W杯浦和:日本対ベルギー戦観戦記


浦和が燃えた!。
6月4日に浦和で行われた日本対ベルギー戦の観戦記。



浦和が燃えた!

6月4日(火)いよいよワールドカップ日本の初戦、ベルギー戦の日だ。いつもと同
じようにぐっすり寝られたので頭はスッキリしている。シャワーを浴びて身を清め、
新聞に目を通す。徐々に気持ちが高ぶってくる。テレビの中継がそれをあおる。努め
て平常通り振る舞おうとするのだが、気持ちはすぐにベルギー戦に行ってしまう。 

午後1時半、急に降り出した雨の中をスタジアムに向かって出発する。すでに代表ユ
ニを着て、ブルーのマフラーを巻いた姿である。代表ユニは新しいものをカミさんに
着せて、私は4年前にフランスに着ていったものを着る。このユニフォームには特別
の思い入れがあるのだ。4年前、スタジアム前まで行って見られなかったワールドカ
ップの日本戦が今日初めて見られるのだ。                   

朝霞台駅までバスに乗り、ここから武蔵野線で東川口まで行く。朝霞台駅前のカフェ
で腹ごしらえをしながらフェイスペインティングをする。今日は日の丸と富士山を両
頬に描く。カミさんには日の丸を描く。その様子をじっと見ていた前の席のカップル
が話しかけてきた。                             
「あのう、それって、簡単に出来るんですか?」                
そこで「やりますか?」と聞くと、ぜひお願いしますとのこと。聞くと今日スタジア
ムに行くのだそうだ。奥さんに日の丸を、ご主人に日の丸と富士山をペインティング
してあげた。二人とも大喜びで、その場で持参していた代表ユニに着替えていた。 
さあ、気分が盛り上がってきたぞ〜〜。ビールの勢いもあって、気分良く武蔵野線に
乗り込んだ。電車の中にはブルーのユニフォーム姿の人が何人もいる。      

東川口駅から埼玉高速鉄道に乗り換えて浦和美園駅へ。思ったほど混雑していなくて
ほっとした。駅前に売店やミニサッカー場やイベント会場がずらりと並ぶコーナーが
作ってあってサポーターが大勢試合前の時間を楽しんでいた。フェイスペイントコー
ナーは長蛇の列で大人気だった。みんな思い思いのペインティングを楽しんでいる。
これは札幌では見かけなかった空間で、ベルギーサポーターとあちこちで写真を撮り
合っている人々の姿を見ながら、これがワールドカップなんだよ・・と思っていた。

警備の人の姿は要所にあるだけで、全てが自由だった。スタジアムまでの長い道のり
も、途中にある太鼓の演奏や売店や販売機で苦にならない。アルゼンチンサポーター
が帽子や旗を売り歩くのも黙認されている。札幌にはなかった自由な空間がここには
あった。浦和の関係者がサッカーというものを良く知っているからなのだろう。ワー
ルドカップだからといって特別に何か警備を強化している風もない。警察官の姿は遠
くの方でチラホラ見えるだけ、アナウンスも女性の声で柔らかい。サッカー観戦はこ
うでなければいけない。                           

スタジアム前は大勢の人が思い思いに楽しんでいた。ここでも赤い悪魔サポーターは
大人気。大勢の人から写真を頼まれていた。通りかかった若いカップルからフェイス
ペインティングについて聞かれたので、「やりますか?」と言うと大喜び。彼女の頬
に日の丸のペインティングをしてやった。今度は若い男二人から記念写真を撮ってく
れと言われたので、二人に日の丸をペインティングしてやってからスタジアムをバッ
クに写真を撮ってやった。この二人はチケットが無く、雰囲気だけでも感じようとや
ってきたのだそうだ。「僕たちの分も応援して下さい!」「まかせとけ!」気合いが
入る。チケットが取れなかった人の分も応援しなければいけないのだ。      

入り口ではチケット検査と荷物検査があった。やはり身分証明などはいっさい行われ
ていない。検査の人からも「応援頑張って下さい」と言われてしまった。スタジアム
での席はバックスタンド2階の上段。ちょうどゴールラインの延長上なので心臓に良
くない場所だ。ゴール裏スタンドが目の前に見えて応援するには一体感を持てる場所
だ。試合前のウオーミングアップが始まった。選手が出てくるだけで凄い歓声が響き
渡る。双眼鏡でスタメンをチェックする。どうやら鈴木、柳沢のツートップで、伸二
は元気そうだ。市川がいるということは伸二は左で先発だ。よしよし。      

ウエーブが起きる。二条のウエーブがスタジアムを回っていく。ウエーブとともに歓
声が大きくなってくる。応援はホーム側ゴール裏がリードするようだ。ユニデカ旗が
スルスルと広げられ大きな歓声。そしてウオーリアが始まる。浦和レッズのウオーリ
アとは比べ物にならないが、浦和のスタジアムにはウオーリアが良く似合う。ニッポ
ンコールはスタジアム全体が呼応する。そして大好きなアイーダが始まる。伸二に届
けと歌い手を叩く。さあ決戦だ。                       

