瀬音の森日記 156


カヌ沈隊と一緒に遊ぶ



2000. 11. 4.5


11月4日(土)5日(日)の二日間、奥秩父の柳小屋に行った。柳小屋にはカヌ沈隊
の面々が3日から入っていて岩魚の水中撮影などをやっている。カヌ沈隊というのは瀬
音の森会員でもある尾崎さんが隊長をしている硬派野営集団のことだ。基本は沢登りと
焚き火で、雪中行軍とかやたらハードな活動を自慢している、自称硬派な男達の集まり
なのだ。                                   

7時45分に入川観光釣り場手前の広場に車を停めて身支度をする。2回目の柳小屋行
きなのでちょっと緊張している。天気は快晴だし、午前中に着けばいいんだと楽な気分
で歩き出した。観光釣り場の横を歩きながら紅葉の山を眺める。今日はすばらしい景色
が見られそうだ。                               

軌道跡を歩きながら下の流れを見る。落ち葉が河原一面に敷き詰められていて、白い流
れがやけに落ち着いて見える。禁漁になった川は釣り師の目には、どうも違って見えて
いるようだ。落ち葉の敷き詰められた軌道跡を、落ち葉を蹴散らしながら黙々と歩く。
今年、ここを歩くのは何度目になるのだろうか。                 

赤沢出会いに着いた。いよいよここから登りになる。まだキノコは見つからない。急坂
はさすがにきつい。メグスリノキの巨木はもう葉が落ちてしまっていた。ブナの巨木に
はブナハリタケが密生していたが、あまりに高いところなので採ることは出来なかった
。23種類あるという秩父のカエデが今を盛りと紅葉している。青空とのコントラスト
が素晴らしい。                                

夏歩いたときよりも体は楽だ。景色がとにかく素晴らしい。まさに「錦秋一刻値千金」
という景色がずっと続いていく。途中でムキタケの固まりを見つけた。これでお土産が
出来た、とニンマリする。紅葉のブナの森は豪華絢爛な山道を目の前に伸ばしている。
山道には色とりどりの落ち葉が重なって落ちている。それを見ながら歩いているのがじ
つに楽しい。                                 

柳小屋には11時に着いた。なんと3時間で着いてしまった。予定していたよりも1時
間も早く着いた事になる。すぐに尾崎さんが迎えてくれて、河原の焚き火の近くに呼ん
でくれた。カヌ沈隊メンバーは隊長の尾崎さん、ヤスさん、ヨコサワさん、ガリガリさ
ん、フカマチさんの5人。缶ビールを1本飲んで休んでいるうちに、昼食の準備が出来
た。採ってきたばかりのムキタケと鶏肉を使った、付け汁で食べるざる蕎麦である。 
山奥で食べる蕎麦の旨いこと。                         

食事の後は夜の焚き火のための薪集め。小屋の裏山へ登り、立ち枯れや枯れ枝を集めて
くる。足元が滑るのでたいへんだ。何度か往復して必要な量を確保した。2時からは私
のためのザイルワーク教室。登山道の横の斜面を利用して、ハーネスやカラビナ、エイ
トカンの使い方など基本中の基本を教わる。ハーネスを身につけてちょっとした沢屋さ
んの気分である。ザイルワークは支点の確保と懸垂下降を実際にやってみた。懸垂下降
はエイトカンの使い方が初めて分かり、これならば安全と実感した。こういう事は実際
にやってみる事がいちばんだ。瀬音の森でもこのようなザイルワーク教室が必要かもし
れないと感じた。                               

小屋の前の河原に戻り夕食の準備に入ったが、私はもっぱら焚き火の番で楽をさせても
らった。夕食は舞茸おこわと本格的なすきやき、そして牛ヒレ肉をメインにしたホイル
焼き・・・・何という贅沢。日本酒がカップに注がれ、焚き火の炎が顔を照らす。充実
した時間が過ぎていく。                            

この夕食時にハプニングがあった。夕方山から下りてきた人のパートナーが降りてこな
いとのこと。聞けば途中でカメラを落としたからと道を引き返したらしい。その人が迎
えに行くと言って暗い山道を登ってからもう1時間以上たつ。我々もそれが気になって
きた。もしかしたら二重遭難??さて、どうすべきか。この時の尾崎さんの判断と指示
は素晴らしいものだった。「明日の朝まで待って、帰らなかったら3人がフル装備で探
しに行く。2人は小屋で待機。見つかったら一人が小屋に走り、小屋の人間が一人麓へ
走る。無線が使える状態なら無線で麓と連絡をとる。いずれにせよ、明るくなってから
行動する。」                                 
ここまで決めて、あらためて夕食を進めた。しばらくして真っ暗な山から二つのヘッド
ライトが降りてきた時は歓声が上がった。迎えに行った時間から2時間以上たっていた
。どうやら道に迷っていたらしい。二人は焚き火の横まできて、しきりに詫びていた。

柳小屋での一夜は暖かく、ぐっすり寝る事ができた。朝はまた焚き火の周りに集まって
コーヒーを飲んで朝食の準備。朝食は釜揚げうどんを付け汁で頂く。これまたじつに旨
い。冷えた体が暖まる。これらの料理を焚き火でやるのだから見事なものだ。後かたづ
けも速い。あっという間に片づけて帰り支度をする。ゴミ一つない河原を元のようにな
らしてキャンプは終わった。                          

帰り道は私の拙い解説で秩父の樹木を勉強しながら、ゆっくりと下山した。途中でナラ
タケの群生を発見したり、ムキタケを採ったりと楽しい山歩きだった。二日続きの快晴
で紅葉を堪能したことは言うまでもない。                    

若い人と話すのは楽しい・・・あとはまた明日から。