瀬音の森ニュース 205


内山節&大西暢夫in早川町



2008. 4. 5/6



内山節&大西暢夫in早川町 早川の明日を考えるー哲学の視点から


4月5日(土)6日(日)の二日間、山梨県早川町で行われたイベントに参加してきまし
た。イベントは「内山節&大西暢夫in早川町 早川の明日を考えるー哲学の視点から」
いうもので、早川町のNPO法人「日本上流文化圏研究所」が主催したものです。瀬音の森
会員の石川さんが仕掛け人の一人で、誘われて参加したのですが、内容が深く、とても貴
重な体験が出来ました。内山節さんは哲学者であり、瀬音の森が参加している「森作りフ
ォーラム」
の代表でもあります。多数の著書を読んでいたので、初めて会えるということ
でドキドキしながらの参加でした。                        

南アルプスをバックに満開の桜。 桜が満開で出迎えてくれた。秩父より暖かいんですね。

朝早く家を出て、中央高速で甲府南インターへ走り、インターからはひたすら早川町を目
指して走りました。早川町はちょうど桜が満開で、様々な花が咲き乱れ、春爛漫の景色が
運転疲れを癒してくれました。南アルプスの山懐深く、早川沿いに伸びる道を奥へ奥へと
走ります。目指したのは最奥の集落「奈良田の里」。ここの民俗資料館に焼き畑の資料が
展示されているのを見るためです。フォッサマグナの上に展開するこの町の山は至る所で
崩落し、至る所で工事が行われています。まさに自然と人間が戦っている場所です。大型
トラックが行き交う細い道を奥へ奥へと走りながら、崩壊する山の猛威を実感しました。

土砂に埋まった奈良田湖。ダムが崩壊したらどうなってしまうのか・・ 民族資料館の隣の立派な神社。

奈良田の民俗資料館はじっくりと見ることが出来ましたが、併設する南アルプス山岳写真
館は時間が無く、見ることが出来ませんでした。イベントの開会時間が迫っていたので後
ろ髪を引かれる思いで奈良田を後にしました。イベント会場の雨畑まで車を走らせながら
途中にあった「おばあちゃんの店」に立ち寄り、いなり寿司を買いました。それを食べな
がら、おばあちゃんと雑談。美味しかったので作り方などを聞いていたら「これも食べて
みるかい」と、里芋の煮っ転がし、切り干し大根の煮物、ゆず皮の煮物、たくあん漬けな
どが次から次に出てきた上に、お茶まで入れてもらって、豪華な昼食になりました。  

早川にかかる吊り橋。半分行ったら足がすくんだ。 おばあちゃん6人が交代でやっている店があった。


笑顔が素敵なおばあちゃんから、いなり寿司を買った。 「これも食べな・・」と手作り料理がたくさん出てきた。

12時半に会場のヴィラ雨畑に到着。係の人に確認したら、開場時間と開会時間を間違え
ていて早く着きすぎてしまいました。こんな事なら写真館を見てくれば良かったと後悔し
ても後の祭りです。生来の早とちり体質は変わっていません、困ったもんです。車で待つ
うちに関根さんが到着。5月の樹木勉強会の確認や打ち合わせをしていると、今度は吉瀬
さんご夫婦が到着。4人揃ったので会場へと移動しました。受付を済ませ、会費を払い、
資料を持って会場へ。会場は広間に座布団を敷いただけのもの。これは前に行かなくては
と最前列に陣取ります。講師の札がテーブルに貼ってあって「内山 節」と書いてありま
す。目の前にその机がある訳です。これはドキドキですよ、ホント。         

河原の広い早川。大量の土砂が出続ける川。当然、工事も多い。 秩父から来た3人と合流。

時間になり、いろいろな挨拶があり、基調講演「ムラは生き残れるかームラの思想の可能
性」が始まりました。内山節さんの淡々とした口調で進む講義に、メモを取る手が忙しく
動きます。内容はここでは書けないので申し訳ないのですが、いくつもの貴重な言葉をメ
モすることが出来ました。とにかく「哲学の視点から」という副題がついているのですか
ら、現実との兼ね合いは少し横に置いて置かなければなりません。この先、この言葉を反
芻して自分の中で熟成させることが大事になると思います。哲学に即効性を求めるのはス
ジが違いますし、自らの内なるものへの問いかけと考えるようにします。       

哲学者 内山節さんの講義が始まった。 大西暢夫監督と内山節さん。豪華なツーショット。

その後行われた車座談義は司会者の方が最初に言っていた「結論を求めるのではなく、議
論を深める」という事でしたが、初めての体験でしたので、少々面食らいました。意見を
述べる人、聞く人、意見を述べる人、聞く人・・・この繰り返しで一向に深くならない議
論。このスタイルは参加者をある特定の人に限定しないと難しいのかも知れません。私が
その特定の人から外れているだけかもしれませんが、少々分かりにくかった。     

石川さんもパネラーとして参加。堂々として立派でした。 映画の後で挨拶する大西暢夫監督。

そして夕食、お風呂の後に大西暢夫監督の「水になった村」を観賞。この時は一番前の席
だったのが失敗。画面の位置が低いため、後ろの人に見えなくなると考え、姿勢を低くし
ての観賞に足、腰、首が痛くなってしまいました。映画は一度東中野ポレポレで見ていた
ので、再確認したい場面をじっくり見られて良かったです。映画の後で大西暢夫監督の挨
拶がありました。長い時間をかけ、そして今なお徳山の事を考えているという言葉が印象
的でした。                                   

運動場で会場作りをする学生達。一番頑張った人達。 人なつっこい猫が足元を徘徊していた。

「早川の明日を考える」というテーマでの車座談義が翌日は晴天の運動場で展開されまし
た。満開の桜、風が舞い、空にはツバメが飛び交い、遠い山からエンジンの音が聞こえ、
白黒の猫が足元を伝い歩く。そんな素晴らしい環境で、難しい議論を交わす人々。ロケー
ションが素晴らしいので、参加者は意識を議論に向けるのが大変だったのではないでしょ
うか(私だけか?)。森林組合の加藤さんがそんな空気を一変させてくれたのが見事でし
た。私自身は発言しませんでしたが、早川町は奥山文化の最先端を行っているのではない
かと思います。行政的には先細りかもしれませんが、早川町そのもの、住んでいる人その
ものは、今後も逞しく続いていくことと思います。お年寄りが元気な山里は素晴らしい場
所です。上流文化圏研究所の「2000人のホームページ」も本当に素晴らしいし、こう
いう人達が応援している早川町が、逞しく続いていくことを信じています。      

始まりを待つ司会者と内山節さん。後ろの景色が素晴らしい。 真剣な議論を寝転がって聞く、不遜な足元の参加者。

休憩時間に子供達とサッカーをしたのも個人的には楽しい時間でした。