瀬音の森日記 455




内山節&大西暢夫in早川町



2008. 4. 5.6


哲学者の内山節さんと大西暢夫監督がトークするイベントに参加した。


4月5日(土)6日(日)の二日間、山梨県早川町で行われたイベントに参加してきた。
イベントは「内山節&大西暢夫in早川町 早川の明日を考えるー哲学の視点から」という
もので、早川町のNPO法人「日本上流文化圏研究所」が主催したものだ。瀬音の森会員の
石川さんが仕掛け人の一人で、誘われて参加したのだが、内容が深く、とても貴重な体験
が出来た。内山節さんは哲学者であり、瀬音の森が参加している「森作りフォーラム」の
代表でもある。多数の著書を読んでいたので、初めて会えるということでドキドキしなが
らの参加だった。                                

朝早く家を出て、中央高速で甲府南インターへ走り、インターからはひたすら早川町を目
指して走った。早川町はちょうど桜が満開で、様々な花が咲き乱れ、春爛漫の景色が運転
疲れを癒してくれた。南アルプスの山懐深く、早川沿いに伸びる道を奥へ奥へと走る。目
指したのは最奥の集落「奈良田の里」。ここの民俗資料館に焼き畑の資料が展示されてい
るのを見るためだ。フォッサマグナの上に展開するこの町の山は至る所で崩落し、至る所
で工事が行われている。まさに自然と人間が戦っている場所だ。大型ダンプカーが行き交
う細い道を奥へ奥へと走りながら、崩壊する山の猛威を実感した。          

奈良田の民俗資料館はじっくりと見ることが出来たが、併設する南アルプス山岳写真館は
時間が無く、見ることが出来なかった。イベントの開会時間が迫っていたので後ろ髪を引
かれる思いで奈良田を後にしなければならなかった。イベント会場の雨畑まで車を走らせ
ながら途中にあった「おばあちゃんの店」に立ち寄り、いなり寿司を買った。それを食べ
ながら、おばあちゃんと雑談。美味しかったので作り方などを聞いていたら「これも食べ
てみるかい」と、里芋の煮っ転がし、切り干し大根の煮物、ゆず皮の煮物、たくあん漬け
などが次から次に出てきた上に、お茶まで入れてもらって、豪華な昼食になった。   

12時半に会場のヴィラ雨畑に到着。係の人に確認したら、開場時間と開会時間を間違え
ていて早く着きすぎた事が判明。こんな事なら写真館を見てくれば良かったと後悔しても
後の祭りだ。生来の早とちり体質は変わっていない、困ったもんだ。車で待つうちに関根
さんが到着。5月の樹木勉強会の確認や打ち合わせをしていると、今度は吉瀬さんご夫婦
が到着。4人揃ったので会場へと移動した。受付を済ませ、会費を払い、資料を持って会
場へ向かう。会場は広間に座布団を敷いただけのもの。これは前に行かなくてはと最前列
に陣取る。講師の札がテーブルに貼ってあって「内山 節」と書いてある。目の前にその
机がある訳だ。これはドキドキですよ、ホント。                  

時間になり、いろいろな挨拶があり、基調講演「ムラは生き残れるかームラの思想の可能
性」が始まった。内山節さんの淡々とした口調で進む講義に、メモを取る手が忙しく動く
。内容はここでは書けないので申し訳ないのだが、いくつもの貴重な言葉をメモすること
が出来た。とにかく「哲学の視点から」という副題がついているのだから、現実との兼ね
合いは少し横に置いて置かなければならない。この先、この言葉を反芻して自分の中で熟
成させることが大事になると思う。哲学に即効性を求めるのはスジが違うし、自らの内な
るものへの問いかけと考えたい。                         

その後行われた車座談義は司会者の方が最初に言っていた「結論を求めるのではなく、議
論を深める」という事でしたが、初めての体験だったので、少々面食らった。意見を述べ
る人、聞く人、意見を述べる人、聞く人・・・この繰り返しで一向に深くならない議論。
このスタイルは参加者をある特定の人に限定しないと難しいのかも知れない。私がその特
定の人から外れているだけかもしれないが、少々分かりにくかった。         

そして夕食、お風呂の後に大西暢夫監督の「水になった村」を観賞。この時は一番前の席
だったのが失敗。画面の位置が低いため、後ろの人に見えなくなると考え、姿勢を低くし
ての観賞に足、腰、首が痛くなってしまった。映画は一度東中野ポレポレで見ていたので
、再確認したい場面をじっくり見られて良かった。映画の後で大西暢夫監督の挨拶があっ
た。長い時間をかけ、そして今なお徳山の事を考えているという言葉が印象的だった。 

「早川の明日を考える」というテーマでの車座談義が翌日は晴天の運動場で展開された。
満開の桜、風が舞い、空にはツバメが飛び交い、遠い山からエンジンの音が聞こえ、白黒
の猫が足元を伝い歩く。そんな素晴らしい環境で、難しい議論を交わす人々。ロケーショ
ンが素晴らしいので、参加者は意識を議論に向けるのが大変だったのではないだろうか(
私だけか?)。森林組合の加藤さんがそんな空気を一変させてくれたのが見事だった。私
自身は発言しなかったが、早川町は奥山文化の最先端を行っているのではないかと思う。
行政的には先細りかもしれないが、早川町そのもの、住んでいる人そのものは、今後も逞
しく続いていくことと思う。何より、お年寄りが元気な山里は素晴らしい場所だ。上流文
化圏研究所の「2000人のホームページ」も本当に素晴らしいし、こういう人達が応援
している早川町が、逞しく続いていくことを信じている。              

休憩時間に子供達とサッカーをしたのが個人的には一番楽しい時間だった。