瀬音の森日記 146


東大演習林勉強会の下見



2000. 10. 1


10月1日(日)東大演習林勉強会の下見をした。コースを知っている人がkazuyaさん
だけではまずいので、JICKYさんと私の3人で下見をしながら当日のうち合わせをする
事になったのだ。朝9時に学生宿舎の駐車場前に集合し、滝川の上流へ向かう。ナメ沢
林道の手前に車を停めて身支度をする。ナメ沢入り口には公衆トイレがあり、当日はこ
こを利用することが出来るので助かる。                     

ナメ沢の林道は奥山の木材搬出のために作られたのだそうで、滑り止めが全面についた
しっかりした舗装道路である。大きな木が両側に林立している。クリ、ケヤキ、ブナ、
イヌブナなどが目に付き、クマシデやオオモミジがその下に茂っている。これらの木々
は勉強会当日には見事に紅葉している事だろう。                 

下の方に林道入り口が見えて、そこに安谷さんの車が止まった。どうやら仕事の方が予
定変更になったようで、下見の応援に来てくれたようだ。安谷さんに参加してもらえる
のは嬉しい。キノコの事を勉強できそうだ。林道上にミズナラの実(ドングリ)やブナ
やイヌブナの殻斗が落ちている。今年はブナの実の豊作年なのだそうだ。サルも山から
下りてきていないとのこと。なによりなにより。                 

林道から登山道に入る。当日はここから長い一列になるので、その対策を考えておかな
ければならない。3班くらいに分ける必要があるかもしれない。広葉樹の森は、林床に
スズタケが生えているイヌブナの森で秩父特有の森とのこと。学生実習のためにスズタ
ケが広く刈り払われていて歩きやすい。                     

しばらく歩くと人工林に入る。モミとスギの混植実験地で、ここではモミとスギの同齢
林での生長の違いが良く分かる。スギに比べてモミの生長は悪い。樹種によって生長の
違いがこれほどあるとは驚きだった。次に出てくるのはカラマツ間伐地。間伐作業の実
際と、明るくなった林分を実際に見ながら勉強できる。なぜ間伐が必要なのかなどの話
ができると効果的だと思う。                          

造林小屋を経てカラマツ林を尾根に登る。ここで尾根樹相の勉強が出来る。オノオレカ
ンバ、アセビ、ミズメ、イヌシデなどが生えている。林床のスズタケが消えるのは水分
の関係か。ストローブ松の実験林、北米原産の松で枝の数を数えると樹齢が分かる。そ
してシラベの実験林。本来、標高1800メートル付近から見られる木なのだが、ここ
では標高1500メートルで育てている。                    

林の中では様々なキノコが顔を出していて目を楽しませてくれる。ベニテングタケやハ
ナイグチ、スギエダタケ、ホテイシメジ、サクラタケ、ドクツルタケ、キツネノチャブ
クロなどなど・・昨日の雨でキノコ達も元気に育っている。勉強会の当日はキノコの顔
ぶれも変わるだろうが、沢山出ていればいいなあと思う。             

尾根の登山道は見通しが利かず、少々きつい登りになる。ここではツル性植物の勉強が
出来る。イワガラミ、ツルアジサイ、ツルウメモドキ、ミヤママタタビなどが見られる
。岩土場(がんどば)で休憩する。太いブナのある見晴らしの良い場所で矢竹沢をはさ
んだ向こう側の山が見える。当日は紅葉でさぞ美しいことだろう。東大の学生はここか
ら超高感度の望遠鏡で対岸のカケスの生態を研究するのだそうだ。         

尾根道を突出峠(つんだしとうげ)まで登る。ここは厳しい。あごが上がりそうになっ
たが、目の前に巨大なミズナラが見えたらそんな弱気も吹っ飛んだ。素晴らしいミズナ
ラの巨木だった。いったい何年ここに立っているのだろうか・・・巨木の前で言葉を無
くす。kazuyaさんが「ここを見て欲しかったんですよ。200年後の小菅の森はこんな
森なんだと思います。」と言った。ところが、突出峠(つんだしとうげ)はまだ先で、
ここからまだ20分歩くという。思い切って気持ちを切り替えて歩き出した。    

突出峠(つんだしとうげ)からは道が平らになる。ここで昼食。ラーメンを作り、先ほ
ど採ったナラタケとカノシタを入れる。これがじつに旨かった。ここまでくるのは大変
だけど、ここで休んだ方が絶対気持ちいい。参加者は何とか全員がここまで登れないだ
ろうか・・と考える。ここまで登ってはじめて巨木の森が体感出来るのだ。     

昼食後平らな道を散策する。巨大なテンカラ(天然カラマツ)がある。ダケカンバの巨
大な枝の上に立派なナナカマドが育っている。この森が出来上がるまで何百年という時
間がかかったことだろう。この森の中を歩いていると時間が止まるような気がする。霧
が濃くなって幻想的な風景が目の前に展開していく。遠くで鹿の鳴き声が聞こえた。 

下りがきつかった。膝に持病があるので登りよりも下りの方がきつい。おまけに滑りや
すい道なので気を使う。私は剣付き地下足袋だったので滑らなかったが、JICKYさんや
安谷さんはキャラバンシューズだったが何度か滑っていた。スニーカーなどでは危ない
かもしれない。先頭を歩く人はなるべくゆっくり歩く必要がある。         

トイレの問題や昼食の場所の問題を相談しながら下り、麓に来たのが1時間とすこし。
当日は2時間みておいた方が良い。宿に帰る時間を考えながら行動する必要がある。食
事当番や車の割り振り、救護係などの詳細を決めなければならない。夜学は安谷さんに
キノコ教室をお願いすることになった。                     

さてさて決める事がいっぱい・・・あとはまた明日から。