岩井渓一郎インタビュー



季刊kurooはロングティペットリーダーシステムの元祖でプロフライフィッシャーの
岩井渓一郎さんに3時間のロングインタビューをさせていただいた。トッププロに肉
薄するにはkurooではいささか力不足とは思ったが、何とか雑誌やビデオでは見られ
ない岩井さんの素顔を伝えられるインタビューが出来たと思う。稚拙なインタビュー
だが、フライフィッシングのエッセンスをそこから抽出していただければうれしい。

     1、フライビギナーに・・  (1月 春待ち号)          
     2、ドライフライの釣り   (3月 春号)            
     3、タックルシステムについて(5月 初夏号)           

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 岩井渓一郎インタビュー その2                      

              【ドライフライの釣り】        

私自身がドライフライの釣りしかしないので、ドライフライの釣りについて伺った。
普段ドライフライの釣りをしながら疑問に思っていること、こんな場合は岩井さんな
らどうするのだろうか?といった事をランダムに聞いてみた。ビギナーゆえの的はず
れな設問もあったと思うが、岩井さんは丁寧に答えてくれた。          

kuroo「まず初めにお伺いしたいのですが、ドライフライの釣りの技術で重要な技術
    というとどんな技術になるでしょう?」                
岩井「これは単純に言って三つしか無い。                   
       1、気付かれないように                    
       2、適切なフライを                      
       3、自然に流す。   この三つに尽きる。」          

kuroo「その技術を身につけるには我々ビギナーはどうしたら良いのでしょうか?」
岩井「これはもう、場数を踏むことしかない。場数を踏めば自然に覚えられる。年間
   130日も釣りをした年もあったが、それをやれば覚えられると思うよ。それに
   プレゼンテーションの練習はキチンとすることが前提だね・・」      
kuroo「ウ〜〜ン年間130日ですか!年間10日そこそこの私にはそう簡単には身に付
    きそうもないですね・・まずは釣りの回数を増やすことか・・・・」   

kuroo「ドライフライの釣りは大変面白い釣りで、私は他の釣り方より釣り方として
    断然上だと思っているのですが岩井さんはどう思いますか?」      
岩井「うん、それは優れていると思うよ。実例として言えば昔いた職漁師の人達が毛
   バリ釣りだったことでも分かるよね、釣れるから毛バリを使っていた訳だろう
   し、餌釣りの方が釣れるんだったら職漁師はみんな餌釣りだったと思うよ。 
   魚は基本的に水面を流れる餌を注視している訳だから合理的な釣法だと思う」

kuroo「でも釣れない魚もいますよね、この釣り方で釣れない魚というのはどんな魚
    になるのでしょうか?」                       
岩井「簡単に言えば水面の餌を食べない魚だよね、具体的に言うと、水温を低い川の
   魚、濁りのある川の魚、釣り師や動物に脅されておびえて隠れている魚かな」

kuroo「私はビギナーの為か深い淵のような場所で釣った経験があまり無いのですが
    この釣りで深いところを釣るにはどうしたら良いのでしょうか?」    
岩井「深い淵の魚はあまり水面を見ていないよね、深さというのは言い変えればタテ
   の広さということになるんだけど、水面までの距離が長いので、餌が水面に集
   中するとは限らない。中層の餌だけで十分だったりするんだよね。それと、こ
   れも勘違いしやすいんだけど、淵でもどこでも魚には居間と食事をするダイニ
   ングルームと寝室があるんだよ。水深のあるところが居間だとすると、食事を
   するダイニングはカケ上がりやヒラキの部分にあたる。だから淵尻やヒラキが
   第一級のポイントになる訳だよね、それを追い込んで、寝室に逃げ込んだ魚に
   一生懸命ルームサービスのノックをしているようなもんなんだと思うよ。もっ
   とも、餌釣りの醍醐味はそのルームサービスにあるんだけどね・・」    
kuroo「確かに餌釣りが長かったせいか、つい餌釣りのポイントを攻めていたのかも
    知れませんね。」                          

kuroo「岩井さんの場合釣れないときどんな基準でその川の状況を判断しますか?」
岩井「設問とはちょっと違うけど、僕は魚がそのポイントのどんな部分から出たかを
   見る。ヒラキで釣れれば先行者はいない良い状態、とかね。落ち込みや白泡の
   下から釣れるようなら先行者ありとかね、まずそれを見る。」       

