浦和レッズ初優勝!


2003年のナビスコカップ決勝は浦和レッズが鹿島アントラーズに勝った!



国立競技場の前で記念写真を撮る。今日はぜったい勝つ! どこもかしこもレッズサポの行列が続く。

11月3日、国立競技場ナビスコカップ決勝。キックオフの2時間前に競技場に到
着し、ゲートの手前で記念写真を撮る。ホーム側SA席なのだが、係員からぐるりと
一周して入ってくれと言われた。競技場の外周通路を歩きながらレッズサポの多さ
に今さらながら驚く。人波をかき分けるようにメインスタンド裏からアウェイゴー
ル裏のレッズサポ密集地帯を通り抜け、バックスタンド裏を通り抜け、やっと22
番ゲートにたどり着いた。アントラーズサポとの衝突を避けるための手段だから仕
方がないのだが、今さらながらレッズサポのこの試合にかける熱い思いを感じた。

席はホームゴール裏のすぐ横で、本来ならアントラーズサポーターが密集している
べき場所なのだが、ほとんどがレッズサポーターだった。右前にアントラーズサポ
のカップルが肩身が狭そうにしているのが、何だか可哀想に見えた。上段から声が
かかり、赤いビニールシートが配られてきた。試合前にこれを掲げてくれとのこと
。いつも駒場でやっているのですぐに了解し、空席にも配っておいた。     

スタンドはレッズサポばかりで真っ赤になっている。

持参したLフラッグをケースから引っ張り出して振る。あちこちで旗が振られて、
徐々に雰囲気が盛り上がってくる。ひときわ大きな歓声が上がり、GKの都築が出
てきた。ウオーミングアップを見る限りはいつも通りで落ち着いている。持参した
ウイスキーを飲みながらアントラーズの応援席を見るが、何だかいつもよりも元気
が無さそうに見える。去年はもっと威圧的に見えたのだが、今のチーム状況を反映
しているのだろうか。人数も去年よりも少ないようだ。            

どんよりとした空の下、いつ雨が落ちてきてもおかしくない状況で、合羽をすぐに
出せるようにしておき、思い出したように旗を振る。そして大歓声の中、選手が登
場してウオーミングアップが始まった。観客席は旗が乱舞し、声を限りの声援が飛
ぶ。双眼鏡で一人一人を確認する。みんな元気そうだ。ふと見るとアントラーズの
選手が出ていない。トニーニョ・セレーゾ監督は時々思い切った采配を振るうこと
があるのだが、ウオーミングアップを見せないのも、そうした戦術の一つでもある
のだろうか。ここに至って先発メンバーを隠しても仕方ないと思うのだが。   

そして、待ちに待った先発メンバー紹介。いつもの駒場のようにオーロラビジョン
に映像が流れ、都築を先頭に一人一人が紹介され、旗の乱舞と絶叫と拍手に迎えら
れる。この一戦にかけるサポーターの声が国立競技場に響き渡る。続くアントラー
ズの選手紹介は大きなブーイングで迎えられ、否が応でも決勝の雰囲気が盛り上が
ってきた。それにしてもピッチに敵の選手がいないのは、何だか変なものだ。  

先発メンバー紹介で旗を振る。 選手入場の時に掲げた赤のビニールシート。全体は三色に。


国立競技場全体が三色に染まった。

選手入場の時の演出は素晴らしかった。赤、白、黒のレッズカラーに国立競技場が
染まったのだ。アントラーズのゴール裏以外、全ての席がレッズサポーターによっ
て占められているように見えた。選手達もこのスタンドを見れば勇気づけられるに
違いない。旗を振ることは出来なかったが、シートを掲げているサポーターからさ
えどよめきが沸き上がったほどだった。そして歓声の中でキックオフ、運命の時間
がスタートした。                             

試合開始と同時に雨が落ちてきた。あわてて合羽を着る人の動きで観客席がざわめ
いていた。そんな中でいきなり田中のクロスにエメルソンのゴールが来た!総立ち
のスタンドだったが目の前の線審が旗を挙げていた。オフサイドだ。スタンドから
「ええ〜〜、ウソだろう」「オフサイドじゃないよ」「審判しっかり見ろ!」など
と大声が上がる。試合の入り方がじつに良かった。最初から前がかりになっていて
エメも田中も切れがいい。ワクワクする始まりだった。            

そして前半13分、目の前の達也から糸を引くようなクロスがゴール前の山瀬に向
かい、山瀬が合わせると無人のゴールにボールが吸い込まれて行った。まるでスロ
ーモーションを見ているような一瞬だった。今度は間違いなくゴールだ!スタンド
は総立ちで、両腕を突き上げる。旗が振られる中で山瀬が平川と抱き合って喜んで
いる。「よお〜し、やった」「ヤマセェェ〜〜!!」声を限りに叫ぶ、叫ぶ。  

主審の上川さんが鹿島ディフェンスのエメへのファールに対して厳しく取ってくれ
るのが有り難かった。大岩のディフェンスは体で来るので怪我をしなければいいが
と思っていたので、最初にカードを出してくれたのが有り難かった。あれで、鹿島
ディフェンスは動きを縛られたのかもしれない。雨が激しくなったのでポンチョを
着る。もやで向こう側が霞むような状態だ。もやの中で赤い選手(アントラーズ)
の動きが激しくなってきた。                        

