会津に尺ヤマメを求めて

NOBEさんと行く会津で果たして・・?


会津に尺ヤマメを求めて

会津坂下(あいづばんげ)のインターを出てすぐ正面に見えるセブンイレブンがNOBEさん
との待ち合わせ場所だった。早朝4時の待ち合わせ時間を仕事の関係で9時に変更してもら
ったので何とか遅れずに到着する事が出来た。NOBEさんはすでに到着していて、車の横に
立っていた。背が高いのですぐ分かる。                       

セブンイレブンで飲み物を買って出発。まだ午前中なのに太陽は中天でギラギラと輝いてい
る。暑くなりそうだ・・・・                            

NOBEさんの車について走る。会津は初めてなので土地勘が無い。車は山を越え、只見川に
沿って田圃の中の道をひた走る。山都町でR459に曲がり、今度は一ノ戸川に沿って上流へ
と走る。しばらく走り、橋の手前の相川温泉、滝富旅館に着く。ここが今夜の宿である。 

宿のおばちゃんと軽い会話を交わし入漁券を買う。鮎釣りの人がかなり入っているらしい。
この川は鮎で有名な川なのだそうで渓流へヤマメ、岩魚を釣りに入る人は少ないらしい。 
私の車は宿の駐車場に停めて、NOBEさんの車に荷物を移して、イザ 出発!      

車は快調に一ノ戸川上流へとひた走る。風邪が爽やかで気持ちいい。ところどころ見え隠れ
する本流では鮎釣り師たちが長い竿を操っているのが見える。長い竿が太陽の光を反射して
ギラリと光る。本流の水量は多い。                         

集落を過ぎ林道が二股に分かれる橋のところに車を止める。橋の上から流れを見る。エメラ
ルドグリーンの深い淵が陽射しを溶かし込んでいる。日陰のポイントはいかにも大物がいそ
うな気配がある。こういう流れを見てしまうと釣り師はたまらない。「ゆっくりやろうよ」
なんて良いながら着替えの早いこと早いこと・・・                  

今日は暑いのでゴアのカッパのズボンとウエーディングシューズの組み合わせで軽快にやる
ことにした。岩の多い渓相なので出来るだけ身軽にしておきたいのだ。水の冷たさが感じら
れる装備の方が今日は嬉しい。                           

軽装備でアイズスリーを持って河畔に立つ。薮が多いので振りにくいのだが久しぶりの渓流
に心が躍る。せっかちな私はNOBEさんに一声かけて先行させてもらう。流れに入ると水の
冷たさが心地よい。ピーカンの空からは夏の日差しが容赦なく照りつけるが、水の冷気がか
ろうじて涼を運んでくれる。                            

この天気では無理かな?という思いがあるからだろうか・・・暑いからだろうか?魚の反応
がない。ここには、いる!っと思った場所で、出ない。これがくり返されていくと集中力が
無くなってくる。おまけに暑い・・・・NOBEさんの話だといつもより増水しているとのこと
なので、そんな事も影響しているのだろうか? 魚の影がない。            

倒木が川を横切っているポイントでNOBEさんがフライを投げる。倒木の下流のひらきで水
しぶきが上がった! 「パシャ!」アッと顔を見合わせる。「いた!!」「ウン・・・」急
に慎重になるNOBEさん。何度か投げるうちに木に引っかけてしまったので、替わりに私が
投げる。エルクヘアカディス14番を慎重に投げる。さっき跳ねた場所よりもさらに下流で
「きた!」パシャっと上がった水しぶきを見て合わせたのだが・・・か、空振り。ああ〜〜
思わずNOBEさんの顔を見ると笑っている・・・しっかり見られていた。        

魚がいて、フライに反応してくれた。これでガ然やる気になった。           

川面に障害物が張り出している場所の下流がポイント・・・と頭にインプットして上流へと
向かう。しばらく遡行するとその条件にピッタリのポイントがあるではないか。これはチャ
ンスと慎重になる。川面に突き出した枝のわきにフライを落とし、流れに乗せる。「よおし
、さあ、こい!」その瞬間バシャっと水しぶき!合わせる、手にグングンと手応えが響く。
浅い流れをバシャバシャと派手に水しぶきを上げて寄ってきたのは綺麗な色の岩魚だった。

早速、携帯水槽を背中からはずし、岩魚を入れる。きれいな体の斑点が鮮やかだ、大きさは
21センチある。この水槽は撮影用に作ったオリジナルだが、顔も、色も、大きさも(中に
メジャーが入っている)ハッキリと記録出来るので重宝している。直接、魚体に手を触れる
事なくじっくり観察出来るのでなかなかの優れ物なのだ。魚を傷つける事がない。    

