秋の道東 3、別寒辺牛川

海から遡上したアメマスのファイトは強烈。


秋の道東 3、別寒辺牛川

朝3時、釧路の街は真っ白な霧で包まれていた。霧の街釧路・・まさにこれがその白い世界
である。恋人同士ならロマンチックなのだろうが男6人で釣りに行く我々はさっさと車に乗
り込み、真っ暗で真っ白な世界へと走り出す。                    

霧の中のドライブがこんなに恐いものだとは!!・・・西別川さんの車に乗って先頭を走る
私は何度も助手席で無意識にブレーキを踏む動作をくり返していた。とにかく、いきなり真
っ白になって何も見えなくなってしまうのだ。おお〜〜恐い              

鹿が道路を渡り終わったのがヘッドライトの中に見えた。4〜5頭いたようだ。「あれがぶ
つかったらどうなるの?」「もちろん車は大破ですね〜」聞くと、良くある事故なんだそう
である。道東では鹿だけでは無くて牛も交通事故に会うそうだ。この霧はとにかく直前まで
対向車のヘッドライトが見えないくらい濃いのだから、鹿など見えるはずもない。    

途中で2台の車をデポしひろしさんの車とハミングウエイ号の2台で別寒辺牛川を目指す。
霧が晴れてきたが、まだ景色が見えるほどではない。あたりが明るくなるころ目的の場所に
着いた。気温は1度、寒いなんてもんじゃない。おまけに霧で見通しがきかない・・・近く
に「熊出没注意」という看板もあったし・・・すごいところだ。            

霧の中、偵察に行く西別川さんとひろしさんの姿がすぐ霧に消える。フリースを着て車の外
に出るがちょっと追うのをためらってしまった。二人はすぐに帰ってきて「さあ、着替えま
しょう」と号令をかける。全員一斉に着替えを始める。期待と不安が交錯する時間である。

入渓点にキャッチアンドリリースを訴える「営林署」の看板が立っている。漁協ではなくて
営林署の看板である・・・・北海道なんだなあ・・・                 
入渓点の橋から上流にひろしさん、shinyaさん、鵜住居さんの3人が向かい、下流に西別川
さん、ハミングウエイさん、そして私が向かう。この振り分けが天国と地獄の振り分けにな
るとは、この時は誰も気付いていなかった。                     

幻想的な景色の中で釣り下る。霧の湿原に枯れた大木の影がまるで滲み出すように浮かんで
いる。一歩川を離れると手つかずの自然がそこにある。踏み跡がしっかりついているのが唯
一人間の存在を感じさせる痕跡だ。心なし熊避けの鈴の音が小さく感じられる。この薮では
横からいつ熊が出てきてもおかしくない・・・遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。「あれが丹頂
の鳴き声ですよ」と西別川さんが言う。                       

しばらく下ったところでいきなり西別川さんの竿にアタリ!「乗った!、デカイよ・・」と
余裕の表情。竿は満月のようになっている。強引に巻くが、のされてあわててバット部をさ
さえる。抜き上げようとするが、魚の重さでリールのドラグが鳴る。「おお〜でかいよ〜」
とドラグを締め直して改めて「よいしょっ」と言いながら抜き上げる牛川第一号。メジャー
を当てると47センチ!、「おお〜〜」噂は本当だったのだ。第一号に記念写真をパチリ、
西別川さんニッコリ。                               

さて、私である。西別川さんの47センチで俄然やる気になってきた。キャスティングもほ
ぼ狙った場所に投げられるようになってきたし、西別川さんの指導でリーリングもサマにな
ってきた。ところが、である。ガツンと当たりがあった!「やったーデカイぞ〜」などと叫
びながら寄せる途中でふっと軽くなり、バラしてしまった。ああ〜〜・・・・・     

その後                                      
ガツン!・・「やったあ〜」・・フッと軽くなってバラし・・・ああ〜         

ガツン!・・「やったあ〜」・・フッと軽くなってバラし・・・ああ〜         

ガツン!・・「やったあ〜」・・フッと軽くなってバラし・・・ああ〜         

何と4連続で大物をバラしてしまい、二人の顰蹙をかってしまった。おまけにその後すっか
り当たりがなくなってしまったのだ。思うにこの大きさのアメマスはウルトラライトアクシ
ョンの6ピースロッドでは荷が重いのだ。竿が柔らかくて合わせがきかないのだろう。今さ
ら悔やんでも遅いが、湖用のタックルを持って来るべきだったのだ。          

西別川さんはコンスタントに最後尾で釣っている。腕が違うのだが、西別川さんはそれでも
「今日はおかしい。こんなに渋いはずがない」とつぶやいている。「え〜〜そんなに釣って
るのにぃ〜??」                                 

五回目の大きい当たりが来た。竿がグングンと曲がり、腕が持っていかれる。追いアワセを
くれて寄せる。細い竿を気にしながら一気に引き抜く。「やったあ・・・」草の上に横たわ
る白銀の魚体がまぶしく輝いている。ハミングウエイさんが写真を撮ってくれる。私の牛川
第一号である。西別川さんがメジャーを当てると「34センチ!」おお〜〜何と尺上だあ〜
「この川のアベレージだね・・」と西別川さん。ふ〜〜んこれがアベレージかあ・・・  

牛川は底が見えない茶色の川だ。5メートルほどの川幅だが、底が見えないくらい深い。胸
くらいまで一気に深くなっているドン深の湿原の川なのである。U字溝のように岸からいき
なり深くなっているので、落ちないように気を配らなくてはいけないのだ。       

その茶色の川の中にオレンジのルアーが泳ぐ。じつに良く見える。そのオレンジのルアーを
引ったくるように白い影が水中で反転してガツン!と腕に衝撃が来る。ドカン!という感じ
だ。アメマス釣りの醍醐味はこんな所にあったのだ。                 

その後もう1尾を追加、ハミングウエイさんも良型を釣った。何個かのルアーをお助け棒で
救出し、一番高いルアーをロストした。気がつけば日が昇り、濃い湿原の匂い。遠くで丹頂
の鳴き声が聞こえる。「そろそろ上がりましょうか?」と西別川さんの声。それを合図に納
竿した。                                     

入渓点の橋に戻って、上流組の帰りを待つ。もうすっかり朝の寒さは消えて、暑い日差しが
降り注いでいる。しばらくして上流組が帰って来た。「どうだった?」と聞くと、3人が口
を揃えて「爆釣!爆釣!最高でしたよ〜・・いったい何匹釣ったかなあ?」と言う。   
「うっ・・・」下流組3人、絶句。                         
どうやら魚は上流に登っていたらしい。下流はきのう人が入ったような跡があったが、上流
にはなかったらしい。これも「運か!?」・・・鵜住居さんはニッコニコである。初めての
ミノーイングで爆釣、これは病みつきになるに違いない。聞けば今日が誕生日だとのこと、
神様のバースデイプレゼントだったのか〜。                     

ともあれ悲喜こもごもで、別寒辺牛川の釣りは終わった。密かに来年に期す決意をした瞬間
でもある。紅葉に彩られた山道を走りながら来年こその思いを強くした。西別川さん、ひろ
しさんガイド役ありがとうございました。shinyaさん、ハミングウエイさん、鵜住居さん、
また行きましょう。                                

秋の道東、3つの川のそれぞれの味を楽しみました。おいしいものをいっぱい食べて、素晴
らしい景色に感動し、元気な魚に翻弄された3日間でした。すべてに感謝、そして来年も。