瀬音の森日記 160


12月のコナラ林再生ボランティア



2000. 12. 3


12月3日(日)久しぶりに、所沢下富のコナラ林再生ボランティア作業に参加した。
9時半に会場に行くと大森先生と平川さんが焚き火をしている。さすがに準備が早いな
あと思いながら地下足袋とスパッツを履く。久しぶりの山仕事なので、体が対応できる
かどうかが心配だ。幸い雨の心配はなさそうなので、来週の小菅間伐教室の準備運動の
つもりで体を慣らそうと思う。                         

参加者は11人。そのうちの5人が森林インストラクターで、2人が今年3科目合格し
ている人というレベルの高い集まりだった。また、大学生で、卒論に「雑木林」を選ん
だと言う女性も来ていた。雑木林の現実を実際の作業を通して勉強したいとのこと。こ
ういう姿勢が素晴らしい。                           

まずは、焚き火を囲んで準備体操。山仕事の前に準備体操は欠かせない。手首を回す、
足首を回す、足の裏を伸ばす、前屈、後屈、ETC。ひと通り体を動かすと筋肉がリラッ
クスしてくる。冬は特に体が縮まっているので、この準備体操が必要になる。十分に体
や筋肉や筋を伸ばしておかないと、思わぬ怪我をする事になる。怪我をして後悔しても
遅いのだ。丁寧に体の隅々まで伸ばす。                     

今日はまずアカマツの枯れ木を倒す。先日チェーンソー安全講習を受けたばかりの私と
平川さんが担当する。アカマツは胸高直径45センチくらいで、なかなか太い木だ。来
週の間伐教室を前に、基本をおさらいするにはちょうど良い相手だ。受け口の向きと大
きさをチョークで書き込む。こうすると目算による計算違いが生じないですむ。チェー
ンソーは手引き鋸と違って、あっという間に切れてしまうので、切りすぎる点に注意し
なくてはならないのだ。                            

受け口の下を水平に切り込む。45度の角度で上から、最後の切り口がピタリと合うよ
うに切り込む。チェーンソーの刃渡りを越える太さのアカマツなので、注意しないと切
りすぎてしまう。慎重に刃を進める。チェーンソーがうなりを上げ、木屑が飛び散り、
マツの木の香りが周辺に漂う。受け口はピタリと合った。             

切り上がった受け口を確認しながら、チョークで追い口の線を引く。直径の10分の一
がツルとして残るように、受け口の下から3分の2の高さに水平に線を引く。そして、
水平に注意しながらチェーンソーで追い口を切る。まだ、倒れないので、慎重を期して
くさびを2枚打ち込む。追い口が3センチ浮いたところでアカマツは倒れ始めた。  

ところが、思っていたよりも背が高かった為、前方のサワラに引っかかってかかり木に
なってしまった。方向を安定させるためにロープをかけておいたので、そのロープを5
人で力を合わせて引いたら、ドオオオオン!!と地響きを立てて倒れた。立っている時
考えたよりも背が高かったのがかかり木の原因だった。無事に倒れてくれて一安心。 

それから、作業は竹炭用のタケの切り出しと割りに入った。ドラム缶一本分の割り竹を
作るのは本当に大変な作業だ。午前中いっぱいは、この作業を淡々と続けていた。ずっ
と中腰での作業だったので、腰が痛くなってしまった。お昼になったのでほっとしたの
が正直なところだ。                              

焚き火を囲んで昼食。木の枝に刺したウインナーを焼く。コッヘルに湯を沸かしラーメ
ンを入れる。吹きこぼれないように注意しながらラーメンを煮る。焚き火からは焼き芋
が掘り出されて一人に一個ずつ配られる。山仕事の後の至福の時間の始まりだ。焚き火
の周りで、気の置けない人と話しながら食べる昼食はほんとうに旨い。       

午後は先ほどの竹割りと節落としが仕事だった。しばらくすると平川さんがヒノキの太
い木を伐倒するというので手伝った。長い竹竿を使って枝にロープをかけ、引き綱にす
る。横に人家があるので、間違ってもそちらに倒れないようにしなければならない。 
チョークで慎重に受け口の線を引く。チェーンソーがうなりを上げてヒノキのおが屑を
飛ばす。あたりにヒノキの良い香りが漂う。                   

追い口も慎重に切った。くさびを2本打ち込んだ。我々は4人で引き綱を引く。ヒノキ
が動いた!巨大な木がこちらに倒れてくる!素早く隣の林に逃げ込む。その後にもの凄
い風を伴ってヒノキの巨木が倒れてきた。ドオオオオン!!と地響きを立てて倒れた音
が凄くて、周りから歓声が上がった。皆が駆け寄る。切り口を見て年輪を数えたら、な
んと105本。明治の始めに植えたヒノキだということになる。          

切ったヒノキの枝を落とし、まとめて処理をする。全員でやるとあっという間に片づい
てしまった。あっけないようだが105年育ったヒノキの幹がそこに横たわっている。
このヒノキは節が曲がっていて材にはならない。そして、このヒノキを切ることで雑木
林に光が入り、コナラの成長が促進される。コナラ林を育てるための手段なのだ。  

105年育ったヒノキを切る畏れと喜び・・・あとはまた明日から。