一ノ戸川の岩魚である。緑色がかった濃い地色に白点が鮮やかだ。大きな尻びれが水の豊か
さを教えてくれる。やっと顔を出してくれた岩魚にNOBEさんもニッコリ笑って記念写真に
納まってくれた。その上流でも同じようなポイントがあり、同じように、同じような岩魚を
釣った。                                     

こうして楽しい時間を過ごし、太陽がだいぶ傾いてきたので川から上がる事にした。運良く
林道に近い場所で脱渓することができ、難なく車まで戻ることが出来た。道を歩いていると
汗が吹き出してくる。やはり、暑い。川の水の冷たさが懐かしくなってくる。戻り着いた車
の中は地獄のような暑さで、置いておいたペット麦茶はお湯になっていた。       

夕方、夕まずめ用のポイントに行くが、増水していてとても釣りになりそうもない。翌日に
期待する事にして、もう一度本流へ向かう。鮎釣り師もそろそろ川上がりの時間なのか、人
影は少ない。鮎釣り師のいない上流のザラ瀬に入渓する。               

しばらくフライを振りながら釣り上がる。広いプール状の浅い淵と言えば分かってもらえる
だろうか?平均ヒザくらいまでの変化のないプールで、右の道路側は3メートルくらいの護
岸が切り立っていて、左側は草の土手になっている。ポイントらしいものと言えば、ポツリ
ポツリと沈んでいる石くらいのもの。護岸の水抜き穴から1条の水が白い放物線を描いて水
面にしぶきを上げている。                             

そこでNOBEさんの竿にアタリ!                          
「kurooさ〜〜ん!」の声に振り向くと、竿が満月になっている。魚はどうやら右へ左へと
走っているようだ。NOBEさんの体の向きが右へ左へと回転する。魚はなかなか寄らない。
「慎重に、慎重に・・・」と声をかける。 大物だ、これはデカイ!          

しばらくやりとりして、魚はやっとNOBEさんのネットに納まった。野生のたくましい顔を
した25センチのヤマメだった。体高のある幅広で、体側の朱色が鮮やかで見事なヤマメで
ある。携帯水槽に入れてNOBEさんと一緒にパチリ。NOBEさん曰く「もうこれで充分ですね
〜、今年の一番ですよ〜〜」と満面の笑顔。リリースする姿も満足そうである。     

ポイントは唯一の水の落ち口だった。やはりそこには魚が着いていたのだ。NOBEさんはもう
満足してしまっている・・・今度は私の番である。同じ所を念のため攻めてみた。何度目か
に投げたフライが小さな水しぶきを上げて消えた!「きたっ!」            
竿を軽くあおると、グンッという重い手応え。ラインをたぐる。重い!、慎重にやりとりす
る。同じ所に魚がいたのだ。まさかさっきリリースした魚じゃないだろうな?・・・   

慎重に寄せてネットに入れた魚を見たら何と岩魚だった。本流で丸々と太った23センチの
岩魚が釣れた。鮎もいるだろう場所でヤマメに続いて岩魚が釣れたのだ、驚いた。体型は先
程のヤマメと同じように幅広で、白点が鮮やかな堂々とした岩魚。うっとりと眺めてしまっ
た。                                       

二人とも満足して宿に帰る。着替えて温泉に入り、夕食の膳につく。ビールがうまいのだ。
素朴な料理が次々に出てきてアッという間に満腹になってしまった。早稲桃のデザートまで
ついたのには驚いた。                               

翌朝、どしゃ降りの雨の音で目が覚める。窓を開けて川の様子を見るとコーヒー牛乳色の濁
流がゴーゴーと流れている。NOBEさんと顔を見合わせてしまう。            
「こりゃ、ダメだね・・・」                            
「う〜〜〜ん・・・尺ヤマメは次回に持ち越しかあ・・・・」             
仕方がないのでゆっくりと朝風呂に入る。雨の音を聞きながら、川を眺めながら一人で温泉
に入る。これはこれでいい。温泉を独占できるなんて考えてみれば贅沢なものではないか。

朝食のビールが、風呂上がりののどに心地よく流れこんでいく。くぅ〜〜〜       

尺ヤマメの夢は雨に流されたが、ゆったりした気分で楽しい釣りが出来た。       
NOBEさんに感謝。