西別川へ行く4


3日目の朝はポイント争いに負けて大草原コースへ。


三日目の朝2時半に起きたら女性陣もゴソゴソと起きてきた。聞くと渡部さんの案
内で開陽台に夜明けの景色を見に行くのだという。お互いご苦労なことだと笑い合
う。連日2時半起きで釣りに行くなんて、たぶん知らない人が見たらキチガイ沙汰
なんだと思う。でも我々はその為に来た訳だから何のためらいも気負いもない。今
日は高見橋から下る8時間コースに入るため2台で出発する。わたるさんが別の車
で走っている。                              

夜明けの風景が素晴らしかった。朝焼けの空の下、草原の露が蒸発して霧になり地
上1メートル付近に白絹のような帯を作る。その白い帯から防風林のシルエットが
浮かび上がり幻想的な風景を作り出す。オホーツク海から登る太陽がそこに光の矢
を放ち赤く染まる霧の帯を作り出す。思わず車を停めて写真を撮ってしまった。そ
の白い霧の帯を突っ切るように車を走らせるのも北海道ならではのドライブだ。こ
の風景を渡部さんたちは開陽台から見下ろしているんだなぁと思いながら、さぞか
し絶景なのだろうと想像していた。                     

高見橋に着いた。ところが恐れていた事が現実になる。釣り人の車が停まっている
のだ。すぐに相談する。先行者があった場合はその下の7時間コースに入ろうと決
めていたので、すぐに7時間コースの入渓点に車を走らせた。ダートの道を走るこ
と5分、7時間コースの入渓点が見えてきた。ところが、ここにも車の姿があった
。しかも、今来たばかりという感じで着替えている。これでは仕方がない。再度相
談し、昨日入った大草原コースに行くことに決めた。             

大草原の牧場の真ん中に車を停め、一台の車に乗って交差点にかかる橋まで走り、
そこから入渓しようという事にした。ところが橋まで走ったらそこにも2台の車が
停まっている。これはもうどうしようもないと覚悟を決め、頭をはねる事にした。
橋から入った人は昨日我々が入った地点には到達していないはずなので、その前に
出てしまおうというせこい考えだ。日曜日にこれだけの釣り人が出るとは思わなか
ったので非常手段という訳だ。それにしてもすごい人だ。出発が1時間遅かった。

迷うことなく入渓し、昨日と同じ場所で釣り始める。ここでもまたわたるさんが2
連発でかけた。くろさんも続く。わたるさんは絶好調だ。赤金のシンキングタイプ
ミノーが面白いように魚をかける。西別川さんが赤金はダメだと言っていたのが嘘
のように好調だ。私はフックが絡むというトラブル続きでどうにも釣りにならない
状態が続く。フックの大きさを変えるなどの対策が必要のようだ。3回投げて2回
絡むようでは釣りにならない。                       

今日も晴れていて、これで3日連続の晴れということになる。こんな事は初めてだ
。今回ばかりはオホーツク高気圧に感謝しなければならない。抜けるような青空の
下で魚をいっぱい釣って、川に漂い歩きながら胸一杯の充実感を満喫していた。ニ
ジのポイントとおぼしき開けた流れや太い流れの場所に集中的にルアーを投げるが
たまに掛かるのは20センチ前後のアメマスばかり。ニジが出ない。今回は総じて
ニジの出が悪い。SHINYAさんによると本来のニジのポイントに【ピー】が入って
しまっていて、ニジが違う場所に追われているんじゃないかと言っていた。ところ
が、その【ピー】さえも出ないのだから仕方もない。この時点でとにかく私は30
アップのニジしか興味が無くなっていた。                  

絶好調のわたるさんに続き、くろさんもそこそこの釣果をあげている。私は8時を
回った頃から脱渓点の心配ばかりしていた。昨日上がった場所はかなり後方になっ
ている。もうここは未知の世界だ。牧草地に上がれればいいが、そうでない場合は
渓畔林帯を迷う可能性もある。なにせ、これだけ蛇行している川だから方向を間違
えると逆方向に歩いてしまう可能性すらあるからだ。二人ともまだまだ釣りたそう
だったが、思い切って声をかける。「そろそろ上がりましょう」これ以上下流に下
ったら戻れなくなってしまうのではないかという恐怖もあった。        

川からブッシュ帯に上り、歩きやすい所を選びながら右岸の崖をよじ登る。そこに
はまだ刈ってない牧草地が広がっていた。遠くに送電線と交差点の看板が見える。
「良かった、車のある場所が分かる」このときは本当にほっとした。もう歩くだけ
だと牧草地を歩き始める。踏みあともあったので、そのまましばらく歩いていたら
車が見えてきた。                             

車に帰って着替える。二人はこれから一旦宿に帰ってから知床に向かうとのこと。
私はこのまま最下流のムラサポイントに行くことにした。何といっても30オーバ
ーのニジに出会いたい。オショロコマを何尾釣ってもこの乾きは癒されない。二人
と分かれて一路車を走らせると、何だかやっと西別川で釣りをするんだという実感
が湧いてきた。ガイド役というのは何やら神経を使うもので、それから解放されて
やっと自分の釣りが出来るという嬉しさだったのかもしれない。        



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