瀬音の森日記 197


北の大地知床にて



2001. 7. 9


北海道の知床に行って来た。恒例のOLMが道東で開催され、私は一日延泊して、ひ
ろしさんと一緒に知床の原生林を見に行ったのだ。尾岱沼(おだいとう)のシーサ
イドホテルをチェックアウトして一路知床に向かった。            

ひろしさんのパジェロはブンブンと真っ直ぐな道を飛ぶように走る。カーナビで途
中の川を確認しながら知床行きを楽しむ。標津川、ポー川、忠類川、古田糠川、薫
別川、崎無異川、植別川、陸志別川、羅臼川、サシルイ川、ケンネベツ川、ルサ川
どの川もオショロコマの魚影豊かな川である。                

最先端の相泊(あいどまり)まで行き温泉を見る。有名な熊の宿も見た「熊ラーメ
ン」の幟が店先にはためいている。浜の無料温泉はライダーや車の観光客でにぎわ
っていた。そういえば途中に「熊の入った家」という看板が出ていた。ニュースで
有名になった海岸町の民家だそうだ。羆がからむと何でも観光地になってしまう。
そういえばこの周辺は羆のテリトリーなのだと今更のように見回した。     

羅臼に戻る途中のルサ川で車を停めた。オショロコマでも釣ってみようということ
になり準備をする。ウルトラライトのパックロッドをつなぎ、スピナーをセットす
る。広い浅瀬にスピナーを投げるとすぐにググンという当たり。ところが、魚が小
さくてなかなか針がかりしない。こちらもすぐに熱くなる。          

上流へ上流へとつい足が向く。オショロコマは1投1尾という感じでかかる。じつ
に魚影が濃い。そうこうしているうちに川の両側に妙な糞が多い事に気づいた。牛
でも放し飼いにしているのかなと気にしなかったのだが、じつはこれ羆の糞だった
のだ。すぐ気づいて車に戻ったのだが、羆のテリトリーに侵入してしまったことは
間違いないようだ。恐い恐い。                       

車は知床横断道路に入った。グングンと高度を上げるうちに雲がかかってきた。ひ
ろしさんの話だとここは晴れることが滅多にないとのこと。両側の木々は亜寒帯樹
相をハッキリと見せてくれる。トドマツが片側だけに枝を伸ばしていて、冬の強風
が思われる。ダケカンバは太い幹をくねらせ枝を低く横に伸ばしている。熊笹がビ
ッシリと林床を覆っている。ちらりと見えた晴れ間にオホーツクに浮かぶ国後島が
鮮やかに浮かび上がった。                         

峠を越えた反対側は晴れていた。驚いたことに木々の色が違う。緑がじつに鮮やか
で濃い色をしている。樹種も多く、針葉樹と広葉樹の混ざった混交林になっている
。この違いは何なんだ・・・尾根を一つ越えただけでこんなに明るくなるなんて。

岩尾別川を越えて車は知床林道へと入る。知床最北端への道だ。林道周辺は伐採し
てあるので木が若いが、内側にはとんでもなく太い木々が林立しているのが良く分
かる。この中は羆の領域なのだ。途中にあるなんとか温泉などは通り過ぎ、最北端
の知床大橋で一休みする。高さ5〜60メートルあるだろう橋の上から下の川の淵
を見て二人で「魚影が見えない・・」あたりまえだ。石を投げれば分かるかも、と
石を投げたが、当然分かるはずもない。釣り師はこんなことばかり考えている。 

帰る途中、林道の奥に歩いて入ってみた。明らかに人の領域ではない雰囲気が漂っ
ていて、ひろしさんが大きく指笛を鳴らす。羆がいつ出てもおかしくない場所なの
だ。トドマツの大きな木が立っている。幹は太いが背が低い。ミズナラの巨木があ
る。枝を大きく横に伸ばしている。ダケカンバ、エゾイタヤ、ナナカマド、様々な
木々が重なり合って熊笹の上に並んで立っている。これが知床の森だ。     

林道を戻り、斜里町の知床自然センターに立ち寄り昼食を食べる。そこで20分間
の映画があるということで見る。「知床の四季」と題された巨大スクリーンでの映
画は知床の自然を十二分に満喫させてくれた。ただ、映像で見る自然よりも手で触
れる自然の方が本質を伝えてくれるような気がしたのが正直なところだ。    

ウトロから斜里町へと車を走らせる。ひろしさんが以久科原生花園に行こうと言っ
た。海岸近くの砂丘にハマナスなどが咲いているというので行ってみた。ハマナス
はすでに終わっていてエゾスカシユリが黄色い花を咲かせていた。大勢の人が散策
していた。一回りして車に乗り帰路に着く。                 

途中、忠類川の上流に林道に入って川を見た。林道周辺の樹木も立派だったし、川
も下流と違う姿を見せてくれて楽しかった。ここではハルニレ、ハンノキ、カツラ
、エゾイタヤが大きな枝を広げていた。車は山から里におり、真っ直ぐな農道をひ
た走る。カーナビの中標津空港までの距離はどんどん少なくなっていく。この距離
がゼロになった時が旅の終わりなのだ。ひろしさんと残り少ない時間を惜しむよう
に会話が弾む。                              

知床の自然は奥が深い・・・あとはまた明日から。