瀬音の森日記 285


植栽木の木起し作業と測定



2003. 4. 9


4月9日(水)豆焼沢の植栽木木起こし作業と測定を行った。先日は大雪で出来なかっ
た作業だが、急いでやらないと芽が動き出してしまうということもあり、平日だったが
急遽行うことになったのだ。会社を休んで平日に秩父に行くというのは何だか変な感覚
だが、渓畔林再生の研究は東大演習林と瀬音の森の共同研究になっているので、こちら
が参加しない訳にはいかない。                         

集合時間の10時には出会いの丘にkazuyaさんと五十嵐さんが来た。今日はこの3人
で雪起こしの作業をする。土曜日の大雪は先日の暖かい雨でほとんど溶けており、日影
にわずかに残るだけになっていた。身支度をしてワサビ沢の斜面を下る。足元はぬかる
んで滑るが雪はそれほど多くない。暖かい日差しをいっぱいに浴びたフサザクラがもう
少しで開花する大きさまで花芽を膨らませていた。                

雪解け水で増水した川を渡り植栽地に入ると、雪がほとんどなくkazuyaさんが驚きの
声を上げた。前回はまだ雪が残っていて、何本もの苗木が倒れていたのだそうだ。とこ
ろが苗もラクトロンネットを支えるポールもすっくと立っているのだ。多少傾いている
が成長に問題ないくらいに立ち上がっている。この復元力は素晴らしい!とkazuyaさ
んも大喜びだった。確かに雪起こし作業そのものが必要ないくらいの復元力といういう
のは実験的にも太鼓判を押されたようなものだから嬉しいはずだ。私は単純に作業が少
なくなったのが嬉しかった。                          

一本ずつ状況を確認して写真を撮る。特に前回調査で倒れていた個体の状況を詳しくチ
ェックした。斜めに傾いている苗木は出来るだけ垂直に直し、ネットの裾を張り直した
りと忙しく動き回った。そして、一本一本の測定に入った。12月に測定した数字が記
入してあるシートに測定値を一つ一つ記入していく。ほとんど同じ数字だが、シオジな
どは芽が伸びた分だけ成長している。カツラは30センチや40センチも伸びている個
体もあり、ちょっと不思議な感じがした。それとも測り方が違っているのか???  

測定を終えてちょうどお昼にったので昼食にした。暖かい日差しが降り注ぐ河原でコッ
ヘルを取り出しお湯を沸かす。kazuyaさんと五十嵐さんは保温ジャーのお弁当だ。現場
の作業が多い演習林技官としては普通のお弁当なのだろうが、見ているとやけに美味し
そうに見えてちょっぴり羨ましかった。お茶もポットだし。いつもの山仲間だと圧倒的
にコッヘル湯沸かしラーメン作りという人が多いので気にならないのだが・・・そうか
、山仕事には保温ジャーがいいなあ、と頷いた次第。               

午後は周辺の植生調査をした。泥爆弾で芽ばえたフサザクラやフジウツギの写真を撮っ
たり、カツラの上に伸びてきていたフサザクラの枝を切り落としたりした。枝を切るた
めに木登りするkazuyaさんの姿はまるで遊んでいるようで楽しそうだった。長靴で木
登りする技術も凄いものだと思う。私も途中まで登ったのだが滑る長靴に閉口してすぐ
に降りてしまった。                              

全ての作業を終えて、出会いの丘までの直登。途中で芽ばえたばかりのハシリドコロや
フサザクラの花芽を食べた鹿の食べ跡の観察をし、ハンの実をユーリさん用に集めたり
しながらゆっくりと登った。久しぶりのワサビ沢直登は疲れた。          

春の気配が濃くなりつつある奥秩父。キブシの花やダンコウバイの花しかまだ咲いてい
ないが、木々の枝先は芽が膨らみ、徐々に枝先の色を変えつつある。もう2〜3回の雨
で一気に枝先の色が変わりそうな気配。そろそろ芽が出るぞ!という木々からの声が聞
こえるような気配。こんな時期の山も好きだ。                  

奥秩父にも春が来た・・・あとはまた明日から。