その2【西別川はどこだ?】編

あこがれの西別川にイザ!見参




2日目、朝3時半。皆ゾロゾロと起き出す。誰かが「よし、60センチに逢いにいくか!」
とつぶやくように言う。皆さっそく釣り支度にかかる。まだ寒いがさすがに北海道の朝
は早くて、外はもう明るくなっている。                     

コンビニで食料を調達した4台の車は一路西別川を目指す。ここから車で1時間かかるの
だそうだ。今日は高橋さんが運転を担当している。どこまでもまっすぐな牧場の中の道
を霧が深くて視界が悪いのだが、時速100k〜120kのスピードで突っ走る。     

何度か交差点を曲がり、いくつかの街(集落)を通り抜け、大きな墓地の横の細い道に
入っていく。大きなすりばちの底のような行き止まりに車を何台か止められるスペース
があり、どうやらここが目的地のようだ・・・しかし、川はどこだ???      

西別川さん、MICKEYさん、道草さん、ムラサさんが上流へ行き、ひろしさんを先
頭に、山男魚さん、高橋さん、野村さん、Kuny'sさんと私がここに残る。ひろしさんと
Kuny'sさんがルアー、高橋さんと私がフライ、山男魚さんと野村さんが餌釣りである。

6人は一列になって牧場を歩く。川はどうやらずいぶん離れているようだ。牧場の横から
けもの道に入る、踏みあとをたどって薮の中を歩いてまた牧場に出る。牧場境のバラ線
をまたいで牧草が繁っている中を黙々と歩く。これは釣りに行く姿ではなく、まるでオ
リエンテーリングか何かをやっているかの様だ。ひろしさんも一度来たきりで道がよく
分からないらしい。何度か迷いながらもやっと川に出ることが出来た。どうやらこの川
はアプローチが最も神経を使うようだ。                     

西別川は滔々と流れている。岸寄りは泥が堆積していて深いが中央部分は砂底で浅くな
っている。本当に写真で見た通りの川だ。皆、川の中に立ち込んだまま釣り支度を始め
る。高橋さんが一番速い、さっそく竿を振りながら気合いを掛けているが気持ちが先だ
ってしまうのか、ラインを木にかけたり竿にからませたりしている。        

そんな中、第一号が山男魚さんに出た。皆でバシャバシャやっている対岸でいきなり「
お〜〜、釣れた!ヤマメだあ!」20センチくらいの魚が元気良く竿先に踊っている。
この魚を見てみんなの目の色が変わった。高橋さんを先頭に6人はそれぞれの方法で釣
り下る。腰まである重い流れに流されるように下りながらの釣りはどうも勝手が違って
いつものようなリズムが掴めない。エサ釣りの人は好調だが、フライはどう分が悪いよ
うだ。高橋さんの「 アチャ〜!コンチクショー」「 カーッ!・・チャーッ!」とい
う叫び声が静かな川面に響く。そうですゆったりと重い流れの川は瀬が少ないのでとて
も静かなのです。川が二股に分かれている場所で山男魚さんが大きなアメマスを掛けた。
35センチはあろうか?タモに収まった大きな魚を見ているとファイトが湧いてくる。 

ニンフにウエイトをかませてロールキャストで対岸を探るが反応は無い。何せニンフの
釣りは始めてなのでどういう形でアタリが出るか分からないというのだから、はなはだ
心もとない。野村さんの竿に山女魚がヒット。Kuny'sさんのルアーに山女魚がアタック
私のニンフにはアタリがない。                         

対岸の倒木から水がヨレている深みへとロールキャスト。竿を高く保持してラインだけ
を見ながらアウトリガーの釣り。かすかにラインの先が変化した!アワセをくれると深
い水底からハッキリと魚の手応えがする。ラインを急いでたぐると20センチの山女魚。
「 おお〜!西別川の山女魚だあ〜 」うれしー!野村さんに写真を撮ってもらいリリ
ース。同じ場所で同型のアメマスが出た。これで2尾。              

上陸ポイントより釣り下がった為、流れに逆らって100メートルほど戻る。ところが、
これが大変な作業だった。腰までの流れの中、川底の砂に足を取られて進めない。少し
づつ上流へ歩きながら目印の送電線の下まで来たときはグッタリしてしまった。この川
では上陸地点を間違えると帰れる保証は無い。                  

車まで戻り、ひと休みしてから再度同じ場所に入渓する。今度はルアーで挑戦すること
にした。高橋さんや野村さんが転向だの日和見だのとあれこれ言うが、どうもこの川で
は私のフライ技術は通用しないのだから仕方ない。                

朝と同じ場所から釣り始める。皆はもう少し上流から釣ろうということになり、上流へ
行く。私は一人でのんびり釣ろうとそのまま釣り下る。ところがどうだ、いきなりスピ
ナーで20センチの山女魚が釣れたのだ。思わず振り帰って見ると山男魚さんがニッコリ
笑っている。                                 

この川は今日はルアーの当り日だ、それから追い付いてくる5人と合流するまでに5尾の
レインボウ、ヤマメ、アメマスと対面出来たのだ。ルアーを追ってくる魚の数は数え切
れない。一度は30センチを越える影がスウーっと寄ってきて心臓が止まるかと思うくら
いドキドキしたがバイトはしてくれなかった。ルアーは面白い。          

合流した野村さんが妙に『ハイ』だ、どうやら『沈』してカメラをダメにしたらしい。
しきりに「 kurooさんも沈してみたら 」と言い、先に歩かせようとする。困ったも
のだ。自分もカメラには注意しなくては・・・                  

前回と同じポイントで上陸する。とその時下流から二人のフライマンが釣り上がって来
た。高橋さんが聞いたところによると下の橋から入って6時間上流へ釣り、その後2時間
で橋まで釣り下るのだそうだ。この川を6時間上流へ歩くことがどれだけ大変なことか!
何てタフな人達だ。                              
集合場所にはすでに上流部隊が帰ってきていてビールを飲んでいる。大分楽しい釣りが
出来たようだ。お互いの戦果を報告し合い、話がはずむ。ひとまずキャンプ場に帰るこ
とになり、西別川に別れを告げる。                       

キャンプ場でお昼の準備、お昼はそうめんだ。薬味のネギを刻む。快晴の空の下、オホ
ーツク海からの風が涼しい。緑の芝生と青い海のコントラストが鮮やかだ。食事のあと
全員で記念写真を撮る。