そんな中で30分過ぎにアクシデントが起こった。コーナーキックのこぼれ玉を争
って、選手どうしが激突したのだ。スタンドは騒然とした。誰と誰がぶつかったの
か分からず、双眼鏡で確認した。一人はエメだと分かったが、もう一人がピクリと
も動かないので、誰だか分からない。「誰だろう、啓太か?平川か?・・」となり
の人が「啓太はいますよ!坪井じゃない??」「ええ?!、坪井か?」スタンドも
混乱していた。坪井はそのままタンカで医務室へ、エメは頭に包帯をグルグル巻き
にして出てきた。オフトは坪井の交代を告げないまま試合が再開された。    

この時間帯は体が硬直したままだった。坪井がいない。一人少ない、都築、何とか
頑張ってくれ、前半このまま行けば何とか手を打てるはずだ。アントラーズの怒濤
の攻撃が始まった。スタンドは悲鳴と安堵の溜息が交互に沸き上がり、騒然として
いた。席から遠いサイドの攻防は霞んでいて見にくく、それが余計に不安感をあお
っていた。正直なところ、この時点で前半の同点は覚悟した。ところが都築が頑張
った。スーパーセーブの連発で、何とか前半を乗り切ったのだ。上川さんの笛が鳴
った瞬間、拍手と都築コールが起きたのは自然な気持ちだった。        

深呼吸をして落ち着いた。ハーフタイムもまだ動悸が納まらない。坪井は大丈夫な
んだろうか・・・エメは大丈夫なんだろうか・・・交代するとしたら誰が出て来る
のか・・・。雨に打たれながら、体を暖めるためにウイスキーを飲む。カミさんも
合羽を着込んで小さくなっている。旗は雨に濡れてずっしりと重くなっている。 

後半が始まった。エメと坪井が包帯で頭をグルグル巻にして出てきた。坪井の姿を
発見した時に、思わずグッと来てしまい、喉が詰まった。涙目になってしまったの
をごまかすように叫ぼうとしたのだが、声がかすれて裏返ってしまった。坪井よ、
お前は凄い奴だ。素晴らしい闘志だ。本当にこういう選手を応援出来ることを誇り
に思う。                                 

そして後半始まってすぐにエメが爆発した。トップスピードでもやの中ゴールに向
かって突っ走り、秋田を置き去りし、曽ケ端をかわし、大岩までも置き去りにして
無人のゴールにボールをけり込んだ。あっという間の出来事だった。スタンドは総
立ちになり、思わずカミさんと抱き合って叫んでしまった。「エメ〜〜〜!!!」
そしてその何分後かに誰かアントラーズの選手が退場になり、これで勝てるかもし
れないと思いはじめ、直後の達也の3点目で「勝った!」と思った。      

達也はなんて凄い選手になったのだろうか。ドリブルの速さはもちろんだが、ディ
フェンス二人をあっという間に置き去りにして、右足を一閃!、ボールはネットに
突き刺さっていた。日本代表GK曽ケ端も手に当てるのが精一杯という強烈なシュ
ートだった。こうして1試合1試合成長してゆく選手なんてそうはいない。素晴ら
しい成長を目の当たりに実感できるなんて貴重な体験だ。           

雨で向こう側が霞んでいる。 雨のスタンドも熱気は充満している。

その後は雨も激しくなり、アントラーズも元気がなくなり、淡々と試合が進んでい
ったような気がする。負ける気はしなかったので、いつまでもこのまま試合が続い
ていてもいいような気がしていた。歌も手拍子も楽しかった。エメの4点目は良く
見えなかったので、何があったか分からなかった。みんなが立ち上がって叫ぶので
一緒になって騒いだ。もうお祭りみたいなものだった。そして勝利の歌「We are
Diamonds」が聞こえてきた。雨でマフラーをしていなかったので、旗を両手で広
げて声を合わせた。涙が出そうになった。国立の決勝でこの歌を歌える展開になる
ほどうちのチームは強くなったのだ・・・・                 

試合終了の瞬間。 オーロラビジョンで表彰式を見る。

上川さんの手が上がり笛が鳴った。「勝ったぁ〜〜〜!優勝だぁ!」もう雨なんか
関係ない。旗を思い切り振る。選手の整列、表彰、達也のMVP、もう全てが夢の
中の出来事のようだった。バックスタンドから選手の様子はまったく見えなかった
ので、オーロラビジョンの画面でみんなの笑顔を見ていた。ウイニングランが始ま
った時にゴール裏から何人ものサポーターが乱入し、ウイニングランが途中で終わ
ってしまい、我々の前に来なかったのは残念だった。             

みんなオーロラビジョンに注目。 何か表彰をやっているのか、撮影でもやっているのか??

エメがピッチの上で一人でカップに抱きついて崩れ落ちるのを見ていたら、涙が流
れてしかたなかった。本当にみんなよくやった。偉いぞ。ありがとう。     

駒場スタジアムで優勝報告会。JICKYさんとユーリさん。 浦和の居酒屋「力」の前。ものすごい歓声が続く。



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