瀬音の森日記 54


毎日新聞の取材を受ける



1999. 4. 23


4月21日、出先から帰ると「黒沢さん、毎日新聞社からメールが入ってますよ」と
いう社員の声に驚いてPowerBookのスイッチを入れた。メールボックスをチェック
すると毎日新聞科学環境部の記者、吉川さんからのメールが入っていて、瀬音の森の
話を聞かせて頂きたいという内容だった。                   

「夢を追う」という企画の対象として取材をしたいという事だったのだが、ここで考
えてしまった。何の実績もない状態で果たして取材などを受けていいものだろうか?
1日考えた末に吉川さんあてに返事のメールを入れた。内容は「まだ何も実績がない
ので中身の無い記事になる事を懸念します。取材よりも一緒に活動しませんか?」と
いうものだった。                              

すぐに吉川さんからメールが来た。転載許可を取ってないので書けないのだが概要は
「実績ではなく、会を始めたばかりの状態だからいいんです。これからの夢の話を聞
きたいのです。私も釣りが趣味なので是非取材させて下さい。」というものだった。

このメールが来たのが22日だった。吉川さんのメールには22日・23日・25日
のうち都合の良い日で1時間ほど時間を下さい・・と書いてあった。これには驚いた
22日といえば今日だし、25日と言えば日曜日だし、23日しかないではないか!
こうして明日23日の取材が決まった。新聞社の仕事というのはずいぶん忙しいもの
なのですね。日曜日も無いんですね。                     

翌日、12時40分、吉川さんが会社にやってきた。釣り好きという事もありすぐに
打ち解けると矢継ぎ早の質問が始まった。                   
・瀬音の森のいきさつ、どこから始まり、どう発展してきたのか?        
・釣りを始めたきっかけ、いつごろからどんな釣りをしたのか?         
・瀬音の森は他の団体との連携はどう考えているのか?             
・渓流釣りについて、渓流について、森への思いについて・・・         
・イラストについて                             
・瀬音の森の夢について                           
大学ノートは次から次にメモで埋まっていく。異常に書くスピードが速い!質問・メ
モ・確認・メモと間断なくペンが動く。そして何と横にカメラを置いておいて写真も
自分で撮るのだ。取材というものはこうして短時間に濃い内容で行われるものなのだ
と改めて認識した。                             

吉川さんが面白い事を言っていた。環境運動をやっている人と言うのは何人も会って
いると同じ匂いというか「感じ」があって、今回はそういう「感じ」の人ではなく、
普通の人が始めた運動という取材がしたかったと。特に釣りと環境を結びつけて記事
に出来ないかとインターネットで検索していたところ「瀬音の森ホームページ」にぶ
つかったのだそうだ。まさに打ってつけのホームページだったようだ。      

1時間20分という時間を話し込んで取材は終わった。嵐のような時間だったので、
自分で何を話したかよく覚えていない。5月1日か8日に掲載されますので、という
言葉を残して吉川さんが帰った後、急に心配になった。・・・どんな記事になるんだ
ろう・・・・悪く書かれる事は無いと思うが・・・・そういえば瀬音の森の組織活動
や運動紹介などは小さくなるかもしれないと言っていた。どういう意味なんだろう?

取材を受けるという事はこちらが素材になるという事で、どう料理されるかは料理人
である記者次第なのだという事が良く分かった。記事や放送で事実と違うとかの問題
が出る事がよくあるがこうして取材される側になって初めてその気持ちが分かった。
自分で文章を書いて投稿するのと違って、自分の望む記事になる補償は無いのだ。当
たり前といえば当たり前なのだが、当事者としてはいささか不安になってしまう。 
だって、全国紙なんだから・・・                       

本当に新聞に載るのだろうか?どんな記事になるのだろうか?そんな思いが「新聞に
瀬音の森が出るんだよ」と叫びたい気持ちを抑えてしまう。取材慣れしていないとい
う事もあるなあ・・・こんな事ではいけない。もっとしたたかさを身に付けなければ
運動は小さくまとまってしまう。それにしても貴重な経験だった。        

取材される事より実績が大事・・・・あとはまた明日から。