瀬音の森日記 71


中村敦夫議員と熊本へ 2



1999. 7. 17


7時起床。朝風呂に入り昨夜の酒を抜く。                  
8時朝食。中村さんはネギと名の付くものが苦手だそうで、田中秘書が「中村さん
の分だけネギ抜きでお願いします。」と仲居さんに頼んでいた。木枯らし紋次郎の
意外な弱点を発見してしまった。                      

食事後、時間があったので宿の裏を流れている球磨川の川岸を散歩した。鮎を釣る
人が何人もいて見ていて楽しい。やはり川があって、魚がいて、釣り人がいるとい
うのが豊かな川なのだと理屈抜きに感じてしまう。近くの水際を10センチくらい
の稚鮎がキラリキラリと朝陽を反射しながら泳いでいる。竿を持ってくれば良かっ
たと、ちょっぴり後悔していた。                      

今日は利水裁判原告団の茂吉(もよし)さんと利水裁判に関連する場所を見る事に
なっている。バスに乗ってまず向かったのは、川辺川と球磨川の合流点だった。 
河原の砂利道をガンガン揺れながら合流点に近づき、そこからは歩いて川べりまで
行く。鮎釣りの準備をしている人達がいる。高橋さんが「鉄橋の上から見たほうが
良く見える。」と言う。すぐに中村議員、神保さん、渡辺さん他取材陣のカメラマ
ンが鉄橋の上を歩いて川の中央まで行く。                  

我々は危険だからという事で鉄橋には上らせてもらえなかった。こうして下から見
ていると不思議な光景だった。むき出しの鉄橋の上をプレスジャケットを着た中村
議員と神保さんが歩いて行く、タイかマレーシアか、はたまたサイゴンかそんな雰
囲気が出ている。川は豊かで向こう側は緑の竹の林、空は真っ青で白い雲が浮かん
でいる。まるで映画のロケのようだ。                    

合流点は市房ダムが放水していない時期ということもあり、それほどの水色の差は
無かったようだ。ただ、河原の石の色を見れば球磨川が濁りの川だという事は歴然
としている。すべての石が真っ白だ。ダムから放水される濁り水のせいなのだ。 

次に茂吉さんが案内してくれたのは通称「六角水路」。本当は八角なのになぜ六角
なのか?なんて事は置く。川辺川ダムを水源にして水路を建設しようとしている建
設省はこの水路が古くて危険だから新しい水路が必要だと言っているらしい。現場
を見ても何の問題もなく水が流れ田畑を潤しているのが良く分かる。      

そして高台の茶畑の見学。防霜ファンがいたるところに建っていて、この地区の人
達のお茶作りへの熱意が伝わってくる。【日本一のお茶の産地】という大きな看板
も建っていた。農水省はこの地区の防霜ファンをスプリンクラーに替えたいのだそ
うだ。その為に水が必要だから川辺川にダムを作って水を引きたいのだそうだ。誰
がスプリンクラーを望んでいるというのか? 農水省が望んでいるだけではないか
バカバカしい。その施設の維持費・水代は農民持ちだ。それだけコストをかけて売
れる保証は無い。そんな農水省の言う事を信じる人はいないだろう。      

相良村には立派な施設が多い。茂吉さんの案内でそのいくつかを見学した。まず茶
湯里。村民のための娯楽施設で温泉と温水プール、さらにはウオータースラーダー
まで併設している。宿泊施設もあり、至れり尽くせりの施設だ。併設している総檜
造りの総門を持った茶室「茶寿庵」はすばらしい茶室だ。贅沢な内装と造り、さぞ
維持費も大変かと思いきや、ここは第3セクターでの運営で黒字が出ているそうな
??・・・信じられない。入浴料金300円で黒字とは素晴らしい事です。   

次に見たのは弓道場だ。村庁舎の裏手に立派な弓道場が建っている。この弓道場は
6000万円かかっているそうだ。聞けば相良村で弓道をたしなむ人は5人しかい
ないという。しかも、そのうちの一人は村の総務課長で村長の娘婿さんだそうだ。

川辺川ダムの本体は相良村の村はずれに建設される。そしてダムに沈むのは五木村
なのだ。相良村にはいろいろに名を変えて政府の補助金がバラ蒔かれているのでは
ないか? という疑問にこの、どう考えても豪華な施設は何と答えるのだろうか?
五木村とは対照的に豊かな村であることを認めざるを得ない。何だかゆがんでいる
気がしてならない。中村議員も「こんな馬鹿な話はない!」と吠えていた。   

昼食は人吉に戻ってひまわり荘で、地元の商工会議所青年部の人達と交流会を兼ね
て食べた。佐藤亮一さんのビデオ「この川を・・・」を鑑賞した後、水系ネットワ
ークの高場さんの司会で昼食を食べながらいろいろな人が発言した。中村議員は「
ダムは地域を活性化する事はない。流域のネットワークで未来を考えないとダメだ
。」と言い、さまざまな提言をした。                    
鳥飼焼酎の鳥飼さん、やまめ庵の鮒田さん、六調子の若社長、元熊本大学教授の松
本先生、日本湿地ネットワークの山下さんなどがそれぞれの立場で意見を述べた。
私はもっぱらやまめ庵の鮒田さんと釣りの話をしていた。困った病気だ。    

交流会の後、中村議員はここでも写真撮影、サイン攻めにあって足止めを食ってし
まった。やまめ庵の鮒田さんは着ていた釣りベストの背中に木枯らし紋次郎のサイ
ンをしてもらって喜んでいた。                       

3時半、一旦宿に帰って休憩する。皆さん温泉に入ってから思い思いにくつろいで
いた。中村議員は山下さんと風呂上がりのビールを飲んで盛り上がっている。今晩
の講演会を前に今からテンションを上げているだと言う。その講演会は7時からだ。

5時半、うなぎ屋さんで夕食。せいろ蒸しを食べる。さっぱりしていて旨かった。

6時半、人吉カルチャーパレスの講演会場へ行く。「地方(くに)サカエテ山河ア
リ」という垂れ幕が出ている。受付で瀬音の森会員の高木さんと会う。高木さんは
この講演会の為に鹿児島から来てくれたのだ。二人で並んで会場に入り、いろいろ
な話をする。                               

7時、講演会が始まった。パネラーは参議院議員の中村敦夫さん、ビデオジャーナ
リストの神保さん、日本湿地ネットワークの山下さん、弁護士の西田先生の4人。
それぞれが得意の分野で話をしてくれ、良い勉強になった。          

会場は400人満席のホールだったが約7割の入り。聞くと人吉市でダム反対の集
会にこれだけの人が集まった例は無いとのこと。当初の目的は達成できたのかも知
れない。県民の会の西田陽子さんとビデオ作者の佐藤亮一さんに会えたのが嬉しか
った。                                  

9時半、宿に帰って打ち上げ。佐藤さんとビデオの話で盛り上がる。やまめ庵の鮒
田さんや緒方先生もやってきて大宴会になってしまった。とにかく皆さんお酒(球
磨焼酎)が強い。うっかり寝るタイミングを逃してしまい1時半まで飲み続け、ボ
ロボロになってしまった。                         

う〜〜飲み過ぎた・・・・あとはまた明日から。