瀬音の森日記 140


秩父在来岩魚集中調査



2000. 8. 6


8月4日(金)5日(土)6日(日)の三日間、奥秩父柳小屋をベースにして、秩父在
来岩魚の集中調査を行った。これは、秩父在来岩魚保護計画の一環で、秩父在来岩魚の
DNA鑑定用の試料を集める目的で行われた。参加者は安谷さん、JICKYさん、kazuya
さん、ワタナベさん、関根さん、尾崎さん、そしてkurooの7名だった。      

4日の朝6時に集合し、三日分の荷物を背負い柳小屋を目指す。私は初めての柳小屋行
きなので不安だらけだったが、前を歩くJICKYさんの踏み跡をひたすらトレースした。
6時半に歩き出して柳小屋に着いたのは10時半、ちょうど4時間かかった事になる。

昼食と沢割り、調査方法の確認と材料の配布、kazuyaさんの細かい説明があった。初日
は真の沢千丈の滝上下に分かれて入渓する。若い3人が上流に行き、私を含めた年輩者
が下流に入った。千丈の滝はここからまだ1時間半ほどかかるそうで、参加者の体力に
驚かされた。私などは小屋に着いただけでバテバテだったのだから。        

真の沢下流の吊り橋から入渓し、しばらくそのまま竿を出さずに遡行する。両岸は苔む
した岩と巨木の渓畔林が続き、これこそ「瀬音の森・秩父」が目指している森なのだと
実感する。シオジ・サワグルミ・ブナ・イタヤカエデ・・・見事な木々がカーブ毎に変
わる渓谷の景色を彩る。白い滝と蒼い淵が次々と眼前に現れ、巨岩と爆流が前に立ちは
だかる。正しい源流の姿がそこにあった。                    

関根さんは安谷さん以上に渓流に精通している人で、次々に岩魚を抜き上げる。安谷さ
んが携帯水槽に入れて記録写真を撮り、アブラビレをハサミで切り取り、バイヤルビン
のアルコールに付けて、場所・大きさ・日付を記入してビンに貼る。そして岩魚をリリ
ース。これを繰り返す。残念ながら私の毛針には反応がない。           

白岩の大滝に着いた。ここで今日一番の27センチが出た。今日はここで納竿し、右岸
を直登して登山道に出る。柳小屋に帰る尾根道は素晴らしい木が連続して目を楽しませ
てくれた。特にツガの巨木と天然ヒノキの巨木は、しばらく見上げてしまうほど立派な
ものが多かった。アセビの巨木が多いのにも驚いた。               

その日、上流組が雷雨に会い、ずぶぬれになって小屋に帰ってきたのは夕方6時過ぎだ
った。この日の雷はものすごいもので、尾根道を歩いていた3人は生きた心地がしなか
ったと言っていた。小屋で待っていた我々も心配だったが暗い中にライトが見えた時は
本当にほっとしたものだった。それにしてもすごい雷雨だった。          

二日目は股の沢と真の沢下流に別れて入渓。私は安谷さんJICKYさんと3人で股の沢に
入った。ここは真の沢以上に滝が多く、高巻き・へつりの連続で両岸がゴルジュという
大変な沢だった。ここで私は待望の秩父岩魚に巡り会う事が出来た。22センチと23
センチの宝石のような秩父岩魚にしばし陶然としたが、すぐに撮影しアブラビレを試料
として採取した。これで調査に加わる事が出来たと実感し、嬉しかった。      

この日は12時ころから雷雨があり、股の沢という逃げ場のない峡谷にいた我々はすぐ
に竿をしまい駆けるように上流を目指した。遙か上流の魚止めの滝まで脱渓点がないの
だから必死だった。徐々に増水してくる川の水を感じながら必死に上流に向かい、やっ
との思いで脱渓し、登山道に出た時は本当に助かったと思った。          

小屋にはすでに真の沢組が帰っていて、満足の釣果に皆にこにこだった。二日目から合
流の尾崎さんが貴重なビールを運んできてくれたのを頂く。ビールがこんなに旨いもの
だったとは!!言葉にならないほどこのビールは旨かった。二日目の試料集めは順調だ
った。夕方雨も上がったので外で焚き火を囲みながらの宴会となった。楽しい山の仲間
との楽しい時間はあっという間に過ぎてゆく。                  

三日目、残るサンプル数を求めて、真の沢千丈の滝上と股の沢に入る上流組と私とワタ
ナベさんの下流組に分かれた。我々は金山沢出合いまで下り、そこから上流に向かって
釣る事になった。ここまでの疲労が蓄積しているは分かっていたし、今日は最終日なの
で4時間の下りを荷物を背負って歩かなければならない。その事を考えると無理は出来
ない。二人でそんな事を話ながら登山道を下った。                

金山沢出合いの入渓点もけっこうハードな道で、渓に下るまでが大変だった。そのまま
釣り上がったが、私はノーカウント。ワタナベさんに何尾かの岩魚が出た。高巻きとへ
つりに神経をすり減らし、早々に脱渓し小屋に戻った。午後1時、上流組も全員無事に
小屋に戻ってきた。結局、真の沢上流・下流・股の沢は目標としていた数をクリアーし
DNA鑑定に回せる事になった。これがどういう結果をもたらすか分からないが、秩父在
来岩魚のアイデンティティ確立の第一歩となった事は間違いない。         

三日間我々に自然の持つ優しさと厳しさを見せてくれた、秩父の源流。ここが秩父岩魚
の楽園となるようこれからも運動していきたい。原生林の森厳と渓谷と清流に守られて
秩父岩魚がいつまでも残ってくれることを願いながら下山した。          

実り多い三日間を演出してくれた仲間達に感謝・・・あとはまた明日から。     

PS, 今回の釣行記詳細は写真入りで後日「季刊 kuroo」に掲載する予定です。