瀬音の森日記 87


保存会、秩父ヤマメの採卵



1999. 10. 24


私が参加している荒川水系渓流保存会の秩父ヤマメ採卵が24日の日曜日に行われた。
9時に集合した会員は池の清掃から始める。しばらく放置してあるだけで池はかなり汚
れる。汚れを放置しておくと病気の元になるのでこうした機会に清掃するのだ。ホース
を使って池の底に積もったヘドロを取り除く。                  

今日は稚魚池に病気の魚が出たので、それの除去と清掃もしなくてはならない。皮膚病
のような症状がなぜか大きい魚にだけ出てしまった。8月9月の高温と大雨の影響では
ないかと誰かが言っていた。沢の水を使っているので、沢から入ってくる雑菌には手の
施しようがないのだ。                             

成魚池の秩父イワナを水槽に入れて、会報用の写真を撮る。30センチにも育った秩父
イワナは丸々と太っていて、黒々とした魚体を水槽に横たえている。先日の東大演習林
勉強会の夜学で見た秩父イワナのスライドを思い出しながら、よくぞここまで育ったも
のだと感心した。秩父イワナの象徴である測線の下のオレンジ斑が鮮やかだ。会報用の
写真を何枚か撮って、弱らせないようにすぐ池に戻す。              

同じように秩父ヤマメの写真も撮影する。今年のヤマメは何だか小さいような気がする
のだが、これは暑さのせいなのだろうか。水温が18度を超えるとヤマメは生きていけ
ないという。異常な暑さの続く長い夏をよく乗り切ったものだと感心しながら写真を撮
った。                                    

池では雄雌の選別が始まった。採卵用のメスと放精用のオスとその他に分ける。その他
にはギンケ化したヤマメや未成熟なヤマメが入れられる。今年はギンケが多い。イワナ
はそのまま池に戻される。メスはおなかを触って卵の成熟具合を調べる。卵は普通この
時期にはおなかの下の方に下がっているはずなのだが、今年は上にあるものが多い。 

これは卵がまだ筋子状になっていて、成熟していない事を示している。例年なら魚体を
持った瞬間にポロポロッと卵がこぼれ出たりするのだが、今年はそういった魚体が少な
いようだ。そして、何よりオスが少ない。9月に病気が出て、オスだけがやられてしま
ったのだそうだ。異常気象などの変化への耐性はオスよりもメスの方が強いようだ。こ
れは自然界全体に言えることで人間も例外ではない。メスの方が強い。       

もう一週様子を見ようかという声もあったが、オスの状態をみると今週が限界だろうと
いう事になり、すべてのヤマメを池から上げる事にした。みすみす池の中で死んでいく
のなら、少しでも採卵して稚魚に育てようという事だ。              

採卵はいつものように麻酔をかけて、水気をふき取り、順序よく流れ作業で行われた。
案の定、卵は少なかった。それ以上にオスの精子が少なくて、受精ぎりぎりの量しか確
保出来なかった。果たして満足に受精出来たかどうか?・・約5千粒の受精卵が発眼す
るかどうか・・・来月の中旬まで待たなければならない。             

順調に行けば、11月20日前後に発眼卵となり、12月中旬にふ化する。そして1月
に餌付けという手順で稚魚に育つ。                       

保存会の目下の課題は、秩父ヤマメではなくて秩父イワナにある。秩父漁協がヤマメの
養殖を始めたので、保存会としては、今後秩父イワナに対象を変えようしている。この
秩父イワナ飼育なのだが、採卵の方法や飼育の方法が分からず、手探りの状態で進んで
いる。立派に育った親イワナを元にこれからどうしていくのか・・まだまだ試行錯誤が
続きそうだ。今月末に会長と吉瀬さんが水産試験場に勉強に行く事になっているが、そ
の結果に期待したいところだ。                         

稚魚池の秩父イワナは水産試験場から運んだゼロ歳児だ。これを捕獲して身長・体重を
計る。身長13.5センチ、体重24グラム(平均)と順調に育っている。ここに、我々の
池で採卵した稚魚を入れることが出来るかどうか・・・今年の大きな課題だ。どんな方
法になるか分からないが、秩父イワナの採卵は11月28日(日)に行う事になった。

帰り道、まだ少ししか紅葉していない山を見ながら走る。キノコ採りの時間がなかった
のを悔やみながら地場産センターを覗いてみたら、「天然大黒きのこ」というものがあ
った。聞くと松茸のように食べられるとのこと。旨そうなキノコのおみやげが出来た。
今夜はキノコご飯とキノコ炒めとキノコ汁・・・キノコづくしだ。         

このところキノコづいているなあ・・・・あとはまた明日から。