瀬音の森日記 77


東大演習林の下見



1999. 9. 5


9月5日(日)渓酔さんのご尽力で、瀬音の森10月のイベント「東大演習林勉強会」
の下見が出来ることになった。集合は12時に演習林学生宿舎となった。当日、私は朝
早く家を出て、小鹿野の実家に寄り墓参りをした。年老いた父親と久しぶりに会い、そ
の息災を確認した。                              

その後、安谷川と持ち小屋沢で川の様子を見て、中津川の滝沢ダム建設現場を見た。こ
の事はまた別の日記に書きたい。12時に学生宿舎の駐車場に車を停めるとすぐに大村
さんが出てきてくれた。今年の春に本郷の東大農学部でお会いして以来だ。久しぶりに
交わす挨拶だが、お互いに前回と違い私服なので春の面影はない。         

食堂にはすでに渓酔さん、安谷さん、稲垣さんが到着していて、すぐに打ち合わせに入
った。「予定している初日分の日程を一通り歩いてみよう」という事になり、身支度し
て車に乗った。国道を滝川にそって走り東大の樹木園に向かう。          

この樹木園はじつに素晴らしいものだった。急斜面にゆったりと道が切られ、九十九折
りに下りながら木の説明を受ける。ほとんどの木に名札がつけられているので木の名前
がすぐ分かる。大村さんが歩きながら様々な解説をしてくれた。          

ここでは91種131本に名札がつけられている。サワシバ・ミズメ・ミズキ・アサノ
ハカエデ・テツカエデ・フサザクラ・コミネカエデ・ハクウンボク・コシアブラ・アカ
シデ・メグスリノキ・シオジ・ケヤキ・バイカツツジ・シロブナ・イヌブナ・・・・・

よくぞこれだけの種類が一カ所に生えているものだ。原生林に周辺からの移植や北海道
や外来の樹種を含めて124種が確認されているそうだ。大村さんの説明は多岐に渡っ
ていて驚くことばかりだ。葉っぱの形から木を見分ける方法。ある木は樹皮がサロンパ
スの香りを出していたり、ある葉っぱはきゅうりの匂いがしたり。いろんな種子があり
、実生があり、幼木がある。全て教えられなかったらそのまま見過ごしてしまうものば
かりだ。自然というものは知っている人にだけ本当の姿を見せてくれる。      

樹木園から急な斜面を下り滝川に出る。吊り橋で川を渡るのだが、渡りながら大量の土
砂に埋まった河原を見て大村さんと安谷さんがため息をつく。8月の大雨による大出水
が原因だろうという事だがすっかり渓相が変わっているのだそうだ。        

川を渡ると胸突き八丁の登りになる。全員言葉がなくなり、ひたすら前の人の足だけを
見て歩く。汗が吹き出してくる。足がつらくなるころ尾根に出た。この尾根の樹相を見
る為に登ったのだが、すばらしいツガ・モミのの林になっていた。二抱えもあるような
巨木の森だ。尾根を渡る風がじつに爽やかで涼しい。               

ツガの根元にたくさんのきのこがある。安谷さんは「イグチの仲間だけど何というきの
こか分からない・・・」と言う。食べたらおいしそうだが、今日はやめておく。涼しい
風に吹かれて一休みしてから天然シオジ林に向かう。途中、ギャップ更新の例を見たり
オノオレカンバを見たり、きのこの写真を撮ったりと休みながら歩く。       

天然シオジ林、樹高40メートル200年生のシオジ林。じつに天井の高い空間が形成
されていて気分がいい。さわさわと抜ける風の音がやさしく、汗がス〜っと引いていく
。サワグルミとシオジの違い等を説明してもらう。ここが本日のハイライト。    

ヒノキの間伐林に来た。ここを下って久度の沢に下る。この道が砂利で滑る。急坂を滑
らないように慎重に下る。途中で熊の生態調査のための捕獲罠を見る。熊をおびき寄せ
るエサは蜂の巣だそうで、ここで熊を研究する人は養蜂の勉強をするのだそうだ。  

下りきったところが久度の沢。ここで小休止。小休止のあいだ安谷さんと渓酔さんはイ
ワナを釣ると急いで竿を出す。残った大村さんと二人でいろいろな話をする。「皆さん
釣りとなると素早いですねえ・・」と大村さんは笑う。              

久度の沢には雨水流量測定をしていた堰堤が二つあるのだが、8月の大雨の土砂ですっ
かり埋まってしまっていた。測量は出来なくなりデータが今年で途切れてしまう。土砂
で埋まった堰堤を見下ろしながら「仕方ないですよね」と大村さんは明るく言う。  

久度の沢出合いの滝川を丸木橋で渡り、国道までの斜面を直登する。大村さんについて
いくのがやっとで足がぱんぱんになってしまった。来月までに体重を落とさなくては・
・・と真剣に思った。やっとの思いで国道まで登り、車まで歩く。最後にわさび沢の施
設を見学して学生宿舎に戻った。時間にして4時間半の山歩きだった。       

いやあ、下見をして本当によかったと思う。実際に歩く事で分かる事がじつに多い。細
い山道で説明する事が多いので、編成をどうするか?怪我をする人が出る可能性がある
のでその場合どうサポートするか?食事をどこで採るか?様々な問題が見えてきた。 

10月のイベント当日までに出来るだけの準備をして、瀬音の森にとって有意義な勉強
会にしなければならない。私はそれまでに足を鍛えなければ・・・・        

久しぶりの山歩きはきつかった・・・あとはまた明日から。