二人を連れてやってきた。              

 純子さんはアメリカで暮らす姪の陽子さんに、この面影画を渡そうとしている。両親の姿を
絵にして、遠く離れたアメリカに持って行って欲しいと思っている。           
 今回の大震災で、多くの人が亡くなった。修さんは家を失った。失意の父に替わって純子さ
んが姪の為に絵を贈る。                               

 この絵が、遠い異国で暮らす陽子さんに、少しでも両親を思い起こさせてくれれば嬉しい。

 純子さんにおくる、姪の為の面影画。                        




 7月10日の面影画は高橋純子さん。                        

 お兄さんとお姉さんを描かせていただいた。                     

 面影画というのには少し事情が違うのだが、被災したお兄さんと、十八年前に亡くなられた
お姉さんを一緒に描かせていただいた。純子さんはこの絵でお兄さんを励ましたいと面影画に
申し込まれた。                                   

 今日もとにかく暑かった。気温35度というからテントの中は40度を超えていたと思う。
 ひたすら木陰で絵を描いたが、外の木陰でも暑い暑い。                
 4時に絵を渡す頃にはへろへろになっていた。                    

姪の娘キアナと絵を受け取りに来てくれた純子さん。 今日も暑かった。真っ青な空と、白い雲にうんざりする日々。