井戸沢の流れ



井戸沢のテン場前で焚き火をしながら川の流れを眺めていた。その透明な流
れは水深を浅く感じさせるほどで、清冽な冷たさを感じさせた。水面は鏡の
ようでいて揺れ動き、渕尻では一転して白い飛沫を上げて奔流となる。奥山
の川の流れが人の目を奪うのはそこでしか見られない何かがあるからだと思
う。この透明な流れの中に棲んでいる魚を思うと、それが「幻」と冠される
ことが不思議でなくなる。秩父の岩魚はまさに奥山の魚なのだ。     





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