川を守るのは誰か

川を守るために戦っている人達がここにいる。



だいぶ前の話で恐縮なのだが、10月17日に代々木で「川を守るのは誰か。」という
イベントがあった。徳島・吉野川第十堰、熊本・川辺川ダム、徳島・木頭村の場合に見
る川の今と未来を考えるイベントである。東京という遠い場所からではあるが、多少の
縁もあり地元で戦っている人の話を聞きたいという気持ちもあり、雨の代々木を歩いて
行った。                                   

代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターの会場に入るともうビデオが巨大な
画面に流されていた。川辺川の環境ビデオである。気持ちの良い川の流れが延々と映し
だされている。釣り人が川辺川を訪れた友人を案内するという設定で物語りが進む。 

四季の川辺川の風景が鮮やかな映像に切り取られ、心の奥の深いところに届くようだ。
きれいな川を残そう。もうダムや堰はいらない。と自然に見る人に訴えている。こんな
手法もあったのだ。声高に「ハンタイ!」と叫ぶよりも心に届き、長く影響を与える。

高橋ユリカさんがまさのあつこさんと話している。2人とも忙しそうだ。渡辺さんは今
日のイベントの主役、右へ左へと忙しい。木頭村の藤田村長が会場に入ってきた。目が
合ったので軽く挨拶するとニッコリ笑ってくれた。思っていたよりも小柄な人なので驚
いた。この体からあの建設省に対して一歩も引かないエネルギーが出るのだから、人間
というのはつくづく精神の存在なんだなあと思う。                

1:00 司会は高橋ユリカさんが担当している。                
今日発足した吉野川東京の会の藤田会長があいさつに立つ。            
川辺川東京の会の渡辺さんがあいさつする。                   

1:15 川辺川の環境ビデオが流される。市房ダム下の惨状、球磨川の予想以上の汚
さに驚く。そして川辺川がいかにきれいか、かけがえのないものであるかを説得力ある
映像で訴える。人吉市、相良村、川辺川と球磨川の合流点の映像は迫力がある。   

続いて吉野川のスライド上映。四国三郎・吉野川、全長198キロの美しい川である。
第十堰の美しい風景。この吉野川に建設省は1000億円をかけて河口堰を作ろうとし
ているのだ。住民はそれを望んではいない。吉野川で日本の河川行政が問われている。

1:30 野田知佑さん「川を壊しているのは誰か?」              
カヌーイストの野田知佑さんの講演。野田さんが言う。日本にはカヌーで遊べる川がな
くなってしまった。もうすでに那珂川くらいしか残っていない。長良川の時から川を守
る運動をやっているのだが、建設省のやり方には腹が煮えくり返っている。吉野川のご
まかし、ウソの上にウソを重ねる体質に対して、我々はケンカをしなけりゃいけない。
大きな声で反対しなけりゃダメなんだ。ケンカをしなくなった男達よ、誰かがやるんじ
ゃなくて、自分がやらなきゃいかんのだ。ケンカしろ!              

続いて、吉野川シンポジウム代表の姫野雅義さんの吉野川現状報告と今後の活動報告。
住民投票に向けて運動をしている。阿波町の議会が河口堰反対決議をした。一つは吉野
川を次の世代にこのままのかたちで残すため、一つは大きな公共工事が住民の税金負担
になり未来に永くお金がかかるため。議会の反対決議は大きな意味を持つ一歩だ。  
現在住民投票に向けて運動中だが、県知事は「科学的な検討をした結論である。単なる
ムードに流された結論を出すのはどうしたものだろうか?」などとふざけた事を言う。
建設省は4キロの堤防を20センチ上げるだけのために1000億円の公共事業をやろ
うとしている。県内の世論調査では賛成が多数になった事は一度もない。と姫野さんは
クールに淡々と訴える。                            

続いて、川辺川ダム利水訴訟弁護団の森 徳和(のりかず)弁護士の話。      
治水の話、遊水池の話、水と上手に付き合う事で治水をしてきた先人の知恵。分かりや
すい話から川辺川ダムの話に入る。地元農民が強引に同意させられた土地改良事業につ
いて裁判を起こしている事、当初言われていた4つの目的がすでに無くなっている事な
どを順序良く解説してくれた。最後に地元熊本の訴訟原告団の人達が最前列に並び会場
から盛大な拍手を浴びた。                           

次は、徳島県・木頭村村長の藤田 恵さんの話。                 
軽い口調で冗談を交えながら話してくれたのだが、内容は深刻だ。ダムに頼らない村作
りのために作った木頭ヘルシックがピンチなのだ。3億円借金して作った会社だが現在
5000万の累積赤字なのだそうだ。その数字をダム推進派に政治的に利用されようと
している。社債を発行して急場をしのぐ事を考えている、一口5万円なのでここにいる
皆さんなら一人二口くらい買ってくれるでしょうと言うと会場から笑い声が湧く。  
ここに来る時に乗った飛行機が落ちてくれれば、こんな苦労しないでも済んだんだけど
と言うと会場爆笑。藤田村長は言う、何故ダム建設に反対するのか。まず作る意味が無
い、そして代替手段を検討していない。水不足は水利権の調整で解消する。いくらダム
を作っても山がダメでは水は出来ない、山の手入れが一番必要な事なんだ。

20分間の休憩に入る。会場の後方に各団体の広報誌やさまざまな品物が並んでいる。
本やTシャツもたくさんあるのだが、私は川辺川の環境ビデオを買った。各地の運動へ
のカンパ箱も設置されていて大にぎわいだった。まさのあつこさんと藤田村長がにこや
かに談笑している。                              

休憩後、法政大学の五十嵐教授の講演「黙っているとどんどん税金で川が壊される」。
五十嵐先生の話はテンポ良く、次から次へと現在の政治の裏側をえぐり出す。会場は水
を打ったような静けさで、皆さん真剣に聞いているのがよく分かる。メモを取る時間も
ないくらい早いテンポで話が進むので、私の頭では理解しきれない部分が多かった。こ
れは後で先生の本をじっくり読む事で理解するしかないようだ。          

時代の先端情報、それも政治の世界の話となると、ここで一つ一つ書くのもためらうの
で割愛させて頂きます。今から思うと民主党の管代表の愛人問題の当事者だった女性は
五十嵐先生のゼミに通っていたんですね。あのときの話の裏側が見えたような気がしま
した。その後の質疑応答は五十嵐先生に質問が集中しました。楽しい話がいっぱい聞け
て有意義な一日でした。                            

皆さんもチャンスがあったらこういったイベントに参加してみませんか?けっこう面白
いものですよ