8/30 浜松で【志多ら】に感動

久しぶりに音楽の話題です。


8/30 浜松で【志多ら】に感動する

浜松に住む友人が「インプリサリオの会」という会の活動をしている。これは市民が音楽会
を主催しようという活動で、市内にある箱物のソフトを行政だけでは運営出来ないので、市
民のちからを借りて充実していこうというものらしい。                

友人は以前から縁のあった【志多ら】(しだら)という太鼓を中心とした和楽器の演奏グル
ープのコンサートを企画して、それがこの30日に実現したのである。         

浜松には瀬音で知り合った眞田健司さんがいる。ご夫妻の分も合わせて4人分の前売りチケ
ットを手配して、台風の影響で大雨の東京駅から新幹線に乗った。もしかしたら熱海あたり
で止まってしまうのでは・・・と不安だったが、そんな心配をよそに浜松に着いてみればカ
ンカン照りで、駅のホームを長い傘をもってうろうろしている私とカミさんは相当なマヌケ
である。                                     

会場の福祉文化会館へタクシーで行く。ロビーには眞田さん夫妻の笑顔が待っていた。久し
ぶりに会うのだが、二人とも変わっていない。浜松に住み、音楽に造詣が深い眞田さんなの
で誘ったのだが、私自身【志多ら】を見るのが初めてなので、話はとにかく見てからにしよ
うという事になった。                               

友人の主催者、金子さんがやって来た。元気そうである。いよいよコンサートだという高揚
した表情でいろいろな指示を出している。がんばっているなあ・・・          

午後1時の開場時間となり、福祉文化会館ホールに入る。舞台には【志多ら】の文字看板と
大太鼓が中央に据えられていて、期待感を持たせている。何人くらい入るホールなのだろう
か?八分通りの席が埋まっている。私たちは全体が見えるようにと後方に並んで座った。コ
ンサートは久しぶりだし、太鼓というのは初めてなので期待が高まる。場内は子供からお年
寄りまで実に幅広い客層である。お祭りのように老若男女誰でも楽しめるのがこういうコン
サートの特長かも知れない。                            

開演のブザーが鳴り場内が暗くなる。舞台には進行役の【志多ら】の女性メンバーが立ち、
【志多ら】の今までの活動や今回の演奏の説明を始めた。               

【志多ら】は愛知県北設楽郡東栄町の山の中の廃校になった小学校で集団生活しながら、和
楽器の演奏活動をしているプロ集団である。メンバーは男性5人女性5人で20代前半の若
者が中心である。使っている楽器を上げると・締め太鼓・ばち・チャッパ・長胴太鼓・桶胴
太鼓・かね・しの笛・三味線・うちわ太鼓・すずなどとなっている。          

演奏は次のような順で行われた。                          

第一部 ●神馬(じんめ)=締め太鼓7台を使って神馬が駆け回る様を表現した創作曲。 
    ●はちじょう  =八丈島と三宅島に伝わる太鼓を組み合わせてアレンジした曲。
    ●獅子(しし) =しし舞いと田吾作の掛け合い漫才芝居。          
    ●たたこうコーナー=会場のお客様と太鼓をたたいて楽しむコーナー。     
第二部 ●明神山    =【志多ら】の住む東栄町にある明神山に登った時の気持ちやそ
             の風景をイメージした創作曲。
    ●津軽三味線  =津軽の冬の厳しさに耐え忍ぶ思い、また、それに打ち勝ってい
             く心の移り変わりを表現した曲。             
    ●大太鼓    =3尺8寸(114センチ)重さ約500kgの大太鼓に打ち手の
             思いをぶつける曲。                   
    ●屋台ばやし  =日本三大曳山祭りのひとつ、秩父夜祭りで重さ10トンもの屋
             台を勇壮に引き回す時のお囃子を元にした曲。       
    ●花まつり【志多ら舞】=【志多ら】の拠点、東栄町に古くから伝わる国の重要無
             形民族文化財「花祭り」がある。その花祭りの拍子と舞で自然
             をイメージした曲。                   

約3時間があっという間に過ぎてしまった。楽しいコンサートだった。打楽器のリズムが心
地よく体に残っている。神馬の軽やかなリズムと一糸乱れぬバチさばきに思わず息を呑み込
み、太鼓の音の世界に引き込まれた。はちじょうの荒々しい波音とも聞こえる打ち寄せるよ
うな太鼓のリズムに身をゆだねる。しし舞いとたたこうコーナーは一息入れる楽しい時間。

休憩をはさんで明神山は様々な音の乱舞する世界を見せてくれた。一転、津軽三味線は激し
い波頭を思わせる激しい音。渋谷のジアンジアンで聞いた高橋竹山の演奏とその姿をまざま
ざと思い出させてくれた。そして、大太鼓は打ち手の気迫が背中の筋肉の動きとともにホー
ル中に重い音を響かせた。                             

そして屋台囃子・・・秩父育ちの私にはたまらない一曲。通常締め太鼓で行う屋台囃子を何
と長胴太鼓で演奏する体力と気力、そして乱れないバチさばき。しの笛の囃子、ちゃんちき
のカネ・・・・懐かしくて涙がでそうになってしまった。               

フィナーレは花まつり、すずを振りながらの舞いと全ての楽器が総動員された見事な曲。体
が自然に動き出すそのリズム。終わった時には万雷の拍手がわき起こった。両手の平が痛く
なるまで手をたたき続けた。太鼓のコンサートがこんなに素晴らしいものだったとは・・・
いや、【志多ら】は素晴らしい。                          

アンコールに応えて最後の演奏。そして、終了後は全員がロビーで客と握手して送ってくれ
る。我々は素晴らしい舞台を見せてもらった。一緒に見ていた眞田さんも大満足で「いいね
え、いいねえ」を連発していた。背が小さいが最もパワフルな演奏をしてくれた男性メンバ
ーと握手させてもらった。手は思ったよりずっと小さくて柔らかかった。舞台の上ではあん
なにも大きく見えていたのに・・・・・・                      

余韻を残しながら眞田さん夫妻と食事に行く。浜松といえば「うなぎ」である。老舗の名店
を案内してくれるというので楽しみだ。