kuroo「釣り場ではどんな事を考えてフライを選びますか?」          
岩井「それはやっぱりハッチを見るよね、その後はその釣り場での見やすさかな・」

kuroo「特定のパイロットフライとかは決めていますか?」           
岩井「季節によって違うし、TPOでまったく違う。最初のフライとか決めることは無
   い。確かに釣れるフライ釣れないフライはあるけど、フライの良し悪しは完璧
   な流し方をして初めてその差が出るものだから、まずプレゼンテーションの技
   術レベルをクリアしてからだね、悩むのは・・・」            

kuroo「釣れないときフライを交換しますよね、その時前のとどう違うフライを選び
    ますか?」                             
岩井「それは状況によって違う、サイズを落とすこともあるし、種類を変えることも
   あるし、いろいろだね・・」                      

kuroo「ドライフライは構成要素が沢山ありますが、大切なものは何でしょうか?」
岩井「フライをシンプルにしていくと、ハックルは無くても良いのではないかと思う
   こともある。浮力や視認性というのは人間の側の都合でね、CDCダンとか本物
   に似たフライを使えば釣れるよ。フライの構成要素で釣るときに僕が優先する
   のはまずパターン、次にサイズ、次に浮力、そして色という順になるね。」 

kuroo「フライフィッシングを始めた時に教えてくれた人が、一年間エルクヘアカデ
    ィスだけで釣りなさいと言ったのでやったことがあるのですが、岩井さんだ
    ったら一年間一つだけで釣れと言われたら何で釣りますか?」      
岩井「一つだけというのは難しいねえ、せめて2つくらいにしてよ。一つはCDCダン
   20番。二つ目はソラックスダン16番。三つ目が許されるならブラックハンピ
   ーパラシュートタイプ12番という感じだね、でも迷うね。」       

kuroo「春先の釣りの事なのですが、よくマッチ・ザ・ハッチの釣りについて本に書
    いてあります。私は正直あんなに真剣にフライ交換しないので分からないの
    ですが、フライの種類を変えることはそんなに大切な事なのでしょうか?」
岩井「特定の餌を捕食しているライズにはフライの選択が決定的な釣果の差をつける
   ことがある・・・ただ、不自然な流し方のドンピシャのフライよりも自然に流
   れているハズレフライの方が釣れることもある。流し方の方が先だね。完璧な
   流し方がコンスタントに出来るんだったら、こういう質問も有効だと思うけど
   ね、だいたいさあ、野球に例えれば良く分かるけど、150kの速球をバットの
   長さや重さを変えたからって誰でも打てる訳では無いよね、でもジャイアンツ
   の松井(自分の好きな選手の名前を入れてもらって構いません)なら簡単に打
   つかも知れない。その松井にとっては、バットの長さや重さを変えることは大
   変な違いになる訳だ。そういうレベルでの話なんだよね、これは・・・」  


kuroo「いろいろと伺う事が出来て良かったです、これでいろいろ迷っていた釣りの
    悩みも解決しそうです。ありがとうございました。」          


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おまけ                                   
      岩井渓一郎の『フッキンング回転寿司理論』            

岩井「よくフライにライズがあって、ドンピシャのタイミングなのにフッキングしな
   いっていうことがあるでしょう。あれって、ホラッ 回転寿司の原理なんだよ
   ね、回転寿司ってさあ、食べたい皿を見つけると、それが一定のスピードで回
   ってきて手が自然に動いて皿を取るまでが一連の流れになってるじゃない  
   魚の補食って、あれと同じなんだよね。魚は一定のスピードで流れてくる餌を
   ジッと待っている訳だ、その時ドラグがかかると、餌の流れる方向とスピード
   がサッと変わる!魚はその動きに反応してジャンプするんだけど、食べている
   訳じゃない。自然に最後まで流せれば静かに食べてくれるのにね・・これって
   フッキングの回転寿司理論って言うんだよ(笑)」            

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 お知らせ
 
1月〜2月につり人社から『岩井渓一郎九州のヤマメ釣り「春のマッチング・ザ・ハッ
チ」』が発売されます。30cm前後のヤマメがバンバン出たとのこと、岩井渓一郎 
ファンには見逃せないビデオです。お楽しみに