瀬音の森日記 210


秋田に瀬音の森が出来た



2001. 10. 6


10月6日(土)朝8時、秋田県西木村のかたまえ山森林公園駐車場に着いた。昨夜
9時に家を出て、途中休憩しながら一晩中走っていたことになる。バスで来た人はす
でに到着していて、田沢湖展望台で休憩していた。天気が良く東京よりもずいぶん寒
い朝で、渡部さんが入れてくれたコーヒーが美味しかった。東京からのバスは朝7時
には到着してしまい、皆、暇を持て余しているようだった。           

私も寝るほどの時間はないので、車から刃こぼれしたナタを取り出して砥石で研ぐこ
とにした。駐車場の水たまりでナタを無心で研いでいるうちに、役場の人や岩手から
の参加者がやってきたので、それぞれ挨拶を交わし久しぶりの再会を喜んだ。秋田県
が手配した乗り換え用のバスも来たので荷物を移し替えて「再会の森」づくりの会場
へと向かった。                               

バスで参加したのは澤田さん、わたるさん、加藤さん、白瀧さん、小早川さん、万菜
ちゃん、ハミングウェイさん、岡田さん、三浦さん、三井さん、猫ミュウさん、土筆
さん、渡部さん、森さんの14名。岩手からは藪澤賢治さん、ひらり〜さん、PONTA
さん、菅原さん、高橋さんの5名、秋田から今井さん、合計20人だった。JICKYさ
んとユーリさんは明日来ることになっている。                 

小波内地区の森づくり会場は、ユンボで掘った穴が一面に空いていた。いったいこの
穴をどうしようというのだろうかと不安になってしまった。おまけに雨が降ってきて
地面はぐしゃぐしゃになっていた。10時になり、村長の挨拶、集落代表の挨拶、県
の人の挨拶、瀬音の森からの一言、と一通りのセレモニーが終わり、植樹方法の指導
となった。ユンボで掘った大きな穴に、まず大きな石から投げ込み、次にスコップで
残土を埋め戻す。その上に添え木にそって苗木を置き、土を盛り上げるように寄せて
踏みつけて終わり。というものだった。                    

大きな穴をなぜ掘ったのかについての話もあった。ここは地面が建設残土を固めてあ
る場所なので、大きく掘って埋め戻すことで苗木の根が速やかに伸びる事を願っての
処置だったとのこと。そうと分かれば、ひたすらこの穴を埋めるしかない。苗は2メ
ートルくらいある大苗で、ブナが40本、カエデが20本、ヤマザクラが20本とな
っている。ブナとカエデを交互に配し、ヤマザクラは周辺に植えることになった。 

いよいよ植樹。各自スコップを持って、土砂の山を崩し始める。これが大変な重労働
だと言うことはすぐに分かった。たっぷりと水分を含み、セメント状になった土砂を
スコップで大穴の中に投げ込むのだから、すぐに玉のような汗が噴き出してきた。ベ
ストを脱ぎ、シャツを脱ぎ、Tシャツ一枚になって「おりゃあ!とりゃあ!」などと
気合いを入れながらの作業となった。                     

参加者は皆汗を流しながら泥だらけになって奮闘している。集落から参加している人
も、役場の人も、県の役人も、村長もみんな一緒だ。ブナとカエデが次々に植えられ
て行く。場所によっては大穴に水が溜まっていて、土砂を入れるたびにザップーンと
水がはねてズボンが泥だらけになるところもあった。開始から1時間、役場の門脇さ
んの号令で小休止となり、全員に缶ジュースが配られた。            

しばしひとときの談笑後、作業再開。ふたたび泥との格闘が始まった。午前中に全て
の苗を植え終わり、後かたづけをしている時だった。川岸に何人もの人が集まり何か
をじっと見ている。その中からハミさんが走ってきて「サクラマスが産卵してるよ!
すぐそこで!」と叫んだ。すぐに飛んでいって列に加わる。           

見ると川の中ほど7〜8メートルくらいの目の前で体長50〜60センチはありそう
なサクラマスが産卵床を掘っているではないか。体側にはっきりとブナが入り、時々
ヒラを打つように体をくねらせて尾鰭で川底を掘っている。こんなに目の前で巨大な
サクラマスが産卵床を掘っている姿を見たのは初めてだ。すばらしい、本当に素晴ら
しい事だ。これだけ大きな魚が遡上してくる川が目の前にあることに感動した。  

その後、終了の集合写真を撮る時だった、「再会の森」と書かれた真っ白いポストの
裏側に「秋田瀬音の森」と書かれている事を知り、感激してしまった。この事は何も
聞かされていなかったので、本当に不意打ちで、嬉しくて思わず涙が出そうになって
しまった。集合写真は無理を言って「瀬音の森」と「再会の森」両側の文字が見える
ように一枚ずつ撮ってもらった。集落のみなさんには迷惑をかけてしまった。   

「秋田瀬音の森」の前には巨大なサクラマスが遡上し産卵する川が流れている。この
象徴的な出来事を想い出すたびに、森を、川を、植樹を、仲間を、そして今日という
日を想い出すに違いない。                          

昼食は河原でおにぎりと豚汁をいただいた。河原の石に腰掛けておにぎりをほおばり
他愛もないことを話す。西木村の人々ともすっかり友達感覚で話が出来るようになっ
ている。瀬音の高橋さん差し入れしてくれたリンゴが美味しい。サクラマスのいる川
を見ながらの食事はひと味違うものだった。心がじつに豊かに解放されていく。  

食後は枝打ちをした。県の専門家の指導のもと12〜3年生のスギの枝打ちだった。
この作業は小菅村で行っているヒノキの間伐や枝打ちに比べると楽な作業だった。木
が小さいことと、スギの枝がヒノキに比べて柔らかいことなど、会員にとっては少々
もの足りないくらいの作業だったのではないだろうか。枝打ちする前と比べてすっか
り見通しが良くなって明るくなった林は本当に健康的に見えて嬉しくなってしまう。

そういえば、この周辺は上桧内(かみひのきない)という地名だが、ヒノキがまった
く無く、スギばかりなのはどういう訳なのだろうか。「ヒノキ無い」から「桧内」に
転化したのか?昔々はヒノキの良材が産出したのか?              

宿舎の公民館に戻り、着替えて温泉に向かう。西木村のクリオンは400円で入れる
温泉だ。ゆっくりと疲れた体をほぐして温まる。休憩室で缶ビールを1本飲んだら、
眠気が襲ってきた。そういえば昨夜は2時間ほどうたた寝しただけだったことを思い
出した。これから宴会が始まるというのに、ここで寝込んではいけない、と気合いを
入れた。                                  

6時から宴会が始まった。村長、村議会議長、にしきふるさと会会長はじめ村の偉い
方や集落の方が沢山集まってにぎやかに宴会が始まった。料理も集落の方に作ってい
ただいた。腹ぺこのお腹をおにぎりとビールで満たし、つまみのご馳走とお酒に舌鼓
を打ち、叫ぶように語り合い、時間があっという間に過ぎていく。        

お酒がだいぶ強くなったと誉められた・・・あとはまた明日から。