瀬音の森日記 18


秩父営林署に行く



1998.11. 9

約束の3時、営林署の駐車場に車を止めて営林署の中に入る。板張りの床がギシギシ鳴って
広くもないい署内を応接に通された。真ん中にストーブがあって、空間の広い、昔の郵便局
のような造りは何だか懐かしさを感じさせてくれる。                 

岩田課長はちょっと時間に遅れてやってきた。温厚そうなニコニコ顔の岩田さんといろいろ
な話をする。秩父営林署の現状、ボランティアへの考え方。ボランティアとの今後の展望な
ど・・・・以下要約する。                             

・秩父営林署管内では大きく分けて2つの国有林を管理している。一つは大滝村(おおたき
 むら)を中心とした荒川水源の国有林であり、一つは浦山川源流一帯の国有林である。 

・荒川水源の国有林は現在まったく手を加えない状態で、水源かん養保安林として育ててお
 り、今後も手を加える予定はない。新しく植樹する事も無い。            

・浦山川源流の国有林は木材生産を目的とした国有林で、ヒノキを栽培しているが、現在伐
 採の予定はなく、植林する面積も鹿の食害地帯や土砂捨て場などわずかなものである。 

・ボランティア団体は現在1団体(ツキノワの会)のみが公認されている。浦山川源流の国
 有林で植えたヒノキが鹿の食害に会う事が多く、その被害にあった場所への植林という事
 でやってもらっている。この団体は実績もあるし、植えたヒノキを保護したうえで、空い
 たスペースにだったら、ブナでもケヤキでも広葉樹でも何でも植えて構わないと思ってい
 る。                                      

・今のところ、そんな状態で、分収造林・分収育林の話はない。            

・広葉樹の植林については、ノウハウが無いのでやるつもりも予定も無い。食害地帯に「植
 えるのならどうぞ」というスタンスだ。過去、広葉樹植林の実績としては寺社林へのケヤ
 キ植林があるだけだ。これも下刈り、除伐、間伐などのノウハウは確立されておらず、手
 探り状態でやっている。                             

そんな話を聞きながら、想像以上に営林署の仕事範囲が狭いのに驚いた。施業管理図を見せ
てもらうが、国有林は本当に少ない。これでは思うような森作りは出来ないだろうし、予算
もないのだろう。おまけにリストラで人も少なくなっているようで、署の雰囲気も静かなも
のだ。同情したくなってしまう。                          

岩田さんに「埼玉県秩父農林振興センター」を紹介してもらう。ここでは民有林の森林ボラ
ンティアの受け付けや管理をしている人がいる。「森林サポーター制度」を担当している磯
田さんだ。                                    

「埼玉県秩父農林振興センター」は県の機関で、営林署の数倍の大きさを誇っている。その
2階で磯田さんと話した。現在埼玉県の森林サポーターに登録されているのは300人程で
、大半は都市部の人だそうである。やっている事は「かながわ森林づくり公社」と同じ様な
事なのだが、実体は神奈川よりよほど遅れている。お互いの水事情の違いなのか?埼玉県に
はまだまだ危機感が足りないようだ。                        

ここに登録して、ボランティアをしながら林業技術を習得するのも良いが、直接「瀬音の森
」に結びつく訳ではないのでちょっと問題がある。後日、詳しい話を本部に聞きに行きます
と言って帰ってきた。                               

営林署も農林振興センターも言ってみれば「帯に短し、タスキに長し」というところか・・


「瀬音の森」への道は遠い・・・・あとはまた明日から。