高ぶる気持ちを抑えるように起立してベルギー国歌を聞く。そして君が代。選手に届
けと力一杯歌う。フランスのトゥールーズではスタジアムに入れず、公園のオーロラ
ビジョンの前で歌ったのだ。今、選手の前で歌えることのうれしさ。私の国歌は国に
歌うのではなく選手に向かって歌っている。                  

歓声と嵐のようなフラッシュの中でキックオフ。さあ戻ることの出来ない戦いの始ま
りだ。緑のピッチ上を青の戦士が走る。我々は声でその背中を押す。ヒデがコーナー
で倒される。ボールはラインの外へ「コーナーだぁ!」「よっしゃぁ!」ところが主
審はゴールキックを指示。ここで思いっきりのブーイング。スタジアムが揺れた。思
えば、この最初のブーイングが主審の判断を偏らせるもとになったのかもしれない。

その後の笛はことごとくベルギー寄りになっていったようだ。心配していた始めの5
分は何ごともなく過ぎ、お互いが手探りで慎重に対峙しているのがよく分かる。動き
が少し堅いが、ベルギーの方がぎごちない動きが多い。声を限りのニッポンコールと
手拍子。選手の心を鼓舞し続けなければここにいる意味はない。周りの人たちと声を
合わせて叫び、歌い、手を叩き、腕を突き上げる。スタジアムは一体になっていた。

日本のゴールライン延長上の2階席だったためゴールとクロスするシュートがみんな
入るように見えて息を飲む事が多かった。ヘディングシュートが2〜3回入ったよう
に見えてその度に悲鳴が上がった。前半は双方慎重な動きに終始し、0:0で終わっ
た。ハーフタイムはひたすら深呼吸して後半に備えた。さいたまスタジアムの芝が完
璧な状態だったのも嬉しかった。芝の修理をしている係員の姿を双眼鏡で見ながら、
彼らも今が真剣勝負なのだなあと考えていた。                 

後半になってゲームが動いた。伸二のロングパスに鈴木が反応し、ボールがネットを
揺らした。先制点を取られて落ち込んだ気分があっという間に吹き飛びスタンドは総
立ち「鈴木がぁ!鈴木がぁ!やったやった!!」両手を振り上げ、叫び、跳ねる。歓
喜の渦とはこのことだ。その後の稲本の逆転弾も美しかった。ボールがネットを突き
刺すのがハッキリ見えた。もう歓喜、歓喜の嵐。天にも昇る心地とはこのことだ。 
あのベルギーに逆転した。このままいけば勝てる!応援にも熱が入る。歌と手拍子は
さらに強さを増し、青い選手の背中を押し続けた。               

ベルギーの同点弾の瞬間、ため息と悲鳴が一瞬スタジアムを沈黙させた。しかし、す
ぐに「行ける!行ける!」「まだまだ!」「まだ同点だぁ!」と声が上がり、更に強
いニッポンコールが湧きああがる。ここが肝心だと精一杯の声を振り絞って叫び、手
を叩く。選手も決して気落ちすることなく攻め続けた。そして稲本の逆転ゴール!!
スタジアムが揺れた。総立ちの観衆。「やった!」「勝った!」「よしゃあ!」誰彼
と無く抱き合い両手を突き上げる。ところが、様子がおかしい。選手がセンターに戻
らない。何があったのか分からないままフリーキックで試合再開!「??????」
どうやらファールを取られたようだ。いきなりスタジアム全体にものすごいブーイン
グが沸き上がった。それはないだろう審判!                  

最後のベルギーは同点狙いに変えたようで、捕まえきれなかったのが悔しい。それに
してもあの3点目が消されたのは納得出来ない。今日の審判はあきらかにおかしかっ
た。最後に楢崎が相手選手を倒したのも見逃した。今日のジャッジについてはっきり
言わせてもらえば、柳沢が倒されたのはPK、稲本の得点は得点、楢崎のファールは 
PKというのが本当だろう。やはりベルギー寄りのジャッジだったことは否めない。 

そしてタイムアップの笛。試合が終わった。2対2の同点、勝ち点1をもぎ取ったが
勝った試合を同点にされてしまったようで釈然としない。それは確かに日本がベルギ
ー相手に勝ち点1を取れたのは嬉しい。納得できるジャッジであれば喜んで結果を受
け止めたのだが・・・試合の後もその場で動けず、カミさんと二人で「あれはないよ
な・・」などと審判への文句を言い合っていた。呆然としたまま、スタジアムの後か
たづけを眺めていた。                            

スタジアムの外では大勢の人が写真を撮り合ったりしていた。ゆっくりとスタジアム
から出て、私たちもその中に加わり「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ!」などとかけ声をか
けて遊んだ。こうして日本対ベルギー戦は終わった。赤い悪魔はどんな思いでピッチ
を後にしたのだろうか。日本は強くなった。4年前から比べると本当に強くなった。
あの時は3戦して3敗、得点1に終わった。今日は引き分け、勝ち点1、得点2だ。
決して弱くないベルギー相手に堂々と戦った。                 

自信を持て!日本代表。                           




 
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